中国の国有企業が武装を開始  債権者への備えか

2023/10/06
更新: 2023/10/05

最近、上海の国有資産監督管理委員会の管轄にある上海城市投資集団が「人民武装部(人武部)」と称する軍事部門を設立し、多くの注目を浴びている。上海だけでなく、他の多数の地域においても、国有企業が同様の軍事組織を設立している。

専門家たちの分析によると、中国共産党(中共)が経営する国有企業が武装部署を設ける背景には、債権者への対応があるとされる。特に恒大の負債危機が連鎖的な破綻をもたらした後、関連債権者の権利主張の動きが社会的に増大している。

9月28日、上海城投集団は「人武部」の設立式を挙行し、上海警備司令部の現指揮官、劉傑少将や政治委員の胡世軍少将が出席した。

上海城投集団は、上海市政府の許可を受けて、都市の基幹インフラの投資、建設、そして運営を主導する主要な専門投資グループで、上海の国有資産監督管理委員会の一部である。

そして、上海城投集団が新たに設立した「人武部」は、上海警備司令部により直接指導・管理されている。

公的な情報によれば「人武部」とは、中国共産党が各地の行政区や大学等に設けている軍事部門で、中国共産党の中央軍事委員会の国防動員部の下位組織で、後方予備軍としての役割を果たしている。

だが、中央や都市の主要な国有企業において「人武部」を直接設立する動きは、多くの憶測を呼び起こしている。

インターネット上の一部ユーザーたちは、中央の国有企業における武装部署の設立を急ぐ動きに疑念を抱いている。一方で、企業が破綻した場合、労働者たちの給与請求を制止するための措置だと考察するユーザーもいる。

実際のところ、最近、いくつかの地域において国有企業が武装部署を設立している。

公的情報によると、今年初め、武漢農業集団など、9つの国有企業が「人武部」を設立している。

また、8月には広東省の恵州市で中国水務集団や交通投資集団、都市建設投資集団が「人武部」を立ち上げている。

国有企業が武装部署を設ける背景として、ある意見ではこれは台湾への軍事的対応の準備の一環との見方がある。別の分析では、国有企業での未払い給与問題の増大を背景に、市民の権利主張や抗議を抑制するための措置ではないかとも見られている。

中国共産党政権における最も発生しやすい危機

歴史文化学者の章天亮氏は次のように述べている。「中国共産党は、常に暴力を用いて政権を維持してきた。そのため、時折、軍や武力を国営企業に導入することがある。例えば、上海の都市投資会社に武装部を設置する目的は明確である」

章天亮氏はさらに指摘する。

「恒大の問題発生後、不動産業界で相次いで問題が浮上している。恒大はドミノの最初の1つであり、1つが倒れれば連鎖的に影響が及ぶ。その結果として、損失を被った人々の権利を守る運動が高まり、未完成の建物の所有者や、投資で元本や利益を失った人々が増加している」

「都市投資会社は中国において最も巨大な負債を抱える主体であり、不動産関連の問題が続くと、債権者たちは抗議を始める。このため、都市投資会社に武装部を設置する目的は、これらの債権者たちへの対応のためである。中国共産党政権における最も発生しやすい危機は、債権者の債権回収要求であり、これは社会の様々な分野に波及する可能性がある」

経済の停滞が続く中、中国共産党の財政は困窮

近年、中共当局は、各レベルの地方政府への「経費削減」の指示や「緊縮の準備」を求める通知を繰り返している。これは長期的な方針であるとされる。地方政府の巨額の負債に対して、中共中央は「各自の負担」であるとの立場を明確にしており、地方政府の債務の返済はその地方政府の責任であるとされる。

中共当局は不動産デベロッパーへの規制強化を行い、それが全国的な不動産危機を生じさせている。これは地方政府の財政収入にも大きな影響を与えている。土地の売却による収入は、通常、地方政府の収入の30%以上を占める。中国中央銀行の今年7月の統計報告によると、2023年の第2四半期末の不動産ローン残高は53兆3700億元(約1104兆円)である。

国際通貨基金(IMF)の今年2月の試算によると、中国の地方の融資プラットフォームの債務総額は、前年の57兆元(約1180兆円)から66兆元(約1366兆円)に増加しており、中国の総債務の少なくとも半分を占めている。

李浄