「当たり屋」は高齢者 バックする車をつかんで離さず=中国

2023/10/22
更新: 2023/10/22

今の中国では、うかつに「人助け」ができない。例えば、道端に倒れている人がいて、いざ助けようとすると、周りから「関わらないほうがいいよ、後であなたのせいにされかねないから」と言われてしまう。

実際に、それで濡れ衣を着せられ、裁判沙汰にまでなって高額な損害賠償を命じられた「親切な人」がいる。以来、中国は「人助けをしたくても、できない大国」になってしまった。

いっぽう、悪意のある人間は、どうするか。自分から車にぶつかり、金銭をゆするのだ。これを中国語で「碰瓷(ポンツー)」という。日本語では「当たり屋」である。

ただし、なんとも哀れなのは、その当たり屋が高齢であるためか、よろよろとした足取りで車の前へでてくると、ごろりと地面に寝転び「車にぶつけられた」を演じることだ。ドライブレコーダーに映った映像に、ドライバーからは思わず苦笑がもれる。

以下の動画もその一例で、今月2日、江西省贛州市で起きた事件だ。

「当たり屋」は高齢の男性だった。走ってきたシルバーの車の前に出たが、うまく「演技」ができなかったのだろう。面倒を避けるため、バックして現場から離れようとする車に対して、この「おじいさん」は車を必死に掴んで離さず、そのまま数10メートル引きずられていった。

この光景を目撃した市民は「なんてことだ。こういう碰瓷(ポンツー)のやり方もあったのか!」と呆れている様子だった。

老人がその後、地面に「倒れ込んだ」まま起き上がろうとしなかったため、車のドライバーは警察に通報した。現地警察は3日、老人の行為は「当たり屋」であるため、老人を逮捕したと公表している。

「人助けを自分の喜びとする」ことは中華民族の伝統的な美徳だった。しかし、孟子の時代から二千数百年を隔てた今の中国では、町で倒れている人を見ても「助けるかどうか躊躇する人」が残念ながら非常に多い。

正確に言えば、人助けの気持ちはあっても、それを実行することに大きな迷いが生じるのだ。その結果として、見て見ぬふりをして通り過ぎるのである。

2006年に、南京市で起きた事例が最も有名だ。以来、これが中国人の脳裏に焼き付いたと言ってよい。

ある日、路上で転倒した高齢の女性を、親切な青年が病院まで連れていったうえ、診察費まで立て替えた。ところが、なんと助けられた女性が「この男が(私を)突き飛ばした!」と言い出した。ついに裁判沙汰になり、助けた青年は、入院費など巨額の賠償を請求をされることになった。

同様の事件が相次いだため、中国は、道端でお年寄りが転んでも「うかつには助けられない国」になってしまったのだ。

悲しむべきことだが、確かに近年では悪質な「当たり屋」が蔓延っているため、本当にうかつに関わったら後で面倒なことになる。見ぬふりをして通り過ぎる側にも、そうする理由はある。

当たり屋をする高齢者には、おそらく切羽詰まるほどの生活苦が背景にあるのだろうが、もちろん「碰瓷(当たり屋)」は詐欺行為であり、犯罪である。

それにしても、高齢の「当たり屋」は男女を問わず見られ、しかも非常に多い。いずれも、お金をせびるため、よろよろと車の前に出て地面に倒れ、ケガをしたフリをする。ドライブレコーダーに映った「演技」の哀れな様子には、何やらもの悲しさを感じるほどだ。

 

(この「当たり屋」は高齢の男性だ。後退する車にしがみついたまま、数十メートル引きずられた)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。