2023年9月11日に掲載した記事を再掲載
近日、中国経済の不調が盛んに報道されている。共産党指導部は今まで以上に内向きになり、景気回復の希望を内需活性化に見出している。
しかし、中国の民間セクターの多くは共産党による「ニラ刈り(当局による財産の収奪)」を経験したため、当局の呼びかけに応じるかは未知数だ。中国国内の複数の企業家は大紀元の取材に対し、「共産党を信じたのが間違いだった」と口々に窮状を訴えた。
1800億円没収され、拷問された億万長者
中国湖北省武漢市出身のビジネスマン徐崇陽氏(65歳)は「私は億万長者だったが、今は無一文だ」と語った。
徐崇陽氏は、かつては中国共産党の呼びかけに応じ、2000年代初頭に外資の呼び込みや慈善活動に尽力した。私財を投じて救急サービスを取り扱う企業を設立し、社会福祉の向上に貢献した。
徐崇陽氏の妻である喬麗氏はアメリカ系中国人で、かの有名な袁世凱の血を引いている。夫婦は多額の金融資産に加え、明代の花瓶や皇室の所有物など、代々受け継がれてきた家宝を所蔵していた。
徐崇陽氏はその後、いくつもの冤罪事件に巻き込まれた。約90億元(約1千8000億円)の財産を没収されたほか、10か月間続いた警察当局の尋問では、吊るされた状態で殴る・蹴るの暴行を受けた。さらに、目や生殖器への拷問を受け、半永久的な傷害を負った。中共警察は拷問の様子を撮影したビデオを7万元(約140万円)で徐崇陽氏に売りつけたという。
2022年の取材で徐氏は、「一連の事件には、傅政華・元中国司法部部長と、馬凱・元中国共産党国務院副総理の弟である馬小援が関わっている。偽の公正証書や偽の訴状、ペーパーカンパニーなどを利用して詐欺を行い、巻き込まれた」と語った。
徐氏は「傅正華は失脚して刑務所に収監されているが、彼の一味は今も中国共産党の司法システムを支配している」と指摘。「中国最高人民検察院と最高人民法院に対し、国家補償金と刑事補償金を申請する行政訴訟を提起したが、関係省庁の担当官らは様々な言い訳をして、審査請求を先延ばしにしている」と述べた。
「私は今、不動産や医療保険、年金など全てを失い、乞食同然だ」と徐崇陽氏。「祖国に投資するために帰国したことが、人生最大の悔いとなった」と嘆いた。
合弁企業に騙され、全財産を奪われた台湾人企業家
台湾人企業家の顧源道氏とその甥である宮敏賡氏は1990年代、中国と台湾の合弁企業を創設したが、中国側に騙され、無一文になった。顧源道氏は失意のうちに死去し、宮敏賡氏は貧困生活を余儀なくされている。
1992年、70歳を超えた顧源道氏は一生涯の貯蓄を取り崩し、合弁のアパレル工場を上海に建設した。しかし、工場の財産権を取得することができず、銀行融資を受けられなかったため大きな損失を出した。
さらに、工場周辺の不動産価格が急騰したことを受けて、合弁相手の中国側は工場を手中に収めるべく、合弁契約の解除を仲裁委員会に提起した。
宮敏賡氏によると、仲裁は中国側の意向が大きく反映されたものだった。中国側の圧力のもと、宮敏賡氏らは和解することを余儀なくされた。
さらに、中国側が営業許可証や会計帳簿、対外貿易税還付証明書など各種書類をすべて取り上げため、当局の年次検査に参加することができず、営業許可を取り消された。こうして宮敏賡氏らは財産を奪われ、企業家から無一文の貧困層に転落した。
顧源道氏は失意のうちに死去し、宮敏賡氏は家庭を失った。露店で生計を立てようとしたが、政府の取り締まりでやめるほかなく、現在は生活保護を受けている。
宮敏賡氏は「裁判所は債務者と手を組んで、債権者である私の財産を奪った。財産は27年経った今でも返還されていない」と述べた。2018年、上海当局は宮敏賡氏が経験した事件を解決すると約束したものの、今日に至るまで解決されていない。
工場経営者「共産党は助けてくれない」
江蘇省の企業家、劉炯林氏は青果加工工場の経営者だ。共産党幹部の不正や汚職を長年告発してきたが、かえって迫害を受けることとなった。
劉氏は、過去20年以上にわたって地元の政府や中国国務院に陳情を行い、1万通に上る陳情書を送ってきたが、何も反応はなかった。それどころか違法に監禁され、暴行を受けた。その間に父親を亡くした。
劉氏は「地方政府の党書記と役人は、法を遵守する民間企業を弾圧するいっぽう、汚職官僚と結託する人々の違法な権益は保護している」と大紀元に訴えた。
そして「中国共産党と政府を信じてきたが、結局、家庭と財産をすべて失った。信じたのが間違いだった」と嘆いた。
欺瞞的な宣伝を続ける中国共産党
中国共産党の官製メディアばかり見ていては、中国経済の衰退と政府に対する信用危機に気づくことができない。中国経済の実態は公式データ以上にひどいものであるにもかかわらず、共産党系メディアは「中国経済の問題を指摘するのは西側の認知戦である」と主張している。
経済問題が手に負えなくなり、公式データに現れるようになったとき、中国共産党は隠蔽を始めた。その代表的な例が、若年失業率の非公表だ。中国のネット民は、「臭い物に蓋をする」ことで、中国共産党は失業問題を解決した、と嘲笑った。
コロナ禍とロックダウンを経験した中国社会は著しく疲弊している。富裕層から一般労働者に至るまで、国民の間では悲観的な見方が広がっており、少子高齢化と不動産神話の崩壊がさらに追い討ちをかけている。中国共産党は高圧的な手段で統治を維持しているが、いつ不満が臨界点に達するかは未知数だ。
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