今月21日、広東省仏山市で、出稼ぎ労働者が社長をナイフで刺殺する事件が発生した。動機について地元の公安当局は22日、犯人である労働者の「家族内トラブルによるもの」と公表しているが、それを信じる市民は少ない。
ネット上では、この社長が「日常的に労働者にペナルティをかけて、給料から不当に天引きしていたことが殺人に至った原因だ」とする噂が広まっている。
SNS上には「工場で働く労働者が、給料から不当に天引きされたという理由で社長を刺殺した」として、事件現場を映した写真や動画が拡散されている。動画の画面には、警察車両や葬儀社の遺体運搬用車両がみられた。
複数の「事件を知る関係者」が事件について説明する投稿を続々としており、セルフメディアもこの事件のことを取り上げている。
あるセルフメディアによると「今月21日午後5時ごろ、終業間際の仏山市の紡績工場の門前で、20代の男性出稼ぎ労働者が50代の社長を刺殺した」と報じた。
また「目撃者」を名乗るネットユーザーによると、社長は刺される直前に「金をあげるから殺さないで!」などと大声で叫んでいた。しかし、その直後、社長はナイフで10数回も刺され、一面が血の海になった。犯人の男は社長を殺した後、その場から逃げてビルの屋上にのぼったという。
別のネットユーザーによると「警察が現場に到着した時、犯人の姿はなかった。犯人はその後、ビルから飛び降りたのか、それとも逃走したのか分からない」という。
さらに、殺害された社長について「いつも、何かの口実をつけては、従業員の給料から差し引いていた。例えば、1日休んだら60元(約1,200円)の減給。遅刻は1回につき15元(約300円)の減給だが、30分以上の遅刻は半日分の給料を差し引かれる」という。
これ以外にも「紡績工場の作業で生じた使えない布切れは、従業員のミスで生じた『廃棄布』として計上し、その分を罰金として、従業員の給料から引いていた」という。
そうしたネット情報について、詳細に確認する術はない。しかし、複数の情報からある程度、事件の背景が見えてくるといってもよい。それらを総合すると、以下のようになる。
「犯人の男は、事件の数日前、支給された給料から、この『廃棄布』を理由に罰金として600元(約1.2万円)が天引きされていた。男は、これを不当だとして、何度も財務部や管理層に掛け合ったが、社長から繰り返し罵倒された」
「事件当日の午後、この労働者は再度社長に交渉したところ、激しい口論となり、社長から再び罵られた。その日の作業を終えた男は、工場の門のところで社長に追いつき、隠していたナイフで刺し殺した」
近頃は、経済低迷や就職難などにより、とくに中国の低層の庶民にとっては生きていくのが本当に大変だ。そうした背景もあって、金銭がらみの凶悪事件が頻発している。
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