米自動車業界団体である米自動車工業会(AAM)は20日、米自動車産業を脅かす、メキシコからの安価な中国製電気自動車(EV)の流入を防ぐため、米政府は貿易措置を実施すべきだと訴えた。
AAMは報告書で「中国共産党政府の権力と資金によって支えられている低コストの中国自動車が米国市場に入ってくれば、米自動車産業が消滅するほどの事態となる可能性がある」と指摘。中国に本社を置く企業によってメキシコで生産された自動車や部品が、北米自由貿易協定の恩恵を受けないよう、米政府は積極的な政策を取らなければならないと強調した。
AAMによれば、2017年から2023年にかけて、中国から米国への自動車部品輸入が17%減少したのに対し、メキシコからの輸入は同期間に20%増加した。これは中国製部品がメキシコ経由で米国の関税を回避して米国に入ってきていることを示していると指摘した。
この警告は、中国のEV大手BYD(比亜迪)がメキシコでの工場開設を計画しているとの報道の中で発表された。奇瑞汽車や上海汽車集団など中国の有力なEVメーカーも既にメキシコに工場を建設する意向を示している。
中国共産党は長年にわたり、政府補助金と優遇政策を通じて国内のEV産業を支援してきた。MITテクノロジーレビューによれば、2009年から2022年までの間に、中国共産党政府はEV産業に290億ドルを補助金と減税の形で注ぎ込んでいるという。
「無駄にする時間はない」
1月、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は「貿易障壁がなければ、彼ら(中国のEV)は世界の競合相手を駆逐するだろう」と警告した。
昨年11月には、米下院の中国特別委員会が中国製EVの氾濫を防ぐため、中国車への関税引き上げと原産国規則の強化を検討するようバイデン政権に求めた。
欧州では、中国製自動車への関税率が10%と低く、EUのグリーンディール政策の恩恵を受けている。その結果、EUの自動車メーカーは、主に中国の競合他社に自国市場でのEV競争を奪われつつある。
AAMは「多額の補助金を受けた中国からの輸入品が米国の自動車産業にもたらす脅威は重大であり、その深刻さの度合いは連邦政府の政策立案者がどのように対応するかにかかっている」と警告。「この取り組みは即座に始めるべきであり、時間を無駄にする余裕ない」と訴えた。
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