金正恩、戦争への準備か…米国関係にあきらめたら軍事的解決図る可能性=シンクタンク

2024/01/17
更新: 2024/01/16

1950年6月以来、朝鮮半島の状況はかつてないほどの危険に直面している。最新の分析では、金正恩朝鮮労働党総書記が祖父の戦略に倣い戦争への準備を進めている可能性があるという。近年、軍事アプローチを高めロシアとの関係も深めている北朝鮮は、兵器実験を単なる挑発を超えた動きとして捉えている。

米国のシンクタンクであるスティムソンセンターの北朝鮮研究サイト「38ノース」が11日発表した論考によれば、金正恩は希望する米国との関わり方に絶望し、断念した場合、軍事的解決の可能性を取る可能性があるという。

執筆は米ミドルベリー国際研究所のロバート・カーリン研究員とジークフリート・ヘッカー教授。両氏は、北朝鮮の軍事的決断についての評価は困難だが、金正恩氏がワシントンとソウルによる政権崩壊を恐れて軍事行動に出ないとの見方は、歴史的背景の誤読と想像力の欠如になると警告した。

さらに、米韓の「鉄壁の抑止力」に依存することは、現在の危険な状況下では致命的な誤算となる可能性があるという。「北朝鮮が予期せぬ方法で動く可能性を深刻に考慮する必要があり、彼ら(北朝鮮)の計画は、日米韓の軍事的立場の弱点を狙うかもしれない。歴史は、自分たちに良い選択肢がないと考えた人々が、危険な賭けを行うことを示している」と指摘した。

このほか、中国やロシアとの関係強化を通じて、朝鮮半島問題の軍事的解決策を追求する機会と時期を図っているとした。 

北朝鮮は大規模な核兵器庫を持ち、韓国全土、そして沖縄を含む日本のほとんどの地域、グアムに到達可能なミサイルで運搬可能な50~60の核弾頭を有していると推定されている。

北朝鮮は韓国に対して強硬姿勢を固めている。16日付朝鮮中央通信によると、15日に平壌で開かれた最高人民会議(国会に相当)で、金正恩氏は施政方針演説で韓国について「第一の敵対国、不変の主敵」と憲法に明記する必要性を説いた。

兵器実験も進めており、14日には新型固体燃料式の中長距離弾道ミサイルの発射実験を行ったとされる。変則軌道で飛ぶ極超音速ミサイルと分析されている。5日には、北朝鮮は黄海における韓国との海上緩衝区域に200発の砲弾を撃ち込んでいる。

金正恩氏が韓国を統一の対象ではなく敵対的な国家とみなす方針に転換したことに対し、韓国の尹錫悦大統領は「反民族的で反歴史的な集団であることを自ら認めた」と非難した。

尹大統領は、北朝鮮の黄海に向けた砲撃や中距離弾道ミサイルの発射について言及し、北朝鮮の挑発には強く対処する意向を示した。

北朝鮮は、韓国に対する宣伝活動を全面的に停止している。最高人民会議で廃止された祖国平和統一委員会が運営するウェブサイト「わが民族同士」はアクセス不能となり、関連のラジオ放送も途絶えている。さらに、金正恩氏は憲法から平和統一や民族大団結の表現を削除し、南北統一を象徴するモニュメントの撤去を命じている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。