オピニオン 中国人は、不動産、経済全般、そして米国が次にどのような措置を取るのかに対する不安から金を購入している。

中国で高まる「有事の金」需要 経済不安と地政学的リスクが金購入を後押し

2024/11/13
更新: 2024/11/13

金(ゴールド)の輝きは他と比べものがない価値を持ち、最近の中国ではその需要が増している。

金購入が急増しているのは、ジュエリーへの関心が急に高まったわけではない。金は昔から経済の不安定な時期の安全資産として捉えてきたが、今、金地金金貨への需要が高まっているからだ。

現在の中国の不動産危機は不動産価値を押し下げ、中国経済は停滞している。西側諸国が中国との貿易関係に対して厳しい姿勢を取る可能性もある中、中国共産党(中共)政府が十分な政策を打ち出して状況を改善する見通しは立っていない。こうしたなか、金の買い手が行動を起こすには十分な理由がある。

金価格は1オンスあたり2800ドル(約1万4186円/グラム)以上にまで上昇し、過去最高水準に近づいているが、中国ではジュエリーの購入に関しては価格高騰の影響が出て減少している。データが入手可能な最新の期間である2024年の最初の3四半期で、中国人の金ジュエリーの購入は前年同期比で約28%減少した。しかし、金地金や金貨といった資産を守る手段に対する需要は同期間で27%増加し、さらに増加ペースが加速している事を示唆する証拠もある。

中国銀行研究所のチン・ウェイドン氏によると、金地金に対する小売需要は非常に高まっており、広州の東山百貨店では在庫がなくなり、価格はここ数週間で10%上昇したという。

中国経済の現状は、中国の富に代わるものがほとんどない状態であり、この急騰を容易に説明できる。深刻な不動産危機は、収まる気配がない。中共政府が対策を打ち出しても住宅建設や購入は減少を続けている。2021年以降、不動産価格は少なくとも12%下落している。

このような損失により、中国の金融システムが経済成長を支えることはこれまで以上に困難になっている。この影響で家計資産に大きな打撃が加わり、消費支出も縮小し、経済成長がさらに妨げられている。特に、中共政府は2023年後半まで有効な対応を取らず、その後も弱々しい政策に留まったため、多くの中国人は状況がすぐに改善するとは信じていない。現状、不動産やビジネス投資に資産を振り向ける理由も見当たらない。

不確実な地政学的状況は、中国人が金に目を向けるもう一つの理由となる。ヨーロッパと中東で戦争が続いている。中国の富裕層はこれを無視できない。アメリカ、欧州連合と日本は中国との貿易関係を見直しつつあり、いずれも前向きな方向ではない。また、アメリカ大統領選が終わったとはいえ、アメリカの国内と対外政策は依然不確実だ。

また、アメリカはインフレの脅威を完全に手なずけておらず、それに応じて金利の方向性も明確に定まっていない。中国人が金を購入するもう一つの理由は、現在世界で進行している脱ドル化(中共が主導している)により、中央銀行が準備金としての金の保有を増やしているという認識である。

今後中共政府が経済・金融問題に対して効果的な政策を打ち出せるかは不透明だが、歴史が示すように、そのような偉業を成し遂げる可能性は低い。この点から見ても、中国経済や金融への懸念がすぐに払拭される見込みは薄い。アメリカの選挙が決着したとはいえ、アメリカの政策や地政学的状況が明確になるまでには数か月はかかると見られる。そうなると、中国の金購入の動きは、最近のような急速なペースではないかもしれないが、当面は続き、今後もこの傾向が逆転することは考えにくい。

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。