米海軍、造船所不足の深刻な課題に直面

2024/07/10
更新: 2024/07/12

米国は、第二次世界大戦での勝利の一因として、損傷した戦艦を迅速に修理し、再度戦場に送り出す能力と、新造艦船を大量に生産する造船所の力があった。しかし、現在の米国はその能力を失い、米海軍の見積もりによれば、修理と保守作業に20年の遅延があり、多くの艦船が配備不能となっている。

造船所と関連施設の不足により、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦のような強力な戦艦が維持、オーバーホール、近代化、寿命延長ができずに退役せざるを得ない状況である。もし米海軍に必要な造船能力があれば、最近改修された4万トンのUSSボノム・リシャールも火災で大損害を受けずに修理や再利用ができたであろう。

さらに、2022年の政府監査院(GAO)報告書「海軍造船所—継続的な課題が造船所の改善能力を危うくする」によれば、2015~19年の間、空母や潜水艦の保守・修理の遅延により、毎年空母の半数と潜水艦3隻の損失が実質的に生じたとされる。同報告書は「造船所の保守の遅延は、艦船による訓練や作戦の実施能力を妨げることで、海軍の即応性に直接影響を与える」と結論付けている。

また、2023年の海軍報告書では、バージニア級原子力潜水艦の建造が33年遅れており、国の安全保障を支えてきたアメリカ海軍 ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦の代替が進んでいないことが明らかにされた。

事態の深刻さを示す例として、米海軍のリークスライド(スパイ活動を防ぐための対策や事例に関する資料)では、中国の造船能力が米国の232倍であることが示されている。さらに、Breaking Defenseの報告によれば、一部の米国の造船所は中国製のドックを使用して米海軍の艦船を修理・維持しているという。

これらの問題は敵からの攻撃による損傷を受けた場合を想定していない。第二次世界大戦以来、米国の艦船が敵の行動で大規模な損傷を受けたことはないが、中国との海戦が起きた場合、艦船を迅速に修理し、失われた艦船を迅速に補充できるのか? その答えは「否」である。

この状況は受け入れがたいが、何ができるのか? 長期的には米国の造船業を復興させる必要があるが、まずは海軍の造船所のキャパシティを直ちに増強することが急務である。

海軍は現在、造船所の容量不足に対処するための「造船所インフラ最適化プログラム(SIOP)」を策定中である。このプログラムは既存のドック、施設、設備を近代化・改善することを目的としているが、SIOP計画の完了は2025年まで見込まれておらず、どれだけの実質的な容量増が得られるかは不明である。

しかし、真に必要なのは新しい造船所の設立であり、カリフォルニア州サンフランシスコ湾の主要河川システムはその候補地として有望である。2023年9月のフォーブス記事によれば、「ストックトンやウェストサクラメントの深水港への川のルートは、西海岸で海への低コストアクセスを持つ数少ない場所の一つである」とされる。

もう一つの候補地として、2022年3月に提案されたバートレット・マリタイムの計画がある。オハイオ州ロレインに造船所を建設し、重要な攻撃型潜水艦のオーバーホールやコンポーネント作業を行い、オハイオ州ロードスタウンで船舶部品を製造するというものである。この場所は良好であり、周辺のコミュニティは新しい造船所と支援施設がもたらす質の高い雇用を歓迎するであろう。他にも新しい造船所の候補地や廃業した造船所の復活に適した場所が全米に多く存在する。

しかし、資金はどこから調達するのか? 数十億ドルが必要であろうが、明確かつ現実的な国の安全保障の脅威に対処するため、緊急性の低いプログラムや事業から資金を移すことで対応可能である。

最後に、新しい造船能力を迅速に追加するためには、即時の国家安全保障の脅威に対処するための施設建設を、数年にわたる環境影響調査から免除する法案が必要である。このような対策を取らない限り、米海軍の力は減少し続け、中国のような敵対的な政権に対して弱さを示すことになる。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。