「科学大国」中国の現実

2024/07/02
更新: 2024/07/02

共産主義中国の台頭に関する永遠の疑問の一つは、中国がどれほどの科学的力を持っているかということだ。政治を別にして、科学的な成果、影響力、質をはかるのは非常に難しい問題である。

では、中国の科学研究と成果はどれほど優れているのか?

科学研究を様々な側面から評価することは、最良の状況下でも困難だ。例えば、昨年mRNAワクチンの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ博士は以前、研究に将来性がないとして、テニュア(終身在職権)を拒否され、ペンシルベニア大学から事実上追い出された。

多くの大学では研究者に成果の量を重視するよう奨励している。その結果、質の低い論文や有料ジャーナルに掲載される質の低い研究が大量に生み出されることになる

量が答えでないなら、質をどうやって測るのか? 学者が使う一つの指標は他の研究者による引用数。しかし、これには多くの問題がある。例えば、多くの研究は間違った内容であっても多く引用される。

これについては一流とされる雑誌でさえ深刻な問題を抱えている。出版に際しては友人や同僚を優遇したり、データの検証を怠ったりするなど、研究者が精査に耐えられないような研究を行うことを許している。

では、中国が世界有数の科学大国だという主張をどう理解すべきか?

私は中国の北京大学で約10年間働いてきた経験から、中国が科学の進歩を遂げたことを認めざるを得ない。

約20年前から、北京当局は研究と成果の向上を目指して、中国と世界中からあらゆる分野の研究者の雇用に多額の資金を投資することを優先してきた。私が出会った同僚は皆、優れた学校を卒業し、質の高い研究に従事していた。

しかし、そこには欠点もあった。莫大な資金がもたらす「成果を出さなければ去れ」という大きなプレッシャーだった。

その結果、研究不正や、研究審査を通過させるために質の低い論文を量産するケースが横行した。中国では、教授やその他の人々(非暴力の囚人も含む)が特許を取得することで昇進できる。結果的に無価値な特許の氾濫と、キャリアを進めるために特許を購入する活況な二次市場が生まれた。

最近、中国の教授たちは大学が直面する圧力についての研究を発表した。中国全土の教授や大学院生へのインタビューに基づいたその結果は、予想されたものではあったが、それでも驚くべきものだった。世界トップクラスの大学を目指すというリーダーシップの下、学部長たちは研究の質に目を向けず、問題を深く掘り下げることを避けていた。記事で一人の大学のリーダーが述べたように、「研究不正の特定と処罰に過度に厳格であってはならない」

公平に言えば、米国の名門大学のデータ捏造をめぐる研究スキャンダルへの対処など、外国の学者も同じ圧力に苦しんでいる。研究成果を出すという教授陣へのプレッシャーは世界共通のものだが、アメリカの管理者も最近になって研究の誠実性に関する問題の見直しを始めたばかりだ。しかし、剽窃(ひょうせつ・他人から借りた文章やアイディアの出所を示さずに、自分の書いたものとして、自分の名前と学籍番号を書いて提出すること)、データ捏造など様々な問題により、学術雑誌から撤回される論文は、圧倒的に中国の大学や研究機関からのものが多いのが現状だ。

状況を複雑にするのは、中国の科学研究のなかには世界に誇れる優れた分野があるということだ。物理学、生物学、コンピュータサイエンスなどの特定のハードサイエンス分野では、一部の中国の科学者がまさに世界の最前線に立っている。

科学研究の質と成果を評価することは難しい。本当に重要なのはこれがどのように先進的な製品、成果、アイデアに反映されるかだ。これをより広範な指標にすると、中国は他国に大きく遅れている。最近、北京当局もアメリカがAI分野で世界的なリーダーであることを認め、懸念を表明している。

北京当局は中国がアメリカのモデルを借りて中国市場向けに更新していると述べた。実際に、中国の注目すべき新興企業はオープンソースコードを使用し、中国市場に合わせて展開している。このことは国家の誇りとしても、中国が多くの論文を発表しているにもかかわらず、アメリカに引き続き遅れをとるのではないかと懸念する中国(共産党)当局にとって、不安の種だ。

中国の科学研究は確かに大きな進歩を遂げた。これは人材の急速な改善、上級学位の増加、研究資金の増加によるものだ。しかし、中国の科学研究は、中国社会全体に見られる問題にも苦しんでいる。

それはすべてを管理し、成果目標を中央集権化するが、生じる歪みや発信するものが本当に価値あるものかどうかをほとんど考慮しない、愚かな政党国家による窒息するような統制だ。

国家に見られる腐敗は、中国の大学にも反映している。ChatGPTで書かれた論文や偽データは、まるで中国共産党政権から直接出てきたかのようである。

中国は大きく進歩したが、科学の超大国と見なされるべきではない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
クリストファー・バルディングはフルブライト大学ベトナム校および北京大学HSBCビジネススクールの教授でした。彼は中国経済、金融市場、技術を専門としています。ヘンリー・ジャクソン協会のシニアフェローであり、10年以上中国とベトナムで生活した後、米国へ帰国しました。