中国で3年2カ月にわたり拘束されていた成蕾(チェン・レイ)氏がようやく解放され、豪州の自宅に戻ったことがわかった。豪州のアルバニージー首相が11日、発表した。
元中国国際テレビ局(CGTN)のキャスターであった成蕾氏。現在はその職を離れ、豪州の国籍をもつ。
成氏は2020年、中国当局に「スパイ容疑」により拘束された。豪州政府は、同氏の解放を繰り返し求めてきたが、中国の国家安全省は「成蕾は、携帯電話を通じて中国の国家機密を海外の機関に渡したことを認めている」として、豪州政府の求めには応じなかった。
成氏は、北京の裁判所で有罪判決を受けて服役。このほど刑期を終えたため、中国当局は「国外へ退去させた」と発表した。
成蕾氏は10歳のとき、家族とともに豪州へ移住した。成人後、中国国営メディアの英語放送局CGTNの著名なアンカーとなる。
成氏が逮捕された当時、豪中関係は、人権問題、貿易紛争、新型コロナの起源調査などをめぐって対立しており、両国関係は冷え込んでいた。そのため、成氏の逮捕は、中国側の作為による「人質外交」とする見方が根強い。
今回の成氏の解放について「豪中の関係改善に向け、追い風になるのではないか」とする見方が広がっている。いっぽう、成氏の解放をめぐって、中国ネット上には「せっかくの人質を、みすみす逃していいのか」「人質外交は、これで終わりか」などの声も広がっている。
昨年、中国当局は彼女に対して、1日だけの非公開裁判を行ったが、豪州領事館職員の傍聴は禁じられた。中国当局はこれまで成氏に対する判決を6回も延期しており、その期間中、彼女をずっと刑務所に拘留していた。
中国当局は「成氏は国家機密を海外に違法に提供した」と主張している。しかし、豪州当局および成蕾氏の家族は、中国当局が主張する彼女の罪状について「そのような事実があることは、全く知らない」としている。
昨年8月、豪メディア「The Daily Telegraph」は、中国の刑務所における成蕾氏の生活を詳細に描いたドキュメンタリーを独占公開した。
「失踪者:成蕾の物語(Disappeared: The Cheng Lei story)」と題されたこのドキュメンタリーによると、彼女は目隠しをされ手錠をかけられて連行された部屋で、豪州の外交官と「月1回、30分」のビデオ会議を行った。
また彼女は、他の3人の女性受刑者とともに、わずか9㎡の狭い部屋に収容されたこともあった。「部屋にはベッドが1つしかなく、4人が交代で使うしかなかった」という。
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