中国の金融危機が迫る中、当局による金融関連高官の大量逮捕

2023/12/13
更新: 2023/12/13

中国の金融危機が、いつ爆発してもおかしくない状況の中、中国共産党(中共)は金融に関連する高官の摘発を続けている。当局は市場救済のための多数の刺激策を採用しているが、効果はなく、救済に参加した企業も自らが困難に陥っているという。

中共中央紀律検査委員会・国家監察委員会のウェブサイトによると、12月7日には、中国建設銀行浙江支店の元副支店長、李曉虹(りぎょうこう)が重大な違法行為に関与した疑いで自首した。2日前には、同じ銀行の副支店長、勞新江(ろうしんこう)も同様の理由で調査を受けた。

中共は、かつてないほどの強さで、金融システムの役員を粛清している。11月から現在までに少なくとも9人の金融高官が失脚し、今年に入ってからは90人以上が失脚した。

失脚した重要人物には、中国人民銀行の副総裁范一飛(はんいっぴ)、中国銀行の元会長劉連舸(りゅうれんか)、20年間証券監督管理委員会で勤務し、委員長の助手を務めた朱從玖(しゅじゅうきゅう)、証券業協会の元会長であり、先物取引業協会の会長だった安青松(あんせいまつ)、中共が所有する大手金融ホールディングスグループ、光大集団の前董事長の李曉鵬(りしょうほう)などが含まれていた。

中国の経済状況は非常に厳しい

12月8日には、上海証券取引所の指数が2969点で取引を終え、これは10月下旬に3千点の重要な節目を割り込んで以来、今年2回目の下落である。同時に、深圳の株式市場は1万点を割り込み、香港の株式市場は連日新たな安値を記録し、年初からの株価は25%も減少した。 

12月5日、国際格付け機関ムーディーズは、中共政府の信用評価の見通しを「安定」から「マイナス」に下方修正した。ムーディーズは発表の中で、中共政府が、地方政府や国有企業にさらなる金融支援を提供する必要があると述べ、また不動産危機のコントロールには、高いコストがかかり、これが金融の安定にマイナスの影響を与えると指摘した。

翌日、ムーディーズは中国の8大銀行の見通しも「安定」から「マイナス」に引き下げた。格下げされた銀行には、四大国有銀行である中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行が含まれる。また、中国国家開発銀行、中国農業発展銀行、中国輸出入銀行、中国郵政貯蓄銀行の4行もリストに挙げられた。

人民元と米ドルの為替レートは12月8日時点で約7.14であり、「7を割る」状態が半年以上続いている。

不動産業界では、多くの中国不動産開発企業が、資金繰りに窮している。野村証券のチーフ中国エコノミスト、陸挺(りくてい)氏は、中国には約2千万戸の未完成の建物があると推定している。野村証券の11月中旬の報告によると、これらの住宅の建設を完了させるためには約4400億ドル(約64兆1399億円)が必要であるという。

専門家たちは、「株、債券、為替、不動産の4市場全てが同時に下落する」というのが金融危機の典型的なパターンであると見ている。中国がまだ顕著な危機に見舞われていないのは、政府の行政介入によってこの問題が、先送りされているためであると考えられる。

時事評論家の李林一(りりんいち)氏は12月10日、大紀元に、中国の金融危機が最終的に爆発した場合の責任所在について述べた。多くの金融高官が失脚しており、これは中共内の権力闘争だけでなく、トップ層による「責任転嫁」の兆候でもあると指摘する。現状から見ると、当局は故・前首相の李克強を筆頭にして、加えて彼の関係者に責任を負わせる可能性が高いという。

「中共の第20回大会の交代後、今年3月には中央金融委員会が設立され、新任の李強総理が委員会の主任、副総理の何立峰(かりつほう)が事務局長を務めている。李強と何立峰は現中共党首からの信頼を受けている」と述べた。

李林一氏は「現在、金融分野の実権は中共党首が信頼する人々が握っている。最近調査された官僚のほとんどは前総理李克強の部下で、彼の総理時代に任命された人たちだ。これは明らかな兆候だ」と言う。

68歳で総理を退任した李克強は、退任後半年の10月27日に突然亡くなった。李林一氏は「当局が金融システムの官僚を次々と処理している中、李克強の突然の死は、外界の疑問を増やすだろう。彼は一体どのようにして死んだのか?」と見えない背後を暗示するかのように語った。

当局の市場救済策、効果無し

腹水盆に返らず、
奢れる経済久しからず (Photo by ANTHONY WALLACE/AFP via Getty Images)

 

中国経済は継続的に低迷し、中共当局は市場を救済するため多くの刺激策を講じたが、目に見える効果は全く無かった。

中共財政部は8月28日、証券取引の印紙税を半減すると発表した。IPO(新規公開株)のペースを段階的に厳格化し、投資家の融資購入時の保証金を100%から80%に下げる措置を取った。さらに、株主の持ち株を減らせないように規制した。 

9月14日、人民銀行は金融機関の預金準備率を0.25ポイント下げると発表した。

10月11日、工商銀行、農業銀行、中国建設銀行、中国銀行の4大銀行は自社株の買い増しを行い、今後6か月以内にさらに買い増しを続けると発表した。

11月下旬、中共メディアは、監督機関が50の不動産企業を対象とするホワイトリストの草案を作成中であると報じた。リストに掲載された企業は、信用、債券、融資の面で支援を受けることになる。

これらの刺激策に加え、中共国家安全部は声明を発し、「積極的に」経済金融分野に「参加し」「監視を強化する」とし、市場を「空売りする者」「下落を予測する者」「市場を空売りする者」「資産を持ち逃げする者」に対して警告を発した。

しかし、これらの政策の実施により、逆に外資が流出する事態が生じた。8~10月にかけて、外資は合計で1720億元(約3.5兆円)の中国株を売却し、11月にはさらに17.8億元(約360億円)の中国株を売却した。この4か月間の資金流出は、2016年12月に深セン証券取引所が国境を越えた投資計画に組み込まれて以来、最も長い連続資金流出記録を更新した。

火消し役が自ら危機に陥る

市場を救うために参加した国有企業も、自身が困難に陥る

11月29日には、国有の大手金融保険グループである中国人寿保険と新華人寿保険が共同出資し、500億元(約1兆円)の「私募株式投資ファンド」を設立すると発表した。このファンドは金額が大きいだけでなく、「10+N」年という期限が設定されており、10年後に状況に応じて延長可能である。両巨頭は、これが関連政策に適合し、生命保険の資産ポートフォリオ(投資家が保有する金融資産の一覧表、または安全性や収益性を考えた有利な投資の組み合わせ )を最適化する重要なプロジェクトであると強調した。

中共メディアの新華社は、この協力が長期資金の市場参入を奨励する規制当局の呼びかけに応じたものであり、資本市場の健全な発展を支援し、「安定剤」および「バラスト(底荷)」としての役割を果たすと主張している。

しかし、その数日後の12月8日、これら2社の香港での株式は、今年の最低値を記録した。

11月9日、ロイターは、中国平安保険集団が、不動産企業碧桂園の株を取得するよう中共の監視機関から要求されたと報じ、市場の注目を集めた。碧桂園の財務状況が困難に陥り、報道が出たら、中国平安保険集団の株価は一時5%以上の下落を記録した。

中国平安保険は緊急声明を発表し、外国メディアの報道は事実と全く異なり、政府部門や機関からそのような要求を受けたことはないと主張した。しかし、ロイターは自社の報道を堅持し、4人の情報筋を引用して、中共政府がそのような要求をしたことを示唆している。

中国平安保険集団の株価はその後、一貫して下降している。

 

易凡