アメリカの複数の州は、中国共産党に対抗するため、州独自の措置を、連邦政府よりも迅速に進めていた。これには、TikTokの使用禁止や中国企業による土地購入規制などが含まれ、州議会がこれらの措置を連邦政府の対応を上回るペースで制定している。
フロリダ州からインディアナ州、モンタナ州に至るまで、各地の州議会は、中国の個人や企業による土地購入や工場設立など、国家安全保障に影響を及ぼす可能性のある経済活動に制限を加える法律や規制を、次々と制定している。
アメリカの州議会は、しばしば「民主主義の実験室」と称され、革新的な法律を創出することがある。情報提供サービスBillTrack50.comによれば、2023年の初めから現在まで、アメリカの複数の州およびワシントンD.C.で、中国関連の法案が合計624件提出されており、これは連邦議会で提出された法案の数663件に匹敵する。
30州以上が連邦政府の対策に先駆けてTikTok使用を禁止
2023年4月24日、ジョー・バイデン大統領は中国の親会社バイトダンス(字節跳動)に対し、TikTokの売却を命じる法案に署名した。これに先立ち、30州以上がすでにTikTokの使用禁止を定めていた。
2023年には、バージニア州のグレン・ヤングキン知事が、中国人による州内での土地購入を規制し、州政府施設でのTikTok使用を禁止する法律に署名した。ヤングキン知事は、「州知事と立法者は、市民の安全と保護を確保する義務がある」と述べ、さらに「北京は世界の支配を目論み、その過程でアメリカを犠牲にしようとしている」と警鐘を鳴らしている。
バージニア州のフォードとCATLによる電池工場合弁事業が中止
ヤングキン知事は、フォード社と中国のCATL社がバージニア州で計画していた電池工場の合弁事業を中止させた。このニュースは一時的に全米の注目を集めた。ヤングキン知事は、「バージニア州の納税者のお金が中国の技術支援に使われることは許容できない」と述べた。フォード社は、この後ミシガン州でプロジェクトを縮小して進めることを決定したが、地元の反対に直面している。
アメリカ人の中国共産党に対する否定的な見方が増加
フェンタニルの輸入問題、工場閉鎖、雇用喪失に加え、2023年には中国共産党のスパイ気球がアメリカ上空を飛行し、COVID-19の流行が続く中、アメリカ国民の中国共産党に対する否定的な印象が強まっている。
ピュー・リサーチ・センターの2023年4月の調査結果では、80%以上のアメリカ人が中国に否定的な見方を持っており、約40%が中国を敵と認識している。バイデン政権は中国を競争相手と見なしているが、「非常に否定的」な見方をする人の割合は2022年から4%増加している。
ギャラップの2023年3月の調査では、わずか15%のアメリカ人が中国に好意を持ち、半数が中国をアメリカの最大の敵と見なしている。
■ノースダコタ州が中国フフォン・グループ(阜豊集団)のトウモロコシ加工工場建設を停止
2023年、ノースダコタ州グランドフォークス市は、中国の食品添加物製造業者フフォン・グループによるトウモロコシ加工工場の建設計画を中止させた。この工場は地元で1千の新しい雇用を生み出すとされていたが、フフォン・グループが中国共産党と関連があるとして反対した。
この街の人口は約5万9千人で、共産主義やスパイ活動に関する議論が盛んに行われている。不確実性が高まる中、工場が近くのグランドフォークス空軍基地を監視するために使われる可能性に対する懸念が高まり、投資計画は中止を余儀なくされた。
フフォン・グループの他州への進出は続くが、反対の声も絶えず
フフォン・グループ問題はその後も他州に影響を及ぼしている。南ダコタ州のクリスティ・ノエム知事は2023年に、敵と定められた諸外国に関連する企業に対して、州内での活動を禁止する行政命令に署名した。
フフォン・グループはインディアナ州で工場用地を選定したが、新たに施行された州法に再度直面している。この法律では、敵対的な国家の企業による農地取引が、禁止されている。
インディアナ州の上院議員ジャン・ライジングは、地元のトウモロコシ生産者たちが工場建設を歓迎している一方で、それに伴う犠牲も受け入れるべきだと述べている。
この州法はフフォン・グループを含む10の中国企業に影響を与え、その結果インディアナ州は約140億ドル(約2兆2千億円)の損失を被る可能性があるとされている。
フフォン・グループは別の工場用地を探しており、今後はミネソタ州やイリノイ州への進出も検討している。
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