経済が悪化の一途をたどる中国では、近年、各地で無差別殺人事件が頻発している。
昨年6月22日、吉林省長春市の女性(28歲)が、高所から落ちてきたレンガが頭に当り、死亡する事件が起きた。犯人の男は、長く職を見つけられないことを恨み、社会報復をしようとして、繰り返し高層ビルから地上の市民に向けて様々なモノを投げてきたという。
長春市の裁判所は今月13日、高所から物を投げて通行人を死亡させたこの男に、死刑を言い渡した。
恨みをつのらせ、社会報復に至る
中国メディアの報道によると、被害に遭った女性は高層ビルから投げ落とされた3つのレンガのうちの1つが額に当たり、病院へ運ばれる途中で亡くなった。女性は生前、国有企業の法律業務に従事していたという。
事件現場を捉えた画像のなかには、うつ伏せになって路上に倒れ込む女性の姿があった。その頭部からは大量の血が流れていた。
現地公安によると、犯人は周という男で23歳、江西省出身、無職だという。
起訴状によると、犯人の周はこの日、21時から23時までの間に、通り沿いの高層アパート32階の通路の窓、またはビルの屋上などから、通行人に当たることを承知の上で、レンガ8個を投げ落とした。そのうちの1個が被害者の額に当たった。
現地検察は、周被告には精神疾患がなく、自分で生計を立てられないために恨みをつのらせ、社会報復を図ったとしている。
高所からの物投げ「過去に何度もあった」
犯人の男は今回の事件だけでなく、過去に何度も高所からモノを投げ落とす異常行動があった。
事件の5日前の6月17日にも、周は16時30分頃に別のアパートの33階の3310号室の窓から、水の入った5リットル入りのポリタンク2個を投げ落とした。そのうちの1個が、市民の体にあたっている。
同日の22時40分ごろ、周は同じ部屋から未開封の缶入り炭酸飲料を3缶投げ落としており、そのうちの1缶が通行人の額に当たった。
レンガが額にあたって亡くなった女性の姉は「被告は、過去に何度も高所から物を投げていたにもかかわらず、止められなかった。そのため、最終的に妹を死に至らしめた」として、引き続き関係部門の責任追及を検討しているところだと明かしている。
犯人の周は「人生がうまくいかないため、当初はビルから飛び降りて自殺するつもりだったが、その勇気がない。死刑になりたくて、高所から物を投げることにした」と供述している。
死刑判決を言い渡された際に、周は法廷で「上訴はしない」と明かしている。
「精神崩壊の果て」の無差別殺人
経済不況による失業の波が中国全土を席巻するなか、職にありつけず、生活を維持することができない人が増えている。そうした背景もあり、精神的に崩壊し、無差別殺人などの方法を使って社会への報復を行う事例が、近年相次いでいる。
社会報復事件のなかには、刃物を手にした犯人が街中で手当たり次第に人を切りつけていくケースもあれば、学校内で無差別に生徒を傷つけるケース、自動車で横断歩道に突っ込み通行人を轢くケースなどがある。
もっと恐ろしい方法で報復を行うケースもある。例えば、今年3月、黒竜江省ハルビン市で、職場をクビになった路線バス運転手は自宅のガスに引火させて、住宅ビル全体の爆発を引き起こした。その影響をうけ、ビル1〜7階の全階で深刻なダメージを受けた。
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