安倍首相暗殺の揶揄を翻訳した「大翻訳運動」に弾圧の嵐…中国本土で40人拘束か

2024/05/27
更新: 2024/05/27

中国本土や香港の有志が行う翻訳プロジェクト「大翻訳運動」に関わった人々が相次ぎ当局に拘束されていることが、元関係者への取材で分かった。中国共産党がこの運動の影響力をおそれ、徹底的な取り締まりに乗り出したとみられる。

大翻訳運動とは、中国本土のインターネット上の過激な書き込みを日本語や英語など他言語に直接翻訳して、X(旧Twitter)などSNSで発信するキャンペーンだ。中国本土の子供たちへの反日教育や、一昨年の安倍晋三元首相暗殺事件を揶揄する残忍な書き込みも翻訳され、日本でも反響を呼んだ。

香港出身の元ボランティア、タムさん(Tam、仮名)が最近、大紀元の取材に応じた。タムさんによれば、2022年半ばには中国本土で少なくとも40人以上の関係者が拘束されたという。運動の「リーダー」のXアカウントも、それ以降音信不通の状態が続いている。

「大翻訳運動の核心的な理念は、中国共産党政権の脅威について国際社会の危機感を呼び起こすことだ」と、タムさんは翻訳の活動について語る。

2022年のロシアのウクライナ侵攻時には、中国国内でウクライナへの誹謗中傷が横行。これらの内容を海外へと大量に発信することで西側諸国における中国共産党の批判が高まり、結果的にそうした国内投稿を減少させた。

中国共産党は開戦当時、不鮮明な態度を示しており、仲介を期待する一部の西側諸国もあった。しかしこうした投稿を翻訳して国外発信することで、侵攻を正当化しようとする中国共産党の狙いを暴露させた。

中国反体制派、龔與劍氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し「基本的に中国国民の目にはウクライナが攻撃者で、ロシアは侵略されたかわいそうな国と映っている」「思考回路が完全に逆さまになっている」と述べた。

プロパガンダに詳しい台湾民主主義実験室の沈伯洋理事長も「翻訳によって実態が暴かれ、国民の考え方に影響を与えることを中国共産党は恐れている」と語る。

いっぽう、タムさんによれば、中国本土からも戦禍のウクライナに寄付した人もいる。「彼らの自由への献身的な精神には感動した」という。

本土同様に外国人にも規制厳しい香港

いっぽう、香港では外国人を含む在住者への言論弾圧が厳しくなる一方だ。タムさんによれば今年3月、香港国家安全維持法の施行によって、香港ではネット上での反政府的言論の発信者が逮捕されている。

「ある外国人は、海外で中国(中国共産党)政府や香港政府に反対する専門ウェブサイトを運営していたが、そのページを既に閉鎖していたにもかかわらず、香港に戻った際に逮捕され、5年の刑を宣告された。当局がどのようにして証拠を入手し、居場所を特定したのかはわからない。しかし、香港に入港した途端に逮捕されてしまった」

ますます厳しくなる言論弾圧を受け、タムさんは渡米し亡命を申請した。現在、ロサンゼルスの移民収容所にいる。収容所では行動の自由が制限され、外部との連絡も電話のみに限定されているという。タムさんは6月に裁判所に出廷する予定で、弁護士と保釈の保証人を探している。

タムさんは香港に強制送還された場合、拷問や投獄、性的虐待の危険性を危惧しており、そうした事態を避けるためにも、現在は米国での庇護を望んでいる。

大紀元日本 STAFF
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