洞庭湖の堤防が決壊、当局は情報遮断

2024/07/10
更新: 2024/07/10

中国では今年、記録的な大洪水が発生している。7月5日午後、湖南省北東部の洞庭湖の堤防が決壊し、当局は封鎖に失敗した。近隣地域が浸水し、水位は5メートルに達した。住民は一晩中、避難を余儀なくされた。

7月5日夜、華容県団洲垸において洞庭湖の堤防が決壊し、わずか数時間で洪水が家屋を呑み込んだ。地元の人々は、洪水の速さが予想を上回り、屋根の上に取り残された人もいると伝えている。

岳陽市の住民の呉さんは、「水位は5メートルまで上昇し、家は完全に浸水した。死亡者の正確な数はまだ分かっておらず、データもないが、多数の犠牲者が出たと考えられる。私たち住民は逃げるしかなかった」と述べている。

岳陽市の住民、徐さんは次のように述べている。

「その地域は平地で、水位が急に上がると逃げ場がなくなる。水は広い範囲に流れ出るだろう。情報はたぶん封じられていると思う。私たちの地域に関する情報が全く無く、ソーシャルメディアでの確認もできない」

インターネット上では、多くのユーザーが当局の対応を厳しく批判しており、洞庭湖の決壊が放水によるものかどうか疑問を持つ声も上がっている。

徐さんはさらに、「最初、堤防の決壊は数メートル幅だけ、しっかり防げたはずだ。しかし、対策が不十分で、市民が大きな被害を受けた」と述べている。

ドイツ在住の水利問題専門家、王維洛氏によると、洞庭湖の水位が急激に上昇し、洪水が発生した原因は、複数あるという。

王維洛氏は次のように述べた。

「主な理由は、湖南省の四大河川、湘江、資江、沅江、澧水河(れいすいが)が一緒に洪水を流すことだ。第二の理由は、三峡貯水池が洪水を起こしていることだ。最近、洞庭湖の放流量は時々増加しており、外水の水位が高い限り、長江への出口は岳陽を通過する君山だけだ。長江の水位が高くなると、洞庭湖の水が長江に流れ込むのが難しくなり、洞庭湖の水位が上昇し続けることになる。三つ目の理由は、洞庭湖周辺の土地の破壊と、泥砂の堆積が原因で、洪水を貯蔵する能力が著しく低下していることだ。そして四つ目は、防洪対策が専門的でないことが挙げられる」

公式発表によると、堤防が決壊した後、華容県は約6千人の住民を迅速に避難させ、幸いにも人的被害は報告されていない。しかし、その直後に公務員の休暇取り消しと、個人による情報発信の禁止を通達する通知が出されたことで、外部からの疑念が高まっている。