信じ難い実話 陳情者を監禁して殺すのか「食事に毒を盛られ、歯が20本抜けた」=上海

2023/12/10
更新: 2023/12/10

上海に住む陳情民・楊秀婷さん(女性)はこのほど、エポックタイムズに対して「自身が陳情をしたために、当局から受けてきた数々の弾圧」について、以下のように明かした。

中国における陳情とは、自身が受けた不公正な扱いや不当に被った損失について、北京あるいは地方の陳情窓口へ申し立てることであり、民衆にとって全く合法的な権利である。

ところが、民衆に陳情されることによって、地元の不都合を中央に知られてしまうことを避けたいのが地元の政府である。そのため地方政府は、こうした陳情民の口を封じるため、往々にして暴力的な弾圧や嫌がらせをする。地元のヤクザを金で雇い、実行部隊として脅迫や拉致に当たらせることもある。

楊秀婷さんも、そのような被害を受けた一人である。

ただし楊さんのケースは、ただの嫌がらせや脅迫のレベルではなく「本当に殺意をもって葬り去る気であった」と言えるほど、身の毛がよだつ内容である。その加害者なかには、雇われた暴力団員だけでなく、警察や病院までもが関与してくるのだ。

楊さんは今年9月25日、江蘇省で開かれる裁判に出廷するために駅へ向かったが、暴力団員に尾行されて、駅で拉致されそうになった。

そこで周囲の人に助けを求めた。周囲の人の110通報で駆け付けてきた警察によって、楊さんは、はじめは警察署へ連れていかれた。

警察に保護されたと思ったところ、なんとそのまま警察から暴力団員に引き渡され、上海郊外の農家で不当に47日間も監禁されたのである。

40数日の後、ようやく解放された楊さんは、この件について警察に再度通報したが、受理されなかった。

楊さんは拘束される前日(9月24日)上海市の政府ウェブサイトに「私が長期にわたって暴力団に拉致された」件について訴えていた。実は、楊さんはそれ以前にも、65日間にわたって拉致監禁されている。その日(24日)の午後、自宅前に暴力団の車が止まっているのを目撃したという。

そして翌朝(9月25日)江蘇省で26日に開かれる裁判に出廷する必要があったため、自宅を出て駅へ向かった。

すでに暴力団員によって尾行されており、駅に着いた後、拉致されそうになる。その時、楊さんは110通報しようとして自分の携帯を取り出したが、なぜか電波が届かないことに気づき、繋がらなかった。

その後、周囲にいた人が110通報してくれた。それと同時に、暴力団員たちもどこかに電話をかけていた。しばらくすると、大勢の暴力団員と、十数人の警官が、わさわさと駅に駆け付けた。

この時、駅にいた人たちが撮っていた現場写真は、警察によって全て削除されたという。

その後、楊さんは警察署へ連行された。しかし警察は、楊さんの身柄を保護したのではなく、そのまま暴力団員に引き渡した。暴力団員は楊さんを上海郊外の農家に連れて行き、そこに閉じ込めたのである。そのため楊さんは、出廷する予定だった裁判に行くことができなかった。

楊さんがこの時向かおうとしていた江蘇省での裁判とは、昨年(2022年)の両会(全人代と政治協商会議)の開催期間中に、江蘇省で楊さんが拉致された事件に関係したものだった。

実は、昨年のその時も、同じようなことがあった。江蘇省の警察は、楊さんを上海の警察に引き渡したが、その後、上海の警察は今回と同じように、楊さんを暴力団員に引き渡したのである。楊さんは上海郊外の農家に連れていかれて、そこで65日間も閉じ込められた。

「当時、私は食事ものどを通らないほどだった。もう少しで死にそうな状態になった」と、その時を振り返る楊さん。

極限まで衰弱しきった楊さんを、暴力団員は上海市内に運んで、道端に捨てていった。親切な通行人が楊さんを見つけてくれた。救急車呼んでもらって、なんとか助かったという。

そして前回と同様、今回(2回目)の監禁期間中も、楊さんは飲食ができなくなる状態にまで至り、ようやく10月10日に病院に送られた。

病院では点滴が施された。ところが点滴を始めると、たちまち頭痛や全身のむくみ、下痢などの症状が現れたという。

「これはおかしい」と感づいた楊さんは、病院の医療スタッフに「これは何の点滴なのか?」と問い詰めた。すると医療スタッフは何も答えず、注射針を抜いて点滴を止めた。

その後は、点滴の代わりに内服薬を出されたという。しかし楊さんは、恐怖のあまり、薬をすべてこっそり捨てていた。もはや病院さえも信じられなかった。

楊さんは10日間の入院期間中、水を一口でも飲めば吐くという状態だった。体調が一向に良くならないまま、当局が雇った警備員は楊さんを再度、上海郊外の監禁小屋に連れ戻した。

監禁小屋でも嘔吐を繰り返し、頻繫に意識を失っていた。楊さんは最終的に前回と同様、上海市内に運ばれて、道端に捨てられた。それが1か月ほど前、11月10日のことだった。

「あの監禁小屋には、私以外に7人、上海の陳情者が監禁されていた。そのうち2人は、まだ釈放されていない」という。

自宅取り壊しの問題をめぐって、楊さんは10年前の2013年より陳情を始めたが、問題は今なお解決されていない。

しかも近年では、陳情をするたびに監禁小屋に閉じ込められることが続いた。上に述べたように、正式な刑事罰では全くなく、65日間と47日間、完全に不当に監禁されてきたのである。

その不正を警察は取り上げないし、その間に運ばれた病院も「治療ではないこと」を楊さんに行ったようだ。

楊さんは監禁期間中、食事に毒を盛られるなどしたため「半月の間に、歯が20本近く抜け落ちた」という。

監禁場所で「専用弁当」を渡す当局者の不自然な行動から、楊さんは「食事のなかに毒を盛られている」ことを確信した。以来、食事をとらず、用意された水も飲まなくなった。喉が渇けばトイレへ行き、水道水を飲んで生きながらえた。

中国の水道水は衛生上、日本の水道水のようにそのまま飲むには適さないが、この場合は仕方がない。相手が用意した水を飲むほうが、よほど危険なのだ。

楊さんの体調は、解放から1か月経った今もかなり悪い。しかし今は、自身が不当に監禁されたことや毒を盛られた体験に関する、まとめ資料を作成中だという。

楊さんは多くの歯を失ったが「その時の証拠を残したいので、今でも義歯をつくっていない」という。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。