香港は中国からロシアへの半導体供給のカギとなった

2024/05/03
更新: 2024/05/02

 

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの本格的な軍事侵攻を開始して以来、香港で「ロシア」を社名に含む新規登録企業が急増した。

中国共産党(中共)がロシアに供給する半導体などのハイテク製品のサプライチェーンにおいて、香港が重要な拠点になっていることを示す証拠は多量にある。

一部の中国人アナリストは、中国共産党は香港を大陸と結びつけ、香港はもはや仲介者の役割を果たしていないと指摘している。 アントニー・ブリンケン米国務長官が最近中国を訪問したのは、「中共がロシアを支持し続けるなら、米中は再び貿易戦争に突入し、制裁はさらに厳しくなるだろう」という最後通牒を発したという意味だ。 その時には、アメリカの対中制裁は香港にも及ぶだろう。

4月26日、中国の王毅外相との会談で、ブリンケン氏は「ロシアのウクライナに対する残忍な侵略戦争に拍車をかけている」北京からの部品供給について懸念を表明した。ブリンケン氏は「中国は工作機械、マイクロエレクトロニクス製品、ニトロセルロース(軍需品やロケット推進剤の製造に不可欠)、その他モスクワが、防衛産業基盤を強化するために使用する多目的使用品目の最大の供給国である 」と述べた。

「もし北京がこの問題を解決しなければ、ワシントンがこの問題を解決するだろう」と警告した。

カーネギー国際平和財団の報告書(2023年)によると、香港はロシアの秘密購買網の中継地点として機能しており、欧米製のマイクロ電子部品をロシア軍関連の企業に流している。

ロシアのウクライナ侵攻以来、香港のロシア向け集積回路輸出は急増し、2022年の半導体輸出額は約4億ドル(約621億7938万円)に達し、中国に次いで2番目、ロシアと半導体を取引する他のどの国よりもはるかに多い。

インドの調査会社エクスポートジーニアス(Export Genius)のデータによると、ロシアの半導体輸入記録から、2022年2月24日から12月31日の間に1件10万ドル以上の取引があった3292件のうち、約70%が米国のチップメーカー製で、総額約7億4千万ドル(約1134億2734万円)に上った。

ワシントンのNGO団体Silverado Policy Acceleratorが提供したデータによると、2022年3~12月の間に、中国と香港はロシアに輸出したチップの90%近くを取引額で占めた。

非営利調査団体C4ADSのロシアの税関データによると、2023年上半期に、ロシアに出荷されたハイエンドチップの数は急増し、その多くは香港経由で輸送された。

2023年1~5月の間に、200社以上のロシア企業が米半導体企業テキサス・インスツルメンツ(TI)から2500万ドル(約38億8621万円)相当のTI製チップ1万7千個を受け取っており、最大の受け取り先はNPPイテルマとVMKの2社であった。これらの企業が受け取ったチップは、香港に拠点を置く2社が加工したもので、この2社は、2023年10月にロシア軍事関連企業に供給したとして、米国から制裁を受けた。

テキサス・インスツルメンツ(TI)社ともう一つのアメリカの半導体企業アナログ・デバイセズ社は、香港法人へのチップの直接販売を否定している。

社名に「ロシア」を冠する新会社が急増

2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、香港では社名に「ロシア」を含む新規登録企業が急増している。

香港の発展調査を専門とする現地組織「リバティ・リサーチ・コミュニティ」は、会社登記所に新たに登記された会社や社名を変更した会社のリストを調査した。

同コミュニティによると、ロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日以降、2022年10月までに香港で新たに「ロシア」を社名に含む会社が35社登録された。 しかし、2021年の同時期には13社しか登録されておらず、「大幅な増加」を示している。

また、このリストでは酒類産業に関わる企業の割合が最も高いが、農業、化学、エネルギー、金融など、比較的センシティブな産業に関わる企業もかなり高い割合を占めていることが分かった。

2022年10月、香港の法律事務所ONC Lawyersのマネージング・パートナーであるシャーマン・ヤン氏はブルームバーグに対して、(ロシア)国有企業を含む多くのロシア大企業が香港の法律事務所と提携し、ロシアを香港に取り込むことを検討している、と述べた。彼ら(ロシア)は、香港がニューヨークやロンドンのような場所よりも「友好的な司法管轄区」になることを望んでいる。

ヤン氏によると、同事務所はロシアのクライアントと予備的な協議を行ったが、そのうちの何社かは、登録の一部を香港に変更し、ロシアでのビジネスは継続することを求めていたという。

専門家:米国の制裁には香港も含まれる

2019年の香港のデモ以降、中国共産党(中共)は香港に対する統制を強化し、基本法で約束された「一国二制度」としての自治の度合いが、その約束が中国共産党によって、一方的に破られ失われた。 ロシアのウクライナ侵攻以来、香港当局は中国共産党(中共)の認可の下、欧米の制裁をあからさまに無視し、輸出規制を意図的に緩めてきたのだ。

カーネギー国際平和財団の報告書によれば、東西を結ぶ中立的な貿易ハブとしての香港の地位はもはや存在しない。 同報告書によれば、「香港とロシア間の高水準の半導体貿易と、香港政府が西側の制裁に公然と反抗していることは、香港は台頭しつつある中露枢軸の陣営にしっかりと立って、立場を鮮明にしたのだ」という。

3月29日、バイデン政権は、中国共産党が米国のAIチップやチップ製造装置を調達することを防ぐ規則の変更を再度発表し、発表から1週間も経たない4月4日にすぐに発効した。

166ページに及ぶ改正法案には、米国から中国への半導体輸出の制限と、それらのチップを搭載したノートパソコンへの制限が含まれている。 これらの制限は、ローエンドの成熟したチップ産業にまで拡大される可能性が指摘されている。

エポックタイムズ中国版のコラムニストでシニア・エディターの石山氏によれば、中国共産党は、香港と大陸を結びつけており、香港はもはや仲介者の役割を果たしていないという。

ブリンケン氏の訪中は最後の交渉となるはずで、中共がロシアを支持し続ければ、米国はさらに厳しい制裁を開始するだろう。

石山氏は、米国のハイテク製品を入手するルートを、中共に対して徐々に厳しくしており、米中貿易戦争の激化が間近に迫っているため、米国が、今後中共とロシアに対して発動する貿易制裁、特にハイテク分野での厳しい制裁には、必ず香港が含まれると考えている。

「かつて『スーパーコネクター』であった香港は、今後さらにこの渦に巻き込まれ、大きな損害を被る可能性がある 」と、石山氏は結んだ。 

 

Cindy Li
オーストラリアのエポックタイムズで、主に中国関連の記事を執筆します。
Julia Ye