中国の太陽光発電業界、供給過剰で混乱に

2024/06/26
更新: 2024/06/26

中国政府は太陽光発電業界の発展を推進してきたが、その結果、供給過剰に陥り、製品の価格と利益が急落している。専門家によれば、中国の太陽光発電業界はすでに混乱状態にある。

『エコノミスト』誌の報告によると、中国の太陽光発電業界は世界の供給チェーンのあらゆる段階に関与しており、多結晶シリコンから完成品まで網羅している。エネルギー分野のデータ分析を手掛けるウッド・マッケンジーのデータによると、昨年の中国の太陽光モジュール生産能力は約1千ギガワット(GW)に達し、これは世界の他の地域の総生産能力の5倍に相当する。中国は世界の設置総量の2倍以上の太陽光電池を毎年生産している。

パンデミックの間、多結晶シリコンの供給不足により太陽光電池の価格が上昇したが、その後、PVInsightsのデータによると、世界的な価格は1ワット当たり10セント以下の歴史的な低水準にまで下落した。

中国の太陽光発電業界は急速に成長しているが、世界の需要を超えており、産業全体の利益を圧迫している。現在、多結晶シリコン、シリコンウェーハ、電池、および完成品の販売価格は、平均生産コストを下回っている。

ウッド・マッケンジーによれば、昨年、中国の太陽光発電の輸出収入は生産量の急増にもかかわらず、価格の急落により5.6%減少した。2023年初頭以来、西安に拠点を置く「ロンジ・グリーン・エナジー・テクノロジー(隆基緑能科技股分有限会社)」の株価は約60%下落している。同社は3月に従業員の5%を解雇する計画を発表し、その理由として「商業環境の複雑化と競争の激化」を挙げた。その他の中国の太陽光発電大手である「トリナソーラー(天合光能)」「JAソーラー(晶澳科技)」「ジンコー・パワー・テクノロジー(晶科電力科技股分有限会社)」も株価が大きく下落している。

小規模な企業への影響はさらに大きい。ウッド・マッケンジーの太陽光発電産業専門家ヤナ・フリシュコ氏によれば、大企業は事業の多角化が進んでいるため、太陽光製品の価格急落に対する耐性があるが、小規模な企業はそのような耐性がない。

ある小規模な太陽光電池メーカーは最近、13億ドルの工場建設計画を中止した。別の中国の太陽光企業の高級幹部は、サプライチェーン全体で少なくとも半数の企業が破産の危機にひんしていると予想している。

現在のところ、中国の供給過剰問題が解決される兆候はほとんどない。価格の下落が財務的な圧力をもたらしているにもかかわらず、大手企業は技術の向上と生産の拡大を続けており、競争相手よりも低いコストで生産を維持しようとしている。ウッド・マッケンジーは、2026年までに中国の太陽光発電産業の生産能力は約17ギガワットに達するだろうと予測している。

中国政府の政策は太陽光発電業界の過剰供給をさらに悪化させている。数十年にわたり、市や省の政府は地元の雇用を創出するために太陽光発電業界を誘致してきた。ウィチタ州立大学のウシャ・ヘイリー氏によれば、政府の支援は無料の土地や電力、無利子融資、先端技術の提供など多岐にわたる。彼女の推計では、これらの支援が太陽光発電企業のコストの約35%を占めるが、場合によっては65%に達する。

しかし、このような政府の支援はますます困難になっている。中国の多くの省は、膨張する債務の返済に苦慮している。中国経済が減速する中で、太陽光発電企業は他の産業と政府の支援を争わなければならず、他の産業も過剰供給の問題に直面している。

顧問会社ローディアムの分析によると、昨年の中国の工業企業の5分の1以上が利益を上げていなかった。中国の過剰生産能力を海外に輸出する試みも困難に直面している。先月、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は「世界は中国の過剰生産能力を吸収できない」と述べ、6月12日、欧州連合は中国のEVに26~48%の暫定関税を課すと発表した。

中国の廉価な太陽光電池も同様の対応を受ける可能性がある。2012年以来、アメリカは中国の太陽光製造業者に対して反ダンピング税を課している。欧州連合は2018年に同様の措置を撤回したが、一部の人は欧州が中国の太陽光発電企業に依存しすぎていることを懸念している。今年4月、欧州連合は中国の輸入品の影響を受けた地元の太陽光発電製造業者に対する補助金と支援を拡大することに同意した。

ブルームバーグのジェニー・チェイス氏は、「最初は薄利多売、その後は長期にわたる低迷、最後には破産と撤退。これを『太陽光のジェットコースター』と呼んでいる」と述べた。

吳畏
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