生徒が「窒息しそうな」教育環境 監視カメラで天井が埋め尽くされた学校の教室=中国

2024/03/08
更新: 2024/03/08

何しろ「監視大国」として悪名高い中国である。中国の恐るべき「監視社会」は周知の事実であるが、それにしても最近「国民への監視レベルが、ここまできたか」と背筋を凍らせるような、当局による過剰な監視ぶりを伝える投稿がSNSにしばしば上がっている。

先日、北京で行われた2つの重要会議「両会」の際に、北京市内を埋め尽くした検問所と監視要員もそうであった。中国共産党とその首魁・習近平の頭の中は、恐怖心しかないらしい。

「そもそも論」からして意味不明

政治と同じ次元で教育の場を論じられるわけではないが、この教室の異様な光景は、不思議なほど共通している。

中国の学校に、監視カメラだらけの「刑務所のような教室」が存在することは、もはやニュースにならないほど知られた話だが、このほど、河北省にある「保定学院」の教室の様子を映した動画がネット上で拡散されて、またもや物議を醸している。

今月4日にSNSに投稿された動画の中には、真下にある生徒の机に向けて、教室の天井いっぱいに設置された無数のカメラがあった。各学生の頭の上に、監視カメラが1台ついているのだ。

そもそも疑問であるのは、なぜこれほど多くの、それこそ「天井を埋め尽くすほどの」監視カメラが教室に必要なのか。たとえ何か名目上の目的があろうとも、1~2台ではなく、これほど多数のカメラを購入して設置する理由が、全く理解できないのだ。

試験を実施する際の、学生のカンニング防止のためか。授業中に居眠りをする学生を監視し、あとでペナルティを科するためなのか。いずれにしても意味不明であり、ただカメラをずらりと天井に吊るす過剰ぶりは、理解可能なレベルを遥かに超えている。

ある市民は「それは校長が、監視カメラを売る会社と密接な関係にあるからだろう」という。その事実確認はできないが、そうした憶測さえ現実味を帯びるほど狂気的な実態が、中国の学校にはある。

この動画をめぐっては「不快だ」「見ているだけで窒息しそう」「まるで大きな監獄だ」といった非難が殺到した。「こんな息苦しい環境におかれる子供たちが可哀そうだ」など、生徒や学生の心身の健康を懸念するコメントも多く寄せられている。

中国メディア「星視頻」の取材に応じた同学校の職員によると「普段の授業時には使わず、テストの時にだけ、監視カメラのスイッチを入れている」という。つまり、学校がテストを実施する時の「カンニング防止」のためであるらしい。

しかし、この職員の主張に対して、ネット上では「異常すぎる」「納得できない」とする声も少なくない。

学校教育の「そもそも論」から言えば、まずは教師と生徒との間に人間としての信頼関係が築かれ、その上で「カンニングをしてはならない」という教育的指導があって然るべきではないか。

言うまでもないが、教室に監視カメラを設置したら、その時点で「教育」ではなくなる。学生や生徒を信用せず、まるで囚人と同等の、始めから監視すべき対象にしてしまうからだ。

しかし、中国共産党の支配下に全てが存在する現在の中国では、すべてが監視の対象となる。なぜなら、そこでは「人間あつかい」が微塵もなされないからである。

それにしても、ブドウ棚ではあるまいし、教室の天井いっぱいに吊り下げられた監視カメラの光景は、もはや正気の沙汰ではない。

(河北省保定市のある学校の教室。天井いっぱいに、監視カメラが吊り下げられている)

湖南省の学校にも「カメラ天井」

こうした「監視カメラだらけの教室」は河南省の学校にもあった。以下は、2023年9月に報道されたNTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショットした画像だが、何とも言えぬ圧迫感と息苦しさが画面越しにもヒシヒシと伝わってくる。

湖南省のある学校の教室の天井に並ぶ大量の監視カメラ。(2023年9月のNTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

本当に必要な時には、必ず「故障」

中国では近年、校舎をふくむ高い建物から飛び降りるなどして、自ら命を絶つ学生が後を絶たない。

勉強漬けで、とにかく成績至上主義。そのため、親や周囲からの巨大なプレッシャーに押しつぶされるか、死に物狂いで受験勉強し著名な大学に入学したとしても、そこを卒業すれば、今はすさまじい就職難で仕事はデリバリー配達員しかない。

そうした現状から、将来に希望を持てない学生が極めて多いことが、急増する自殺の大きな原因になっている。生徒の自殺を防止するために、校舎の窓などに「鉄の柵」や「金網」を張り巡らす学校も出てきている。

しかしながら、誠に皮肉なことに、学校の内外に設置された大量の監視カメラは、いざ学校や現地当局にとって「不都合な事件」が起きるたびに、なぜか必ず「故障」するのだ。

この現象は過去に無数に起きていることから、ネット民はこれを「党性の強い監視カメラ」などと皮肉たっぷりに呼んでいる。つまり、党(中共当局、あるいは学校側)にとって「不都合なものは一切映りませんよ」ということだ。

具体的には、例えば学校内で不可解な死を遂げた学生や生徒の遺族が、その監視カメラ映像の提供を求めても、学校側は「その時、カメラは故障していた。だから何も映っていない」として拒否するケースがほとんどなのだ。

中国のある学校に設置された「生徒の飛び降り自殺を防ぐための鉄の柵」、2024年1月。(SNSより)

真相隠蔽が当たり前の不条理

中共政府は一貫してネガティブなニュースを隠蔽し、「今の中国の情勢は、すばらしい」という幻想を意図的に作り上げようとしている。そのため、どれほど国民の関心が高かろうが、学生の自殺ニュースを含む「不都合なニュース」は検閲に遭い、ネット上から一掃されることが多い。

また学校側と現地の警察、政府当局がグルになって証拠隠滅・真相隠蔽に躍起になるケースも多く、遺族が自殺の真相を知ることは極めて困難である。

当局が遺族や声を上げるネット民を弾圧して、まるで何もなかったかのように、全てを隠滅して葬り去ろうとする。このパターン化された、恐るべき「事件処理方法」は、もはや中国の社会問題になっているといっても過言ではない。

つまり、学校の教室の天井にぶら下がった監視カメラがいくつあっても、政府や学校に「不都合な事件」が起きた時は、なぜか必ず「全台が故障」するか「その時に限って、電源が入っていなかった」となる。

学生や子供たちが行方不明になり、臓器が抜き取られた変死体になっても、これらの監視カメラが本来の機能を発揮することは、全くと言ってよいほどない。

「学校内で不可解な死」を遂げた我が子の通う学校の門前にひざまずき、大声で泣きながら社会の助けを懇願する遺族、「河北経貿大学」にて、2023年5月17日。(SNSより)

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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。