中国経済の一貫した特徴は、大規模な製造業投資や高技術、クリーンエネルギー分野への研究開発支出によって、イノベーションと成長を促進しようとする点にある。
中国政府の最高層は、中国経済の停滞問題を解決し、不動産バブルの影響を相殺するために、新たな計画を積極的に推進している。この計画には「新質生産力」という新しいスローガンが掲げられており、中国共産党(中共)の党首である習近平が提唱し、三中全会後に政府系マスコミ的に報道している。
今年3月、中国のナンバー2である李強首相は、中国年度発展高層フォーラムで、この計画について述べ、「新質生産力の発展を加速させる」と強調した。しかし、この計画は中国経済の一般的な特徴を持っており、高技術やクリーンエネルギー分野への大規模な製造業投資や研究開発支出によって、イノベーションと成長を促進しようとしているものだ。
三中全会ではまたこのような経済政策が打ち出されたが、中国家庭の支出低迷をどう逆転させるかについての具体的な方策は、ほとんど示されていない。このような新たな需要を刺激しないまま工業生産を拡大し続ける戦略は、現在のように多くの国々が、中国の過剰生産品の輸入を拒否する結果を招き、中国国内の製造業者も苦境に立たされれことになるだろう。
多くの経済学者は、過剰生産が中国経済の必然的な結果であると考えており、中国政府は補助金、減税、国有銀行や投資基金を通じて、資本を特定の産業に誘導することがよくあると指摘している。
中共の高官は、先週の三中全会の記者会見で、不動産市場の低迷に対応するために「新興および未来産業」を加速させると述べ、電動自動車や太陽光発電などがその具体例として挙げられた。
今年3月、李強首相は中国家庭に対し古い車や家電を買い替えるよう呼びかけたが、政府が資金を提供するかどうかは明らかにしていない。ゴールドマン・サックスの2023年の分析によると、中共が優先的に発展させようとしている3つの主要産業(電動自動車、リチウムイオン電池、再生可能エネルギー)は、中国のGDPのわずか3.5%しか占めておらず、多くの大学卒業生や農民工に十分な雇用機会を提供することは難しいとされている。
中国問題専門家の王赫氏は、大紀元に対し、「新興および未来産業」で不動産問題を解決するのは不可能であると述べた。中共の技術基盤は西側に比べて劣っており、技術禁輸によってその差は広がる一方である。さらに、技術の偽造も深刻な問題であると指摘している。
「新質生産力」というスローガンは、アメリカが主導する対中ハイテク輸出規制が、中国の成長を妨げるだろうという国内外の懸念を、和らげるための部分的な対応でもある。製造業は中国経済の大部分を占めており、その規模はアメリカの2倍以上である。
王氏は、中国の製造業の生産能力が世界の30%を占めているため、中共は製造業を利用して世界のサプライチェーンを中国に依存させ、グローバルな覇権を追求し、西側と対抗していると述べている。しかし、その結果、中国経済は歪んだ発展を遂げ、国内では過剰生産、国外では低価格での投げ売りによる貿易戦争や関税戦争が増えることになった。
中国の貿易パートナーは、製造業の成長が中国の輸出増加につながることを懸念している。欧州連合(EU)は、中国からの電動自動車に関税を課す準備を進めている。欧州商工会議所は発表した報告書で、中国の製造業強化政策が、欧州の産業空洞化を招く可能性があると警告した。なぜなら、欧州企業が政府支援を受けた中国企業と競争することは難しいためである。
一方、住宅やインフラ建設のために中国に原材料を販売している企業は、中国がハイテク製造業にさらに注力することを注視している。オーストラリアの鉄鉱石採掘大手であるフォーティスキュー・メタルズ・グループの執行会長アンドリュー・フォレスト氏は、中国が引き続きインフラに大量の資金を投入することは避けられないと述べた。
彼はニューヨーク・タイムズのインタビューで、「インフラ面では大きな変化はないが、製造業への注力が強まるだろう」と述べている。
中国当局は、不動産市場の安定を何度も約束しているが、具体的な詳細は、ほとんど示されていない。過去2年間で不動産価格が5分の1下落したため、中国の不動産消費は低迷している。住宅取引も大幅に減少しており、住宅所有者は価格を半分にしなければ買い手が見つからないと不満を漏らしている。
不動産は家庭資産の60~80%を占めており、この割合は、多くの国よりもはるかに高い。そのため、不動産市場の崩壊は、多くの家庭にとって富の減少を感じさせ、住宅ローンの返済も困難になっている状況だ。
ミシガン大学の中国専門家メアリー・ギャラガー氏は最新の研究で、大躍進時代から中国の不動産ブームに至るまで、過剰生産が中共の広範なガバナンスの一部であり、そのガバナンスモデルは「過剰生産」と目標の過剰達成を特徴としていると述べている。
中共は迫り来る不動産リスクについて簡単に触れたが、関連する問題として「地方債」も言及した。李強は、過去40年間で「リスクと挑戦は私たちを打ち負かすことはなかった」と述べた。
李強は、都市に恒久的に移住した2億5千万以上の農民家庭に合法的な居住権を提供すると述べた。都市が提供する医療、年金、教育の福利は農村地域よりもはるかに高い。しかし、彼は財政難に陥っている都市政府が、これらの高額な福利費用をどのように賄うかについては説明しなかった。
関連時事:
中国社会科学院の経済研究所所長である李雪松は、記者会見で、地方政府は公共部門の職員にもっと住宅を提供できると述べたが、その費用をどう賄うかについては触れなかった。多くの地方政府は重い債務を抱えている。
最近では、不動産開発業者に売却する公共用地の売上が大幅に減少したため、多くの地方政府は市政職員の給与を削減し、中央政府の支援を必要としている。中国財務省は、いくつかの都市は高額だが人気のあるインフラ建設プロジェクトを削減することを条件に、一部の都市の債務返済を支援する計画を開始した。
三中全会の公報で述べられた経済改革の内容は、完了時期が2029年に延長された。時事評論家の鍾原氏は大紀元に対し、これはゲームのようなものであり、中共の財政・金融改革は企業や個人から資金を奪う方法を模索しているだけだと述べた。過去のスローガンを繰り返すだけにとどまっている。
彼は、「三中全会が開かれようが開かれまいが、国家の統治にあまり関係ない。中国各地で水害が続いているにもかかわらず、三中全会は予定通り開かれ、地方のリーダーたちは災害対策から遠ざかり、北京で政治ゲームに参加している。外部では中共に何らかの改革を期待していないし、中共内部でも信念を失っている」と述べた。
「三中全会の経済改革は非常に退屈だが、官僚たちは絶え間ない不安の中で日々を過ごしている」
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。