[ロンビレール(フランス) 29日 ロイター] – フランス全土で29日、インフレや安価な輸入品、生活支援への対応を求めて政府に圧力をかけるため農家が高速道路をトラクターの長い列で封鎖し、猛烈な怒りを表明した。農家の抗議行動は既にドイツやポーランドなど他の欧州諸国で発生。フランスにも連鎖した形だ。6月の欧州議会選挙を控え、極右勢力は農家の支持を一段と集めて議席を拡大する情勢とみられている。
パリ南部の高速道路A10号線の封鎖場所で演説したジェラルディン・グリヨンさん(46)が槍玉に挙げたのは、多くの農業規則や補助金を決める欧州連合(EU)と、マクロン大統領。「(マクロン大統領は)農家のことなどどうでもいいんだろう」と不満をぶちまけた。横断幕には「マクロン、(要求に)応えよ」と書かれていた。
こうしたスローガンにフランス政府は揺さぶられた。欧州議会選を念頭に抗議活動の激化を警戒する政府は、農業用軽油の補助金を段階的に削減する案を撤回し、環境規制の緩和も約束した。さらに、休耕地の規制緩和についてEU諸国に同意を働きかけると表明した。
また、安価な輸入品に対する農家の怒りを受け、大統領府は29日、南米の関税同盟メルコスル(南部共同市場)との通商協定交渉の妥結は不可能とEU欧州委員会に強調し、EUが交渉を打ち切ったと理解していると発表した。
ただ、この交渉に反対してきた複数の農業団体は依然納得しておらず、必要な限り道路を封鎖する方針を表明した。有力団体の幹部はラジオで「危機打開の解決策を迅速に得られるように、われわれは政府に圧力をかける」と語った。
2月1日にはEU首脳会議が開かれる。フランスのフェノ農業・食料相によると、大統領は、従来よりも農家寄りの複数の政策を前面に押し出す方針だ。また、大統領府関係者の話では、大統領はフォンデアライエン欧州委員長とこの件で会談を行う予定という。
休耕地と補助金を巡る問題も欧州委員会の議論で俎上に上がる可能性がある。農家がEUの補助金を受けるには諸条件を満たす必要があり、その中には農地の4%を自然の生態系回復を図る「非生産的」地域に充てるという要件がある。これは休耕地とすることで可能となる。
EU当局者2人はロイターに対し、欧州委員会はフランスの要請に応じて休耕地に関する規則の変更を検討していると明らかにした。これは農家の懸念に応えるための選択肢の一つという。
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