中共の自滅 世界的に中国からのデカップリングが加速中

2024/10/10
更新: 2024/10/10

中国共産党(中共)が米国やEU、日本を含むグローバル・パートナーに対する様々な攻撃的戦略を倍加させる中、2つの世界経済ブロックへのデカップリング(経済的分断)が加速している。

このデカップリングは、米国と同盟関係にある国と中国と同盟関係にある国(後者には、ロシア、イラン、北朝鮮など、輸出を中国に依存している国も含まれる)との間の経済的、外交的、軍事的なつながりの「脱リスク」や「ほころび」として描かれている。

中国が世界のトップG7経済圏(米国、EU、日本、カナダ)とのつながりを、開発援助や悪行に対する外交的援護を求める比較的貧しい国々との、儲からない、あるいはコストのかかるつながりへと交換するにつれて、中共(中国共産党)政権は以前は中国に開いていた扉を閉ざし、自ら貧乏くじを引いている。

中共にとってG7との最も重要な結びつきの一つとして、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどに学生や専門家を派遣して海外で教育を受けさせることで、西側の最先端技術を安価に獲得することがあげられる。今、その欧米の学術機関へのアクセスが遮断されつつある。

米国は2019年、中共の「千人計画」を調査し、その後、科学技術の専門知識と引き換えに米国の学術プログラムに資金を提供していた中共の「千人計画」を打ち切ることを始めた。今、世間は米国の国防費が中国の中共軍に利益をもたらす米国の大学の研究にも提供されていることに気づいている。もし大学が敵軍との関係を断ち切らなければ、この資金援助はすぐに終わるだろう。従って、そうするよう期待することができる。

5月に中国製電気自動車(EV)への関税を100%に引き上げたバイデン政権は9月23日、インターネットに接続できる自動車に使用される中国製ソフトウェアとハードウェアの全面禁止を提案した。これは事実上、中国製の車を全面的に禁止することになる。

一方、台湾とアメリカは、軍事用・商業用ドローンを供給するサプライチェーンから中国を排除しようとしている。懸念されるのは、ドローンやEVに使われている中国の技術がハッキングされ、乗っ取られ、そして中共によって武器化され、戦争になった場合に我々に対して使われる可能性があることだ。米国民を追跡、標的、殺害に使われる可能性もある。

これは、中共政権がマルウェアを拡散し、米国の重要なインフラ、例えば水の供給や電力網など、病院や現代社会のほぼすべてにとって重要なものを攻撃するという手口に合致するものである。9月18日、FBIは全世界で26万台以上のデバイスを感染させた中国のマルウェアキャンペーンを撃退したことを明らかにした。米国とその同盟国の自然な反応は、特に我々に対して使用される可能性のあるデバイスのデカップリングを加速させることである。

中共にとって最大の望みは、米国とのデカップリングによって生じた貿易のゆとりを、EUが埋めてくれることだ。EUはここ数年、EU離脱やロシア・ウクライナ戦争の影響もあり、中国からの輸入を増やしている。最近の指標は、EUが引き続き中国に頼る可能性に対して否定的であり、これは米国のデカップリングと同じ原因に由来している。

たとえば、中共当局による台湾への戦争の脅威や、中共の攻撃的な補助金政策や製品のダンピングなどである。EUは7月、ダンピングの懸念から中国のEVに36%の追加関税を課した。9月19日には、フォルクスワーゲンの中国における業務監査に欠陥があったとされ、中国での生産中止を求める圧力が高まった。

中共当局の自滅的な政策は、米国、EU、日本、そして私たちの企業に対してだけでなく、自国民に対しても直接的に行われている。そのため、海外への移民が急増し、国内外の企業にとっては資本逃避につながっている。中共はそれによって、中国そのものと切り離され始めている。ウイグル人に関する最新のニュースはその一例である。

中共が新疆ウイグル自治区のウイグル人や他のテュルク系ムスリム(トルコ人やウイグル族、タタール人)に対して、彼らの宗教を放棄させ、いわば政権が後押しする「中国共産党(CCP)教」に従わせようとする試みは、うまくいっていない。新疆ウイグル自治区における大量虐殺と強制労働について、世界的な人権非難が巻き起こった。中共がこれらの批判を無視したため、最終的には新疆ウイグル自治区で生産された商品に対する制裁となった。

中共当局は9月24日、有名ブランド、カルバン・クラインとトミー・ヒルフィガーの親会社であるPVHに対する対抗制裁の可能性を発表した。中共はこれらの企業が新疆の製品を差別していると主張している。欧米の方が経済規模が大きく、こうした企業が他でより安い労働力を調達できることを考えれば、中国企業でさえ中国から工場を移転することになるだろう。

エコノミストたちは、中共に自国経済を活性化させ、かつて海外に輸出されていた商品を自国で吸収するようアドバイスしている。しかし、上に示したように、中国の消費者の信頼が失われているため、中国経済は需要の低迷に苦しんでいる。

中国の消費者は政権の経済・軍事政策のせいで自滅しつつある経済に投資したくないのだ。中国の家族にとって、より合理的なのはお金を貯め、少なくとも子どもを他のより良い環境の国に送り出すことで、国外脱出を試みることだ。

9月24日にCOVID-19の大流行以来最大の財政刺激策、金利引き下げを発表したにもかかわらず、政権の努力は国内投資の増加には、ほとんどつながらないだろう。一方、中国の銀行に対する預金準備率の引き下げを含む景気刺激策は、中国の金融セクターに対するリスクを増大させている。

中国国内では、こうした自滅的な政策に対する批判はすべて抑圧されている。春には、個人のグループチャットで中共の経済政策を批判した著名な中国人エコノミストが拘束された。それにより、中共の責任感が低下し、情報も不足することになる。内部からの批判がなければ、今後も過去の多くの過ちを重ねていくことになるだろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。