● 人々の本音を聞きたいのではないか?
● 個人メディアが、大手メディアを上回る。
ジャーナリスト、メーガン・ケリー氏のインタビューを聞いて、彼女の個人メディア企業が、従来の大手メディアネットワークを、流通や影響力の面で上回っていることに驚かされた。彼女の会社にはたった6人の従業員しかいない。2018年にNBCを解雇された際、ケリー氏はキャリアが終わったと思い、心の中で暗い場所に落ち込んでいた。しかし、彼女は自らの放送会社を立ち上げ、今まで以上に幸福で影響力のある立場に復帰した。
同様のことが、FOXニュースの政治トーク番組『タッカー・カールソン・トゥナイト』で司会を務めていたタッカー・カールソン氏にも言える。彼のネットワークは巨大で、その影響力は旧FOX時代を遥かに超える。彼の個人チャンネルに、何人のスタッフがいるかは直接知らないが、おそらく10人程度だと推測できる。
コメディアンであり、彼のポッドキャスト番組「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」が特に有名で、ジョーの成功と影響力は誰もが知っている。それ以外にも、各分野で多くのインフルエンサーが影響力を発揮している。大手メディアによる影響力の独占は、急激に低下しているように見える。今の選挙シーズンでも、候補者が、ポッドキャスト巡りをしているのがその証拠だ。
これを技術の進化に起因すると見ることもできる。今や誰もがコンテンツを制作し、配信する能力を持っている。そのため、多くの人が当然のごとくそれを実行しているのだ。
しかし、真の話はそれ以上に複雑である。
ギャラップの新しい世論調査は興味深い示唆を与えている。最新の調査では、大手メディアへの信頼度が史上最低となっているという。1976年のウォーターゲート事件後の72%から、現在の31%にまで低下している。この減少は単なる技術的な変化では説明できない規模である。同様に、政府や他の公式な機関への信頼も劇的に失われている。
信頼の喪失は全ての年齢層に影響を与えているが、特に40歳未満の人々に深刻である。この世代は代替メディアと共に育ち、情報の流れについて高度な理解を持っており、公的文化を支配しようとする機関には、深い不信感を抱いているのだという。
ギャラップはこう述べている。「民主主義プロセスに関わるアメリカにおいて、10の市民及び政治機関の中で、ニュースメディアは最も信頼されていない。連邦政府の立法部(上院と下院)は、メディアとほぼ同じく34%の信頼率である」。
対照的に、
「米国成人の大多数は、地域の問題に対処するための地方政府(67%)や州政府(55%)、また国の問題に関して判断を下す米国民(54%)に少なくともある程度の信頼を置いている」
この調査からは、国民は、心の中で、アレクシス・ド・トクヴィルが描いたような、自己統治のコミュニティと友人や隣人のネットワークへと回帰しているように思える。中央集権的で一体化した大きな物体のモノリス(一枚岩)よりも、身近な存在のほうが信頼されているのだ。それは他の要因を抜きにしても、あるべき姿といえるだろう。
この信頼喪失の要因は、単に距離の問題でも技術の進化によるものでもない。大手メディアは少なくとも過去9年間、積極的な党派性を押し出し、視聴者の大部分を疎外してきた。幹部たちは長い間この問題を把握し、修復しようとしてきたが、内部からの激しい圧力に直面している。これは、アイビーリーグで高い教育を受けた記者や技術者たちが現状を変え、変革を起こそうとしていることに起因すると思われる。
2016年以降、ニューヨーク・タイムズは選挙を完全に誤報したダメージを修復しようと、新しい編集者やライターを雇ったが、すぐに彼らは追い出され、再び激しい党派性に戻った。今も、所有者や経営者は収益性を維持するための新たな道を模索する必要に迫られているのだ。
結果として、メディア業界全体が長期的な崩壊過程にあり、解決策が見つかっていないようだ。巨大な視聴者がそれを放棄し、代替メディアに流れているのは、単に別の党派性ではなく、事実と真実を伝えることに専念するためだ。
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