中共執政者、夕食会で「パールハーバー」…歴史を歪曲 米財界「プロパガンダの極み」

2023/11/20
更新: 2023/11/21

米中会談後に開かれた夕食会では、中国共産党(中共)の習近平が第二次世界大戦期の「抗日戦争」を取り上げ、歴史戦で米国側の融和姿勢を誘った。いっぽう、歪曲した内容に財界トップらは「プロパガンダの極み」として冷ややかな態度を取った。

夕食会は米国商工会議所が主催したもの。習近平はスピーチの中で、米軍が中国本土への航空路を確立し軍需物資を輸送したと指摘、真珠湾攻撃や本土侵攻をあげて「対日戦で血と炎の試練に耐えた米中の友情」を築いたと強調した。さらに、米軍が1942年に行った日本空襲に言及し、任務を終えたパイロットを中国が救助したと述べた。

対日戦は中共ではなく国民党が主役

中共が仕掛けた歴史戦について、中国史の専門家らはその誤謬を指摘している。

評論家の林輝氏は、「当時、中国における唯一の合法政府は中華民国政府だった。日本軍との抗戦で重大な犠牲を払ったのも中華民国である」と指摘。対する中国共産党は1945年の終戦後も日本に攻撃を仕掛け、物資を略奪する卑劣蛮行を働いたと批判した。

中国研究者で、中国問題グローバル研究所の遠藤誉所長は、日本外務省の機密資料からは、中国共産党が日中戦争を「発展の絶好の機会」と捉えていたことがわかると指摘した。中共は情報工作員を使って国民党の軍事機密を入手し、日本軍に提供していたという。

中国共産党は歴史を歪曲し、様々なナラティブを駆使して、自身の政権こそ正統な継承者であると内外に主張してきた。

東京大学教授で、日本国際問題研究所の川島真氏は『習近平政権の歴史政策』と題する論文で、中国共産党統治下の中国では、中国共産党を中心とする歴史認識が当局主導で広められていると記した。

さらに、「(中国共産党系の)八路軍や新四軍と日本との戦闘、解放区への日本軍の攻撃など」、「共産党が中華民国という国家とは別に行っていた対日政策が重視された叙述が今後なされていく」ことへの対策が求められると指摘した。

米財界「プロパガンダの極み」

中共が対日戦争に紐づく“共闘”を訴えたにも関わらず、冷え込んだ米中関係に変化はないと関係者らは指摘する。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの17日付の報道によれば、夕食会スピーチでは貿易や投資の話題には触れず、米財界から失望の声が上がったという。

アップルのティム・クックCEOやブラックロックのラリー・フィンクCEOなど、中国に投資する大手企業の経営幹部が多数出席したが、「演説に対する反応は冷ややかだ」と指摘。出席者らは「プロパガンダの極み」と評し、中国経済への閉鎖的な投資環境や払拭できない拘束リスクなどに疑問を呈したという。

中国でビジネスを展開する海外企業は、大きな法的リスクに直面している。改定版スパイ防止法やデータセキュリティ法により、日常的な企業活動が犯罪とみなされる恐れがある。中国共産党の「互恵関係」というメッセージとは対照的に、外国企業は中国での利益を再投資せず、生産拠点を他アジア地域に移転させる傾向が強まっている。

米中会談では、双方が「実りある会合」と公式発表するも、慣例の共同声明はなかった。会談後の単独会見で、バイデン大統領は習近平について「共産主義国の独裁者」と強く批判した。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。