給料が9カ月間未払い 市交通局の職員が「静かなる抗議」を実施=中国 天津

2023/11/11
更新: 2023/11/11

天津市は、中国政府が指定する「国家中心都市(北京・天津・上海・鄭州・武漢・成都・重慶・広州・西安)」のうちの一つである。その天津市の財政が、すさまじい「火の車」になっている。

今月7日、天津市薊州区交通局の職員が局門前に集結し、声を出さない「静かなる抗議」をする様子を映した動画がSNSで拡散されている。なお、ここでいう職員は、正規の公務員ではなく、後方勤務にあたる非正規職員である。この職員たちは、なんと9カ月も給料が支給されていないという。

「静かなる抗議」にも警官が出動

ネット情報によると「給料を支給されていない職員は、約700人いる」という。そこで、この人たちは「給料の支払い」を求めて今月6日と7日、2日連続で職場の門前に集まり、抗議を行った。

ただし、ここに集まった大勢の職員たちは横断幕を掲げたり、スローガンを叫んだりはしていない。ただその場に立ち「静かなる抗議」をしているだけである。

彼らは、支給されるはずの給与が未払いであるため、こうして正当な権利を主張している。しかし動画を見ると、その「静かなる抗議」のすぐ近くには多くのパトカーが止まっており、数十人の警官が警戒に当たっている模様だ。

それにしても、こうした各種の公務にあたる職員の給与が未支給となれば、早晩、警察官や公安関係の人員への給料もストップすることは避けられない。

そうなった時に、この場に来ている警察官たちは、自分たちのために「給料を求める抗議集会」をするのかどうか。そして当局は、その集会を警戒し制御するため、別の管轄区域からほかの警官を動員してくるのだろうか。

まことに奇抜な仮想ではあるが、その答えは、間もなく明らかになるだろう。

 

(職員の「静かなる抗議」に対しても、多くの警官が出動して警戒に当たった)

すでに「債務まみれ」の天津市

近年、天津市は深刻な財政危機に陥っている。早くも2021年の時点で、すでに債務比率は529.2%と、財政収入のほぼ3倍に達していた。そのため、市内の一部事業部門では、職員の給料支払いが困難な状況が数年前から続いていた。

最近では、天津市河北区の区政府が、職員の給料を支払うために「地元の仏教寺院である大悲院に借金を申し込んだが、拒否された」という噂まで流れている。噂の真偽は不明だが、天津市が非常に窮乏していることは疑いない。

近年では、天津市に限らず全国各地で、職員の給料を払えないため、職員からの集団抗議に遭っている政府機関は極めて多い。

ただ、当局の厳しい情報封鎖によって、そうした情報がなかなか外部に伝えられず、表面化していないだけだ。そのため、海外にいては、時折ネット上に流出した市民の投稿から、その一端を伺い知ることしかできない。

ともかく、中国の「国家中心都市」の一つである天津市でさえ、この有様である。その他の地方都市の財政状況は、どこも「修羅場と化している」と言ってよい。

以下は、そうした地方都市における抗議活動の一幕である。抗議の理由は、いずれの場合も「長期にわたる給料の未支給」である。

病院関係者「私たちにも生活がある」

公務員ばかりでなく、社会を支える多くの職場で、給料が支給されない状況が続いている。

11月3日、河南省汝州市にある公立病院「婦幼保健院」に勤める数十人の職員が、病院の前に集結し「私たちにも生活がある!」と大声で叫んで抗議をした。

医師をふくむ、同病院に勤務する500人以上の職員は、なんと1年以上も給料を支払われておらず、社会保険料などの納付もされていないという。

中国メディアの記者が汝州市の管理部門に電話し、この病院の件について事実確認をしたうえで「なぜ給料を払わないのか」と質問したところ、返って来た答えは「金がない(没銭)」の一言だった。

さらに「この問題を、どう解決するのか」という質問について、電話の相手は「わからない(不知道)」と答えたという。

 

河南省汝州市にある公立の病院「婦幼保健院」前で抗議する医療関係者。(SNSより)

 

(「なぜ給料を払わないのか」と管理部門に尋ねたところ、答えは「金がない(没銭)」の一言だった)

 

テレビ局前で懇願「どうか助けてください!」

その場所について傍証的な確認はできないが、ネット情報によると、ここに集まった抗議者は広西省(広西チワン族自治区)桂林市のラジオ・テレビ部門の従業員だという。

9月5日、その「テレビ局」の玄関前に数十人が集まり、横断幕を掲げて抗議した。

ただし、横断幕の文言を見ると、どうも通常の抗議とは少し様子が異なっているようだ。

「半年没発工資、我們要生存、懇請父母官為我們做主」とある。その意味は「半年も給料が出ない。私たちは生きたい。父母である官方に、お願いします。どうか私たちのために(給与の支給を)決断してください!」である。

この抗議活動は、もはや抗議というより、ほとんど「懇願」や「哀願」にちかい。

とにかく、早く給料を支給してほしい。そうでなければ、我われ従業員とその家族は飢えて死んでしまう。そんな切迫感が、このような追い詰められた抗議、いや「懇願」になったようだ。

それが奏功して、この後で、未払い給与の一部分でも支給されたかどうかは、わからない。

 

あるテレビ局の前で、横断幕を広げて抗議する人たち。(SNSより)

 

税務署の職員も「給料が未払い」

信じ難いことだが「税務署の職員」までも、未払い給与の支給を求めているという。いよいよ中国は、末世の様相を呈してきた。

9カ月前になるが今年2月28日、江蘇省鎮江市の税務局の正門前で、同局の職員数十人が「給与を求める(討薪)」と印刷されたA4の紙を掲げ、自身の勤務先である税務局に抗議する様子を捉えた動画がネットに拡散されている。

その傍らで、彼らが掲げた横断幕には「鎮江市税務局の局長、叶华(葉華)が不作為だ!」とある。この税務署の職員は、いまや自分たちの上司である局長を、名指しで批判しているのだ。

改めて考えてみれば、これは驚くべき事態だろう。きちんと働いただけの給与が支給されない国で、正常な税務が機能するわけがない。

つまり給与の未支給によって、徴税する役所も、納税する国民も、それができないとなれば、税務署の存在自体が無意味になってしまう。人体が多臓器不全に陥って死に至るように、国家の機能が停止してしまうのだ。

そうした意味で、現体制の中国は「すでに滅んでいる」といっても過言ではない。

隋(581~618)の煬帝は、その暴政によって国を急速に疲弊させ、在位わずか14年で隋王朝を滅亡させた。それに比べて、中国共産党による「赤色王朝」は74年を数えるが、むしろ長すぎたのではないか。

歴史は今、その結論を出そうとしている。その結論はもちろん、為政者である中共とその加担者に対して、厳しい天罰がともなうものになるだろう。

 

江蘇省鎮江市の税務局の正門前で抗議する、税務署の職員たち。(SNSより)

(今年2月28日、江蘇省鎮江市の税務局の正門前で、同局の職員数十人が「給与を求める(討薪)」と印刷されたA4の紙や横断幕を掲げ、抗議する様子を捉えた動画)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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