【プレミアム】分裂票:2024年大統領選の鍵となる要因

2024/05/29
更新: 2024/05/29

2024年のアメリカ大統領選挙において、分裂票現象が選挙結果を左右する重要な要因となる可能性がある。分裂票とは、有権者が大統領候補と上院議員候補を異なる党から選ぶことであるが、近年はアメリカ政治ではあまり見られなくなっている。しかし、最新の世論調査によれば、この現象が2024年の選挙で再び浮上し、ジョー・バイデン大統領の再選に大きな影響を与えるかもしれない。

分裂票現象

ニューヨーク・タイムズとシエナ大学の調査によると、バイデン氏は6つの主要なスイング州のうちミシガン州、アリゾナ州、ネバダ州、ジョージア州、ペンシルベニア州の5つの州でトランプ氏に遅れをとっている。唯一バイデンが優勢なのはウィスコンシン州である。しかし、上院選挙では状況が異なっている。民主党の上院候補者は複数の競争州でバイデン氏を上回る成績を収めており、有権者が大統領選と上院選で異なる選択をしていることを示している。

たとえば、ネバダ州ではトランプ氏が12ポイントリードしている一方で、民主党上院議員のジャッキー・ローゼン(Jacky Rosen)氏は共和党の対立候補サム・ブラウン(Sam Brown)氏に対し40%対38%でリードしている。アリゾナ州では、トランプ氏が49%対42%でリードしている一方で、民主党下院議員のルーベン・ガレゴ(Ruben Gallego)氏は上院選で共和党の対立候補カリー・レイク(Kari Lake)氏に4ポイントリードしている。CBSニュースの最新調査によると、ガレゴ氏のリード幅は13ポイントにも達している。

2020年には、バイデン氏およびトランプ氏の支持者の約90%が同じ党の議会候補を選んだ。1970年代および1980年代には、民主共和二党のこの割合は約70%であった。第二次世界大戦以降、アメリカの政治では196回の分裂票現象が見られたが、近年この傾向は減少している。

2024年の選挙における分裂票の可能性

大統領選と上院選の結果に大きな差があることから、一部の観察者は2024年に分裂票現象が再び見られると予想している。ネバダ州とアリゾナ州に加えて、バイデン氏はペンシルベニア州でも苦戦しているが、民主党の上院議員ボブ・ケイシー(Bob Casey)氏は5ポイントリードしている。ウィスコンシン州では、民主党の上院議員タミー・ボールドウィン(Tammy Baldwin)氏が9ポイントリードしている。

たとえオハイオ州やモンタナ州のような「赤い州(共和党の支持基盤が盤石である州)」でも、トランプ氏が圧倒的な支持を得ている中、民主党の上院議員ジョン・テスター(Jon Tester)氏やシェロッド・ブラウン( Sherrod Brown)氏が共和党の対立候補をリードしている。これは2020年の状況とは対照的で、当時は議会共和党員の成績がトランプ氏を上回り、バイデン氏の成績が、議会民主党員を上回っていた。

シグナル政治戦略ディレクターのミッチェル・ブラウン氏は、バイデン氏の支持率の低迷がこれらの大きな差を引き起こしていると指摘している。この状況はトランプ氏に複数の戦場州で勝利をもたらし、民主党の現職上院議員が、これらの州で議席を守る可能性がある。

民主党の戦略

民主党の戦略家デイビッド・カリッチ氏は、バイデン氏がスイング州でこれらの差を縮めると見ている。「バイデン氏の希望は、有権者がまだ民主党を完全に見限っておらず、再び支持を得られる可能性がある点にある」

最近の調査によれば、バイデン氏は、若者や黒人、ヒスパニック系有権者からの支持率が低下しており、これはバイデンの再選にとって大きな問題である。これらの有権者は彼の経済政策やガザ危機への対応に不満を抱いている。ブルームバーグ/モーニングコンサルトの最新調査によると、7つの戦場州での仮想戦でトランプ氏が48%対44%でバイデン氏をリードしている。

ペンシルベニア州の元民主党議員ロン・クリンク氏は、現在の世論調査はあまり信頼できないと考えている。さらに11月の予測は時期尚早であるとしながらも、アメリカ人全体がバイデン氏のパフォーマンスに不満を感じていることを認めている。

「トランプ氏の助けになるのは有権者の動員である。2022年に投票しなかった共和党支持者や一般の有権者が動員される可能性がある」と述べている。彼は、トランプ氏がこれらの有権者を動員して上院の多数派を獲得する可能性があると指摘している。

中西部とサンベルト

最近の調査によると、中西部のスイング州、すなわちミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州が両大統領にとって2024年の選挙で重要な州となるという。この地域ではバイデン氏が白人労働者階級の有権者に強い支持を得ている。

調査によれば、「サンベルト」のスイング州、すなわちネバダ州、ジョージア州、アリゾナ州でトランプ氏の競争力はより高い。ニューヨーク・タイムズとシエナ大学の調査によると、登録有権者の間でトランプ氏はバイデン氏にネバダ州で12ポイント、ジョージア州で10ポイント、アリゾナ州とミシガン州で7ポイント、ペンシルベニア州で3ポイントリードしている。

政治アナリスト、共和党ストラテジストのオコーネル氏は、「『サンベルト』は現在、トランプ氏にとって中西部よりも有利である。サンベルト州にはインフレが最大の問題と考えるヒスパニック系や独立系の有権者が多い」と述べている。オコーネル氏は、特にサンベルト州の経済困窮指数が全国平均より高いため、「ブルームバーグ経済困窮指数II」によりバイデン氏の低い支持率を説明している。7つの戦場州の経済困窮指数は他の地域よりも高く、これがバイデン氏の支持率の低い一因である。

ブラウン氏は「アメリカ人にとって経済は重要であるが、それだけが意思決定に影響を与える唯一の要因ではない」と述べている。彼は、2022年には多くの人の経済が決定的な問題になると予想していたが、民主党にとってはそうではなく、中絶が彼らの成功に重要な役割を果たしたと指摘している。「共和党が勝つのに経済だけでは十分ではない」とブラウン氏は言っている。
 

Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、バイデン政権担当記者。トランプ政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。