カナダの大学がWeChatを禁止 国家安全保障を念頭に

2024/02/22
更新: 2024/02/22

2024年2月12日、カナダのコンコルディア大学はWeChatに対する禁止令を更新し、同大学の無線および有線ネットワーク上でのWeChat使用を禁止した。

カナダの大学でWeChat使用禁止

昨年11月14日、コンコルディア大学は、大学が所有するデバイスでのWeChatの使用を禁止した。マギル大学も昨年11月16日、同じ禁止令を発表した。また、WeChatがインストールされた個人所有のデバイスで、学内のメモや通信、電子メール、個人情報、学生や職員の記録、パスワード、暗証番号など、大学のデータへのアクセスに使用しないことが強く推奨されている。

カナダ政府が2023年10月30日に、サイバーセキュリティのリスクとして、政府所有の携帯端末でのWeChatの使用を禁止すると発表した。

11月3日にケベック州政府によって制定された法律は、すべての公的機関においてもWeChatの使用とインストールを禁止している。コンコルディア大学とマギル大学がWeChatを禁止したのは、その最新の指示に従ったもの。

ケベック州の大学の留学生・李園さんは大紀元に対し、「学校からのメールには、学校の事務や仕事に関連することにWeChatの使用は禁止すると書いてある。個人のスマホを使って学校の事務を行う場合も、WeChatをインストールしてはいけない」と語った。

カナダ・アルバータ州クレモナの元議員である石清氏は、WeChatのようなものを完全に禁止するのは難しいと語った。

海外の多くの中国人は、WeChatを利用して本土の友人や家族と連絡を取っているから、インストールを禁止するのは現実的ではないが、学校や政府、政府出資の組織からWeChatを禁止することは可能だと指摘した。

「一部の大企業は政治的立場を示すためにWeChatを禁止するかもしれない」

専門家、「WeChatはデータスキャンを行い、ユーザーを監視」

2016年10月のレポートで、国際人権組織・アムネスティ・インターナショナルは世界の11のテック企業が使用する暗号化技術の効果を検証し、100点満点中、WeChatの得点は0点だった。

同組織は、WeChatがエンドツーエンド暗号化を実施しておらず、「バックドア」を介してシステムにアクセスされる可能性もあると指摘した。同アプリは透明性に関する報告を一切行っていないと明かした。

一部中国企業でさえもWeChatを信用していない。2021年11月に「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が報じたところによると、セキュリティの懸念から、中国移動(チャイナ・モバイル)、中国建設銀行、中国石油を含む少なくとも9つの国有企業が従業員のWeChat利用を制限している。

2023年3月、ロシア政府は官僚に対し、WeChatなどのアプリの使用を禁じた。

石清氏は大紀元に対して、WeChatはおそらくTikTokよりも恐るべきものだと指摘した。TikTokは中共(中国共産党)にコントロールされていないように見せようとしているが、WeChatは外部の目を気にせず、個人や社会的つながりに関する情報収集においてさらに積極的だ。ターゲットとされたユーザーのWeChatの友達全員が、監視・検閲される。

シリコンバレーの通信エンジニアである鐘山氏は大紀元に対し、WeChatが多量のデータをスキャンし、ユーザーのスマートフォン内のデータを保持していると述べた。

また、ファイルにアクセスし続け、スマートフォン上のあらゆるデータにアクセスできる。WeChatはこれらのデータを中共政府に送信している。

「WeChatはチャット記録を中国国内にアップロードするだけでなく、敏感ワードというフィルターを設けている疑いが持たれている。つまり、会話内容に敏感なキーワードが含まれている場合、WeChatはそれを報告する。これは実験データによって証明されている」

2020年5月7日、トロント大学のセキュリティ研究グループ・Citizen Lab(シチズンラボ)は、WeChatが中国本土以外のユーザーの活動をいかに綿密に監視しているかを示す報告書を発表した。 

Citizen Labの調査によって、中国国外で登録されたWeChatユーザー間で送信された文書や画像が、中国国内のユーザーに送信されると、検閲が発動されることが判明した。

2022年カナダ・サイバーセキュリティセンターの「国家サイバー脅威評価2023-2024 (National Cyber Threat Assessment 2023-2024)」には、以下のように記されている。

「WeChatは、世界中の何十億もの人々に利用されている中国発のソーシャルメディア・アプリであり、特に海外をターゲットとした誤報や悪意のあるメッセージ(MDM「モバイル端末管理」)、プロパガンダの流布に利用されている」

トランプ前政権のジョン・デマーズ司法次官補(国家安全保障担当)は、2020年にシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のオンラインイベントで、中共は中国人留学生の中共への忠誠心を確保するための通信ツールとしてWeChatを使用していると述べた。

同氏は、中共はWeChatを使って在米中国人留学生にメッセージを伝え、彼らが「自由や民主主義、信教の自由といった思想」に触れることを防ぐと指摘した。

シンクタンク・豪州戦略政策研究所のファーガス・ライアン研究員は、国家安全保障が危機に瀕している場合、外国政府はWeChatやTikTokが海外ユーザーから大量の個人データを収集することを禁止すべきだという意見に同意している。

宋唐
易如