中国共産党(中共)は台湾を武力によって統一することを否定しないが、海外メディアによる中国人へのインタビューからは、多くの国民が台湾を巡る戦争にそれほど興味を示していないことが伺われる。
彼らは、中国が経済的困難を含む多くの国内問題に直面しており、これらの問題が台湾の統一より優先されるべきだと考えている。
「かつてここが戦場だったなんて想像もできない」と、23歳の邵宏天(仮名:シャオ・ホンティエン)さんは、「対立的な行為ではなく、平和的な手段による統一を望むと述べ、もし叶わないなら、現状維持を望む」とアルジャジーラに語った。
邵さんによると、多くの友人も同様の見解を持っているという。
「台湾の人々は私たちに何の害も及ぼしていない。なぜ戦わなければならないのか?」「台湾統一において戦争する価値はない」
彼は両岸間の戦争は双方に甚大な損害がでると確信している。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の21世紀中国センターが昨年公表した研究では、邵さんたちだけでなく、台湾との戦争に反対する中国人が少なくないことは明らかだ。
この調査により、中国人が台湾統一に関する様々な政策をどの程度支持しているかが分かり、回答者の約3分の1が全面戦争による統一を受け入れ難いと感じている。戦争以外の選択肢を全て拒否する者はわずか1%にとどまる。この結果は、中共が主張する「あらゆる犠牲を払っても統一を求める中国人民の意志」に疑問を投げかける。
上海出身の26歳で、勤務先でマーケティングに携わっているMia Wei氏は、この結果に驚くこともなく、
「一般市民は政府に統一を推進するよう要求していない」
「統一の必要性を市民に信じさせようとするのは政府のプレッシャーである」
「台湾統一より、もっと重要な問題に中国人は関心を持っていると思う」
とアルジャジーラに述べた。
国家主席の習近平は、台湾統一を強く推進し、台湾への軍事圧力を強化している。CIAのウィリアム・バーンズ長官によれば、米国の情報では、習近平は2027年までに台湾侵攻のため軍事準備を指示しているが、ロシアのウクライナ戦争の経験を踏まえて、彼は自らの能力に疑問を抱いている。
最近、中共軍はほぼ毎日のように台湾の領空と領海に侵入している。特に米国ナンシー・ペロシ前下院議長が台北を訪れ緊張が高まる時期に、中共は台湾周辺で大規模な軍事演習を行いミサイルを発射した。
習近平は、新年の挨拶で、統一を達成するために武力行使も辞さないと述べた。昨年、軍に対し戦闘準備を強化するよう呼びかけている。
米国のセントトーマス大学で中国研究を専門とする葉耀元副教授はアルジャジーラに対し、「中共は台湾との戦争で迅速な勝利は保証されていない」と語る。
「多くの中国人が台湾にビジネスパートナーや友人、家族を持っているため、台湾やその住民に被害が及ぶことは望んでいない」と彼は付け加える。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究によると、若い世代の中国人は、前世代の人よりも強硬な政策に対し反発している。
「若者は通常、戦争の最前線に送られるため、彼らは自然と戦争に反対する傾向にある」と葉氏は言及する。
邵宏天さんは、台湾とその同盟国に対し戦争で勝利するには、自分のような若者を多数動員する必要があると考えている。
「多くの中国の若者は台湾侵攻の戦争で命を落とすことを拒否すると思う」と彼は述べている。
一方で、ワシントンにある「グローバル台湾研究センター」の非常勤研究員エリック・チャン氏はアルジャジーラに対し、「中国人の考え方がどうであれ、統一は中共の核心的な物語であり、一般市民と議論の余地はない」と述べた。
中共が国民を巻き込んだ過去の政治運動や粛清は、多くの中国人の命を奪ってきた。朝鮮戦争では、中共軍は戦闘で1万9202人、非戦闘で2万8954人の死者を公式に認めているが、非公式では総死傷者数は約6万人に達する。
しかしチャン氏は、中共の指導者たちが多くの人々の命を犠牲にする時代は終わったと指摘する。そして習近平は、このような損失は今の中国人にとっては受け入れられないと認識する必要があると付け加えている。
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