業務用野菜の輸入で外国産が3割、中国産が9割の野菜も なぜ?対策は?

2024/10/27
更新: 2024/10/25

2024年9月5日に掲載した記事を再掲載

日本で消費される野菜は、家計消費用がほぼ100%国産である一方で、加工・業務用については国内産は約6割、約30%が輸入品占められている。輸入が全体の3割程度を占める状況はおよそ20年にわたって続いている。食の外部化が進展する中、外国産の野菜を口にする機会も増えている可能性がある。

野菜の需要量は約20年間で1割減少しており、輸入量はほぼ横ばいで推移し、国内生産の割合は微減傾向にある。家庭内で行われていた調理や食事を家庭外に依存する状況が進展する中、野菜の需要は家計消費用から加工・業務用に徐々にシフトしている。

特に、中国産を中心として加工向けの野菜が増大している。2021年度における輸入の概況では、たまねぎ、ねぎ、ごぼう、ほうれん草は9割が中国産であった。

そのほか、ブロッコリーは中国産5割で、エクアドル産5割。かぼちゃはニュージーランド産5割で、メキシコ産5割だった。

農林水産省のホームページより

特定国への輸入依存度が高い場合、有事などの際に当該品目の輸入が滞るリスクがある。日本における食の戦略的自律性をいかに高めるかが課題となっている。

中国産の食品をめぐっては、ニンニクが不衛生な状況で栽培されているとして米国で問題視されたり、 ロシア国内に入荷する予定の中国産野菜140トンから猛毒の残留農薬が検出されるなど憂慮すべきケースが数多くある。

 

なぜ外国産の野菜が3割占めるか

外国産が業務用野菜のうち3割も占めている理由とは何なのか。農林水産省によると、外国産がまとまった数量を比較的安価で仕入れられるためだとされる。

しかし、独立行政法人農畜産業振興機構によると、近年における中国経済の低迷に加えて、現在の急激な円安の影響もあり、内外価格差が小さくなっているため、国産野菜のシェア拡大のチャンスであるという。

また、害虫などの異物混入対策において国内外で差がある点と、自然災害への対策といった点も輸入品を使わざるを得ない要因だ。

一部の国内産地では、異物を除去するための人員が不足しがちであるといわれている一方で、海外産地では、豊富な労働力によって異物対策が徹底されている。

また、商品の小売価格が通年一定であるため、原料の調達価格の季節変動も避けたいが、四季の変化や台風などの自然災害が多い国内で「4定(定時、定量、定品質、定価格)」を満たす野菜を供給することは容易ではない。端境期があるため、輸入品に頼る傾向にあるとされる。

国産野菜シェア拡大へ

昨年12月、岸田首相を本部長とする食料安定供給・農林水産業基盤強化本部において「食料安全保障強化政策大綱」が改訂され、食料安全保障の強化のための重点対策の1つとして、加工・業務用野菜の国産転換が掲げられた。今年4月、農水省は海外調達の不安定化によるリスク軽減のため、需要が高まる加工・業務用向けの野菜を中心に国産の利用拡大につなげる「国産野菜シェア奪還プロジェクト推進協議会」を設立した。

同協議会は、品目ごとに実需者のニーズや産地の状況などを分析し、取り組むべき方向性をとりまとめ国産野菜の増産、活用を推進するほか、アンケート調査や関係者からのヒアリング等を進め、効果的なマッチング機会を創出し、サプライチェーンの関係者による新たな連携づくりをサポートするとしている。

農林水産省によると、国産の食料・原材料の利用を増やしていきたい実需者が約3~5割程度存在する。

最近発表された2025年度予算案の概算要求では、農林水産省は2.6兆円を計上する。加工・業務用野菜を周年安定供給するのに必要な新たな生産・流通体系の構築や作柄安定技術の導入等による国産シェア奪還に向けた取り組みを支援するとして、15億円が割り当てられている。

 

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