「城管」が露天商の野菜を踏みつける 自撮り動画をネット投稿して自慢?=中国

2024/01/06
更新: 2024/01/06

中国には「城管(城市管理)」つまり市内秩序の管理を任務とする公的な役職がある。無許可の路上販売などを取り締まることが、彼らの主な任務である。

しかし、その実態は「制服を着た反社集団」といってもよいほど横暴を極め、すさまじい庶民いじめが日常的に行われている。

さらに、役目にかこつけて恣意的に罰金を科したり、店の商品を奪い取っていくさまは、街中を闊歩する強盗団に他ならない。罰金として徴集した金銭や奪った商品は、もちろん彼らが着服する。

1月1日、浙江省湖州市の城管が、高齢の露天商の売りものである野菜を踏みつけて潰した。しかもその様子を、どういう動機か不明だが、本人が撮影していた。その動画がSNSに投稿されて、物議を醸している。

野菜を踏みつけ「自撮り」する狂気

動画のなかには、目を疑うような光景があった。結論を先に言えば、これは彼らの正当な職務では全くない。仮にこの場所が露店禁止ならば、まずは口頭で注意すれば良いではないか。

つまり、何らかの正当性のある公務執行ではなく、懸命に働いて生きようとする庶民への虐待であり、公的な制服を着た「暴漢」による明確な犯罪なのだ。まして、それを「自撮り」するに至っては、この城管は何を自慢したいのか、もはや狂気と呼ぶしかない。

動画には、ささやかな露天商と思われる、竿秤を手にもった高齢の男性の姿があった。老人は、自分の三輪の荷車から売りものの野菜が入った袋を手に下げて「いつもの場所」へ運んでいたようだ。

そのとき、動画撮影者である男(城管)の「革靴を履いた足」が飛び出し、地面に置いてあった袋入りの野菜を、執拗に何度も、つぶれるほど踏みつけた。

大切な売りものである野菜が踏みつけられ、蹂躙される場面を、ただ見ているしかない老人は、抵抗することもできない。老人の口から男の行為を止めようとする言葉が発されていたようだが、動画からは聞き取れなかった。

いっぽう、野菜を踏みつける男のほうは、いたって横柄な態度で「なに言ってんだ?」と老人に言いながら、自分が踏みつぶした野菜を、さらに袋ごと蹴り飛ばした。

あるいは、この老人は近郊の純朴な農民であり、自分で丹精込めて育てた野菜を三輪車に載せて、町へ売りに来たのであろうか。青々とよく育った、見事な野菜であった。

しかし、それらは城管の「革靴の足」によって理不尽に踏みつけられ、蹴り飛ばされ、粉々になって散ったのである。

 

(老人の売りものの野菜が、城管の靴で踏みつけられ、蹴り飛ばされた)

 

どこまで続く「城管の横暴」

この城管の男は、自身が野菜を踏みつける場面を撮影したばかりか、その動画を中国SNS微信(ウィーチャット)のグループチャットに投稿した。そのうえ、露天商の老人のことを「負け犬」「恥知らず」などと罵った。

男がグループチャットに投稿した暴言は、以下のように続く。

「面白いから踏んでやったんだ」「踏みつぶせば、売れなくなるからな」「そしたら家に帰って、オレの靴についた泥でも食ってろ」「年老いた犬どもめ、俺様をどうすることもできないだろう」「老いぼれの襟首をつかんでビンタを食らわせたり、地面にひざまずかせる人たち(城管)よりも、オレはまだ優しいほうだよ。腐った野菜の葉っぱを、ちょっと踏んだだけだ。それが何だっていうんだ」

男が露天商の野菜を踏みつける動画や、暴言のスクリーンショット画像などがネットに流れると、あまりのひどさに、市民の怒りに火が着いた。

「湖州の城管が、露天商の野菜を踏みつぶしたうえ、動画を撮って自慢した」。このトピックスは人気上昇し、男の「人間性が欠如した」言動に対する非難が殺到した。ネット世論は「男への厳しい処罰」を求めた。

世論の激しい圧力を受けた湖州市の公安当局は「(この男は)城管ではない。野菜売り市場の管理員であり、規則を守らない露天商を止めていただけだ」と回答した。

また、現地の城管局も「(動画の男は)野菜売り市場の管理員であるにも関わらず、法執行官になりすました。そのため、公安当局に拘束された」と主張した。

「あれは城管ではない」と、すり替える当局

しかし、こうした当局の発表を全く信用せず「男は、やはり城管だ」と見る市民は多い。

というのは、過去にも「警官の横暴」が世論の注目を集めると、当局の発表は必ず「問題を起こしたとされる警官は、正規採用の職員ではない。(単独で法執行を行えない)補助警察だ」という、お決まりの「言い訳パターン」が定着しているからだ。

中国の「人民警察」と「補助警察」の違いは何か。人民警察は法執行規範を遵守し、市民の合法的な権益を守る必要がある。 一方、補助警察は、法執行の資格と権力を持たないため単独で法執行行為を行うことはできず、人民警察の法執行を「補助する」役割である。

法律上、両者の区別はあるにしても、実際には「正規の警察官が市民に横暴をはたらくケース」が非常に多い。それがひどすぎて、世間の批判を浴びた時に「当該の警官は、補助警察だ」という、言い訳にもなっていない言い訳が横行しているのだ。

それと同様、明らかな城管の暴力を「あれは、うちの城管ではない」と話をすり替え、現地の公安もそれに同調して口裏を合わせるという、お決まりの言い逃れパターンに、市民はもはや辟易している。

もちろん、それが正規の法執行ではなく、弱者を虐待して楽しむ変質者の仕業であることは、動画を見た市民の誰もが感じることだ。

 

法執行中の中国の「城管」。相手をひざまずかせ、上から罵倒している。(中国SNSウェイボーより)

 

市民が反撃するケースも増えてきた

実際、野菜売り市場の管理員であろうが、城管であろうが、ひどい被害を受けた野菜売りの老人にしてみれば、その凶暴性はどちらでも同じである。

中共の体制下において、警察や公安をふくむ各種の「法執行官」には、権力を笠に着て、日常的に「弱者いじめ」を楽しむ悪癖がある。

城管のなかには、露天商に対して容赦ない暴力を振るうものも少なくない。露天で野菜を売る90歳のお婆さんが、城管の暴力をうけ、頭を割られて血を流している動画もある。

露天で商売をする市民や近郊農民のほとんどは、毎日の生計を立てることさえ困難な低層民衆である。にもかかわらず、こうした当局者には彼らへの同情も思いやりもないため、その容赦ない取り締まりや暴力は、露天商だけでなく、ひろく一般市民の怒りを買っている。

その証拠に、近年では、城管のあまりの横暴ぶりを見かねた通りすがりの市民が「城管への反撃戦に、率先して加わるケース」も多くなってきているほどだ。

横暴の背景は「中共体制による容認」

城管の男が露天商の野菜を踏みつける動画を自身のSNSに転載した、中国時事評論家である李沐陽氏は、エポックタイムズ日本の取材に対して、次のように述べた。

「あの老人は、あの年になっても野菜売りをして食いつないでいかなければならない。それだけでも本当に大変で、実に可哀そうだ。それなのに、城管らは老人に同情や思いやりを示すどころか、ひどい仕打ちをした。野菜を踏みつぶした上、老人を罵倒した。そして、あの男が言っていた、他の城管たちの非情な行為(平手打ちやひざまずかせること)も、もはや人間のやることではない」

「実際、これらの城管たちの行為は、いずれも中共が容認する下で行われている。彼らの悪行は、今に始まったことではない。しかし中共当局は、それをずっと見て見ぬふりをしてきた。こうした黙認は、実際には支持しているのと同じだ。中共当局の後押しのおかげで、城管もどんどん勝手にふるまい、何らはばかることはない。実際、城管による弱い者いじめは、共産主義が推進する弱肉強食という邪悪の体現に他ならない。これはまさに悪魔の論理である」

「彼ら(城管たち)は、今はやりたい放題の横暴をやっている。しかし、このような邪悪な行為は、将来必ず報いがやってくるだろう。この世には、善には善の、悪には悪の報いが必ずある。人は早かれ遅かれ、自分のした悪行の代償を払わなければならない。だから、この城管たちは、いずれ自分のとった行動を後悔するだろう」

 

(中国の城管による「法執行」の実例。餃子のお店が、めちゃくちゃに壊されている。SNSより)

 

(中国の城管による「法執行」の実例。庶民が生きるための小さな商売に、なぜここまで暴力をふるえるのか。SNSより)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。