中国の漁船団が世界の海を支配している

2024/08/21
更新: 2024/08/21

米国NPO団体のアウトロー・オーシャン・プロジェクト(OOP)の 報告書によると、中国は現在6千隻以上の船舶で公海を支配しており、世界の漁業の頂点に君臨している。第2位の国と比べその数は3倍以上となっている。

世界の水産物資源の3分の1以上が乱獲されているが、その主な原因は、世界の海から魚、イカ、エビ、その他の貝類を漁獲しようとしている北京(中国政府)の「産業規模の努力」によるものだ。

「需要を満たすために急増した、特に中国からの外国産業漁船は、南半球の国々の国内魚資源を崩壊させるリスクをもたらし、地元の生計を危険にさらし、食料安全保障を損なう可能性がある」と報告書に記されている。

「西洋の消費者、特に欧州、米国、カナダは、中国が漁獲または加工した安価で一見豊富な水産物の恩恵を受けている」

しかし中国は国際漁業法や基準に違反し、他の船に圧力をかけ、他国の海域に侵入し、漁業労働者を虐待することで知られている。

2021年、国際組織犯罪に対抗するグローバル・イニシアティブは、中国を違法漁業の世界最大の加害国にランク付けした。

『アウトロー・オーシャン  海の無法地帯をゆく』の共同執筆者であるイアン・アービナ氏は最近、中国の船舶は主に海上国境に沿って活動し、(他国の)国内水域に時折侵入していると述べた。

中国は現在、より柔らかいアプローチを取っているとエポックタイムズに語るアービナ氏は「中国は、自国の船舶に旗を掲げることで、漁場を内部から支配し、国内水域で漁を行えるようにしている」と述べた。

「旗を掲げる(フラッギングイン)」とは、ビジネス・パートナーシップを利用して、中国船を他国の船籍に登録し、その国の領海で漁ができるようにすることだ。

「これにより、中国の船舶は違法に漁業を行うために外国の沿岸地域に入る必要がなくなる。フラッギングイン戦術はしばしば合法だ。中国政府にとってスキャンダルにはならないが、最終的には同じように水産物資源の枯渇と環境破壊をもたらす」とアービナ氏は述べた。

中国は南米からアフリカ、遠く太平洋に至るまで、「制限された(他国の)国内漁場に進出している」と彼は述べた。

プロジェクトの調査員であるピート・マッケンジー氏は、アルゼンチンに関する最近の例に言及した。

「中国企業は現在、アルゼンチンの旗を掲げた少なくとも62隻のイカ釣り漁船を支配している。これはアルゼンチンのイカ漁船団全体の大部分を占めている」と彼はエポックタイムズに語った。

2007年12月、コートジボワールのアビジャン港で、中国の2隻の船、極東Iと極東IIから拿捕された魚の様子(Kambou Sia/AFP via Getty Images)

マッケンジー氏によると、これらの企業の多くは、追跡を防ぐためトランスポンダー(追跡装置)を切ったり、海洋投棄、脱税、詐欺などの犯罪に関与しているという。

「貿易記録を調査したところ、中国船籍の船が捕獲した魚介類の多くは中国に送られているが、一部は米国や欧州の市場にも輸出されていることがわかった」と彼は言った。

研究によると、中国は現在、ガーナ、ケニア、イラン、ミクロネシア、モロッコなどの国々の水域で約250隻の船籍を持つ船舶を運航している。

「中国の艦隊の規模と範囲は重要だ。ほとんどの国は利益を国内に留め、漁業規制の施行を容易にするために、船舶を地元で所有することを要求しているからだ」とマッケンジー氏は言った。

南アフリカの安全保障研究所の海上安全部門の責任者であるティム・ウォーカー氏は、フラッギングインが国の食料安全保障、主権、財政を損なうと述べた。

ウォーカー氏は、中国の巨大な産業漁船団は、北京の保護目標にも反していると述べている。

2017年、環境団体からの過剰漁業に関する圧力を受けて、中国は遠洋漁船隊の規模を3千隻に制限すると発表したとウォーカー氏は言った。

「しかし今、中国には他国の旗を掲げた数千隻の水産加工船があり、他国の領海で漁を行っている」と彼はエポックタイムズに語った。

ウォーカー氏は、中国のフラッギングインは中国の漁業会社からの追加収入に依存しているアフリカなど貧しい国々の周辺海域で特に顕著だと述べた。

非営利の国際調査報道グループ「アウトロー・オーシャン・プロジェクト」によると、中国の会社は少なくとも9か国の国の水域で船籍を持つ船を運航しているという。

報告書は、ガーナでは外国の漁業投資が違法であるにもかかわらず、ガーナの旗を掲げた少なくとも70隻の中国船が西アフリカの国の水域で漁をしていると述べている。

2018年、環境正義財団(EJF)は、ガーナの工業トロール船隊の90%以上が何らかの形で中国の支配下にあることを明らかにした。 この船隊は毎年10万トン以上の魚を捕獲している。EJFによれば、ガーナの漁業資源は現在危機的状況にあり、地元漁師の収入は過去20年間で40%も減少しているという。

ウルビナ氏によると、中国はモロッコの海域で操業していた欧州連合の漁船とも取って代わった。それまでは主にスペインから来た数十隻の船がモロッコ政府の許可を得てアフリカの国の排他的経済水域内で漁をしていたと述べた。

2023年に協定が終了したとき、ウルビナ氏は中国が進出し、現在モロッコの海域で少なくとも6隻の船を運航していると言った。

アウトロー・オーシャン・プロジェクトの調査によると、過去6年間で、中国企業が管理する50隻以上の船が、違法漁業、無許可の転送、強制労働などの犯罪に関与していたという。

転送とは、漁獲物をある船から別の船に違法に移すことを指す海事用語だ。

報告書はまた、2019年7月5日夜、中国企業「大連孟鑫洋漁業」が所有する「孟鑫15号」からガーナ漁業委員会の職員のエマニュエル・エッシェン氏が失踪した件についても詳述している。

エッシェン氏は、別の中国船の乗組員が漁獲物を違法に転送しているビデオ証拠を警察に提供した2週間後に行方不明になった。

プロジェクトの主要調査員の一人であるミルコ・シュヴァルツマン氏は、中国企業が運航する船は「一度に1日以上、自動追跡システムを繰り返しオフにするパターンが見られる」と述べた。

「船が『暗くなる(自動追跡システムがオフになる)』とき、それは違法漁業や転送を示すことが多い。なぜなら、法執行機関が船舶の動きを追跡したり、海上で他の船舶と交戦しているかどうかを確認したりするのが難しくなるからだ」とシュヴァルツマン氏はエポックタイムズに語った。

ウォーカー氏によると、中国政府は、雇用を創出し、利益を生み出し、拡大する中産階級を養うために、漁業に数十億ドルの補助金を出しているという。

「他国の海域に進出している中国企業もこれらの年間補助金の対象となる」と彼は付け加えた。「彼らの外国海域での存在には強い地政学的動機もある」

米国と欧州の漁業艦隊と海軍が縮小するにつれて、ラテンアメリカ、アフリカ、欧米の太平洋における開発資金と市場投資も減少したとプロジェクトの報告書は指摘している。

シュバルツマン氏は、中国が世界的な開発計画である「一帯一路」構想の一環として、この空白を埋めようとしていると述べた。

彼はラテンアメリカとカリブ海を指している。

世界経済フォーラム(WEF)によると、2000年から2020年の間に中国のこれらの地域との貿易は120億ドルから3150億ドルに増加した。

WEFは、中国開発銀行と中国輸出入銀行という2つの主要な国有銀行が、2005年から2020年の間にラテンアメリカの国々の政府に1370億ドルの融資を提供したと述べた。

その見返りに、中国は、油田からリチウム鉱山、漁場に至るまでの広範な資源への独占的アクセスを受けているとウォーカー氏は言った。

アービナ氏は、海洋領域が中国の成長計画において重要な前線であるという。

「これには、公海や、南シナ海のような係争海域への力の行使、外国沿岸水域での漁業や海外の港の支配の強化が含まれる」と彼は言った。

アウトロー・オーシャン・プロジェクトの報告書は、中国企業が現在、90以上の外国の漁港や海運港で数十の海外加工工場、冷蔵施設、ターミナルを運営していると述べている。

「中国の拡大と天然資源の搾取に対する欲望は減少の兆しを見せておらず、我々はもはや後戻りできない地点を過ぎているのではないかと懸念している」とウォーカー氏は述べた。