今月6日の19時過ぎ(現地時間)黒竜江省ジャムス市(佳木斯市)樺南県にあるスポーツクラブの体育館の屋根がそっくり抜け落ちる、大規模な崩落事故が起きた。
当局の発表によると、当時、館内には7人がいたが、3人は自力で脱出。4人が下敷きになり、このうち3人の死亡が確認された。崩落の原因については「積雪と関係がある」という。
積雪で「屋根が抜け落ちる」ものか?
事故のあった日、同省では、確かに大雪の警報が出されていた。地元民によると、屋根崩落前には、事故現場となった「悦城広場体育館」の屋根には大量の雪が積もっていたという。
事故原因について、一部の中国メディアは「積雪と屋根崩落との関連を指摘する専門家の分析」を報じている。
中国メディアによると、事故のあった体育館は2017年7月に建設が開始され、1年後に竣工。2020年7月に行われた安全検査に「合格」している。
事故発生当時、現場は、確かに雪が降っていた。しかし「積雪で屋根が崩落する」ことが、そもそも本当にあり得るのか。
体育館の屋根が、そっくり抜け落ちるとすれば、それは積雪のせいではなく「建物自体に致命的な欠陥があったから」ではないだろうか。そして、その欠陥を見落としたか、あるいは故意に見逃して「検査合格」にしてしまったか、疑問は残るばかりである。
(屋根崩落現場の様子。救助隊が到着し、屋根の下に残された人を探している)
(現場は、確かに雪が降っている。しかし「積雪で屋根が崩落する」ことが本当にあり得るのか?)
「おから工事(手抜き工事)」の疑惑
相次いだ体育館の屋根崩落事故をめぐり、ネット上では「前回は雨、今回は雪の重みで屋根が崩れたのか?」などと「おから工事(手抜き工事)」の疑惑が噴出し、「当局は前回の事故から少しも教訓を学んでいない」として、責任追及の声が殺到している。
「前回」とは、まだ人々の記憶に新しい今年7月23日、同じ黒竜江省のチチハル市で起きた悲惨な事故のことだ。この時は、中学校のコンクリート製の体育館の屋根が丸ごと抜け落ちた。
当時、館内でバレーボールの練習をしていた女子生徒や教員ら19人が下敷きになり、11人の死亡が報じられている。
中国メディアによると、崩壊した体育館は施工して26年が経過しているが、事故が起きる4カ月前には市教育局による安全検査に、やはり「合格」しているという。
この事故の際にも、ネット上では「おから工事」の疑惑が噴出しており、中国における「安全対策の不備による重大事故」が再度注目された。また、事故の原因究明や被害者救済を講じるのではなく、事故に関する情報の封鎖を行った当局の「冷酷な対応」を糾弾する声が広がっていた。
さらに、この事故では、将来ある女子中学生が多数犠牲になったことで、社会に大きな悲しみと衝撃を与えたと言ってよい。
全国の誰もが、愛する娘を失った保護者の気持ちになって、犠牲になった女子中学生の死を悲しんだ。事故のあった中学校周辺の空き地や歩道は、省内だけでなく全国から送られた花やロウソク、桃の缶詰、中学生が好きなお菓子やミルクティーで埋め尽くされた。
桃の缶詰には(桃は「逃」と中国音が同じなので)危険な建物から「逃げろ!」の意味が込められているという。しかし、悲惨な事故はすでに起きてしまった。届けられた「逃げろ!」の桃は、間に合わなかったのである。
そう考えたとき、大いに疑問であるばかりか憤りさえ感じるのは、今年7月にあれほど悲惨な事故が起きながら、同じ黒竜江省内で、全く同じタイプの「体育館の屋根崩落事故」が起きたことである。
積雪うんぬんではなく、本気で7月の事故の教訓を生かすつもりがあるなら、今回の事故は防げたのではないだろうか。その努力をしなかったことが、今回の原因の一つに挙げられてもよい。
「道徳欠落の根源は、中国共産党にある」
今回の事故をとりまく問題について、中国時事評論家の李沐陽氏は、次のように指摘する。
「3人の死亡が確認された崩落事故の原因について、当局は『雪と関係がある』としている。つまり、雪の重みで屋根が崩落した、要するに『これは自然災害だ』と言っているのだ」
「しかし、中国の気象部門によると、東北地方を襲った今回の雪では、積雪量が最も多いところでもせいぜい30センチほどだ。これほどの積雪量は、米国やカナダなどでもよくあることだが、このせいで家屋が倒壊したという話はほとんど聞かない」
「だが、なぜ同じ積雪量でも、中国になると公共施設である体育館がつぶれるのか。これは自然災害ではない。明らかに建築の品質の問題であり、これはまさに人禍(人災)である」
「いまや中国のほとんどの建物に手抜きなどの品質問題が存在している。販売する側の人々は、利益だけを追い求め、工事の品質など気にしない。だからこそ、手抜き工事がもたらす重大事故がこのように相次いでいる。前回は大雨のせいで体育館が崩れた、今回は雪のせい、では次回は何のせいにするつもりか?」
「中国に手抜き工事が、こうも多いのはなぜか。その根本的な原因は何なのか。表面的には、中国人が工事の品質や人命ではなく、金銭を重んじたためであるが、その本質的な原因は、伝統文化や人としての道徳を失ったからである」
「この道徳欠落の問題を突き詰めればわかるが、中国人にそのような変化が現れはじめたのは、まさに中国共産党による中国統治が始まってからだ」
「中国共産党は、あまりに多くの悪行をしてきた。そこで、その悪事に目を向けさせないために、中国人の関心がお金に向くよう少しずつ誘導してきた。そうして、中国人はだんだんと、お金だけを追い求めるようになり、伝統や人間としての道徳を失い、命を大切にしなくなった。今の中国人は、互いに傷つけあう悪循環のなかに陥っている」
「結局のところ、すべての問題の根源は中国共産党にある。中国人民が中国共産党を徹底的に解体させることができなければ、伝統や道徳は戻らない。中国共産党が中国を統治し続ける限り、中国人同士の傷つけ合いは永遠に止まらないだろう」
李沐陽氏のコメントは以上である。李氏も指摘するように、人命をどこまでも軽視し、これを犠牲にして憚らない今の中国は、まさに中国共産党による74年間の統治のもとで作られたものに他ならない。
体育館の屋根が崩落した原因は、もとより積雪のせいではなく「手抜き工事」であるとみられるが、それを野放しにしてきた究極的な原因は、中国共産党の非人道的な統治にある。
そうした意味において「今の中国の道徳欠落の根源は、中国共産党にある」といってよい。
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