18日午前8時頃、中国南部の広東省深センで発生した邦人男児刺殺事件。地元の病院に搬送された後、19日未明に死亡が確認され、わずか10歳でこの世を去った。
容疑者の男(44)はすでに当局によって身柄を確保し取り調べが行われているが、日本側には動機など詳細な情報は伝えられていない。6月に発生した邦人母子殺害事件でも、中国共産党(中共)当局から日本側に容疑者の動機などの具体的な情報は伝えられなかった。
事件後、「民族主義を掲げたプロパガンダに歯止めをかけよう」と呼び掛ける中国人教授の文章が封殺に遭ったことがわかった。
「亡くなった子供のために、我々は何ができるのか」と題されたその文章は中国政法大学の趙宏教授と陳碧副教授が21日に公開したもので、中国SNSで一度広く拡散されて反響を呼んでいたが、まもなくして検閲に引っかかった。
中国の現状について両教授はこう書いた。
(一部邦訳)
「今の中国で、正義感を持っている人たちは個人的にこっそりと交流するか、感銘受けた文章に『イイね!』を押すことくらいしかできない」
「みんな、ため息をついている。何が正しくて、何が間違っているのかわかっているのに、声を上げることもできないんだ。いったい何を恐れているのか、相手の名前を書き出すことすらできない。それは、まるで映画『ハリー・ポッター』に登場するヴォルデモートのような存在だ」
「そう、私たちに欠けているのは、恐怖に立ち向かう勇気かもしれない」
「友人から『書くな、声をあげるな、非難されるから』と言われている。しかし、あの子供は死んだんだ。これ以上黙っていたら、我々はみな共犯だ」
利用された「民族主義」
この事件について、中国問題専門家の秦鵬氏は次のように指摘する。
「この事件は、中共が長年にわたって中国人に対して行ってきた憎悪教育の影響、経済不況がもたらす市民の不満の向けどころがないところに、民族主義を扇動した結果と言える」
「日中関係の本当の歴史について、ほとんどの中国人は知らない。中共は歴史を歪曲し、改ざんした。そして、国民の不満のはけ口になるよう、外国を恨むことを教えてきた。特に日本は憎悪対象とされ、国内でなにかの危機が起こるたび、反日のプロパガンダを強化してきた」
(中共の反日・憎悪教育)
中国問題専門家の唐浩氏も、「すべての中国人が日本を憎んでいるわけではない」とエポックタイムズ・ジャパンへの寄稿の中で指摘している。
「深センの事件の後、多くの中国人が率先して被害児童が通う日本人学校を訪れて花を手向け、亡くなった子供を悼んだ。なかには、『子供よ、すまなかった』と書き残した人もいる。このようなことは過去にはほとんど見られなかったことだ。中共の民族主義を煽ぐ憎悪教育に反感を抱き、理性で善悪是非を判断する中国人もいるんだ」
(「我々はみな罪人だ」と書かれたカード入りの花束を抱え、深センの日本人学校へ向かう中国人男性、中国・深セン、2024年9月19日)
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