国際 報告書は、AIが「国内における所得と富の不平等」を深める可能性があると警告している。

IMFの研究「AIが40%の雇用に影響する」 テック企業のレイオフは拡大

2024/01/19
更新: 2024/01/19

人工知能(AI)は将来の仕事のあり方を形作る技術である。国際通貨基金(IMF)が1月14日に発表した研究によると、世界の雇用の約40%が人工知能(AI)の影響を受ける。

この報告書は、1月15日にスイスのダボスで開幕したばかりの2024年世界経済フォーラムの前に発表された。フォーラムでは、OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマン氏やマイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラ氏を含む著名な技術者が講演した。

調査で、AIが高技能職に影響を与えることがわかった。先進国では、AIへの影響はより大きく、これらの職業の60%がAIの影響を受ける。その主な理由は、分析や創造的思考を要する「認知タスク」指向の仕事が普及しているためだ。これらの経済は、より多くのリスクに直面する一方で、後進国や新興国よりもAIから多くの恩恵を受けるだろう。

報告書によれば、既存の業務にAI技術を統合することにより影響を受ける職業の約半分は生産性の向上が見込まれている。しかし、残りの半分については、現在人間が担っている重要な仕事をAIが代行する可能性があり、労働需要が減少し、賃金が下がり、雇用が制限される可能性がある。極端なシナリオでは、一部の仕事が消滅する可能性さえある。

新興市場では、雇用の40%がAIにさらされることになるが、発展途上国では26%となっており、途上国の方がAIがもたらすリスクが少ないことを示している。一方、発展途上国の企業などはAIを十分に利用していないため、先進国とのデジタルの格差や収入格差が拡大している。

報告書はまた、AIが国内における所得と富の不平等を深める可能性があると警告した。

IMFは調査結果を引用し、AIは経験の浅い労働者がより迅速に生産性を向上させるのに役立つとしており、若い労働者は機会を利用しやすくなるかもしれないが、年配の労働者は適応するのに苦労するかもしれないと述べた。

また高所得の労働者がAIの助けを借りてより効率的になり、所得を大幅に増加させたり、AIを活用した企業が生産性を向上させたりして、資本収益率が上昇し、高所得者が有利になる可能性を指摘した。

その一方でAIを活用しない労働者との所得格差を悪化させる可能性があると述べている

拡大し続けるテック企業のレイオフ  AIが大きな理由

2024年に入ってわずか2週間で、ハイテク大手のグーグルやアマゾンからさらに小規模な新興企業まで、米国のテック企業は大小合わせて5500人以上を解雇した。これは過去2年間のテック業界の大規模レイオフ(一時解雇)に続くものだ。

テック企業のレイオフ追跡サイトのレイオフス・ドット・ファイ(Layoffs.fyi)によると、昨年の技術系レイオフは驚くべきことに26万2682人に達し、2022年には16万4969人だったという。

懸念すべきは、テック企業のレイオフの波は2024年も拡大しそうなことである。AIの台頭が雇用を脅かす大きな理由となっている。

最近の解雇発表の多くは、企業がAIへの多額の投資を明らかにした後に行われた。主な理由が2つあると考えられる。

1つは、大規模な投資に伴い、企業は資源の再配分を余儀なくされていること。

もう1つは、ますます多くのテック企業が、AIを伝統的な職種の代替として考慮していることだ。
 
IMFの報告書は、先進国と新興国がAIの利点を責任を持って最大化するための規制枠組みを確立する必要があると示唆している。さらに、低所得国に対し、技術格差を縮めるためにインフラ開発と熟練労働力の訓練を強化するよう勧告している。

AIが世界経済にどのような影響を与えるかを調べているのは、IMFの調査だけではない。ゴールドマン・サックスの調査は、生成AIは世界のGDPを7%、7兆ドル(約1037兆7360億円)押し上げ、10年間で生産性の伸びを1.5%高めることができると示した。同調査によると、AIの波は世界全体で3億人の正規雇用に影響を与える可能性がある。米国の職業の約3分の2が、AIによりある程度の自動化にさらされることになる。

Aaron Pan