あまりにも信じ難い「実話」 入院中の陳情民を、地元警察が病室から拉致=北京

2023/10/05
更新: 2023/10/05

9月27日午後3時頃、手術を待って北京の病院に入院していた江蘇省からの陳情民・許冬青さんが、病室に押し入った複数のニセ医師らによって「検査」の名目で拉致されたことがわかった。

江蘇省の農民出身の許冬青さんとその娘の楊麗さんは、10年以上、北京への陳情を続けてきた。

その理由は、江蘇省の郷里で、土地徴用や強制立ち退き、詐欺などの被害に遭ったからだ。地元政府は、被害者の許さんに全く対応しない。というより、地元政府もグルになってのことなので、いくら地元で訴えても埒が明かないのだ。

そこで許さん親子は、旅費を自分で工面し、北京への陳情を続けてきたが、そんな歳月もすでに10年以上になる。それでも、許さん親子が訴える問題は、依然として解決されていない。

そうした幾星霜のうちに、許冬青さんは重い病をかかえる身になった。

9月4日、心臓病、脳梗塞、高血圧などを患う許冬青さんは、やはり腎臓病をもつ娘の楊麗さんと一緒に、北京で診察を受けるため「北京大学第一医院」を受診した。許さんは心臓の手術を行うことになったが、手術まで期間があるため、同病院の心臓内科に入院した。

娘の楊麗さんは、再度診察を受けるため9月16日に、北京の病院を訪れた。そのとき、地元(江蘇省)から派遣された私服警官6人(おそらく地元の暴力団)によって拉致されてしまった。

地元の警察署に連行された楊麗さんは「公共の秩序を乱した」という虚偽の罪により、10日間刑事拘留された。その際、警察に「再度北京へ行ったら、次は投獄するぞ」と脅されたという。

釈放されて自宅に戻った楊麗さんは、すでに家の前に「監視拠点」ができていることを発見した。2人の監視要員が24時間、家の前で監視を行っているのだ。

楊さんが釈放された日(9月27日)のことである。今度は、白衣を着て医師を装った拉致要員5、6人と警備員6人が、北京で入院していた許冬青さんの病室に「検査」の名目で押し入ってきた。ニセ医師たちは、心臓病をかかえて手術を待っている許冬青さんを拉致し、地元に強制送還したのである。

この場面は、日本人にはあまりにも信じ難い光景なので、再度いう。

「北京大学の付属病院の病室に、白衣を着たニセ医師など10数人がドカドカと押し入り、入院している高齢の心臓病患者を拉致して、連れ去った」

狂気の沙汰としか言いようがないが、本当に、こういうことがあったのだ。

それにしても、その拉致の間、患者を預かる責任者であり、病院の管理者である「北京大学第一医院」は一体なにをしていたのか。

全く気がつかなかったなら、病院は、とんでもない愚者である。見て見ぬふりをして黙認していたなら、この病院は江蘇省政府とグルになっており、事前に賄賂でも受け取っていたのか。おそらく、後者の可能性が高いが、それにしても常識をはるかに超える「恐るべき所業」であろう。

娘の楊麗さんによると「あの時、母は動けないよう縄で担架に縛り付けられていました。その上に、シーツをかぶせられた状態で、無理やり病院から担ぎ出され、江蘇省にある自宅に連れ戻されたのです」という。

許冬青さんのもう一人の娘で、楊麗さんの姉にあたる楊彩英さんは、いま日本にいる。その楊彩英さんは、母と妹が地元警察によって拉致されたことを、次のように語った。

「母(許冬青さん)と妹は今年2月以来、7回にわたって北京を訪れました。地元江蘇省の当局者は、重い心臓病をかかえ、いつ死ぬかも分からない母が、北京で治療を受けることを許さなかったのです」

「妹(楊麗さん)は十数年もの間、腎臓病を患っています。彼ら(地元警察)はそれでもかまわず、地元の暴力団をつかって妹を拉致させ、暴行を加えました。北京から江蘇省まで移送する途中、妹には水や食物を一口も与えていません」

以上は、あまりにも信じ難いことだが、北京で9月に起きた「実話」である。

中国では長期休みとなる「10・1」の前後に、北京の陳情局へ行こうとする地方からの陳情民が多い。いっぽう、それを暴力で阻止し、地元へ強制送還する要員も陳情局周辺に多数配置されている。

陳情は、全く合法的な民衆の権利である。しかし、その合法性を上回る「非道」が、中国共産党支配下の中国では、大手を振ってまかり通っている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。