現在開催中の杭州アジア大会も、いよいよ佳境である。そのようななか、中国国営の中国中央電視台(CCTV)の公式ウェイボーに掲載された「敏感写真」が物議を醸している。
1日の杭州アジア大会陸上女子100mハードルの決勝レース後、中国代表の呉艶妮選手と林雨薇選手が互いの健闘をたたえ、中国国旗を身につけながら、抱き合った。なお、レースの結果は、優勝候補であった呉艶妮選手が不正スタート(フライング)で失格になっている。
さて、中国選手2人が抱き合う「美しい場面の写真」が、思わぬところから問題視された。
理由は、2人のゼッケン番号の並びにある。2人が抱き合う場面を横から見ると一目瞭然。腰につけているゼッケン番号の「6」と「4」が合わさって「64」となる。「4」のほうが呉艶妮選手である。
「64」と聞いて、誰もが思い出すのは1989年6月4日。厳密に言えば「6月3日の夜から翌4日にかけて」の大惨事であるが、その日に、北京の中心部で起きた六四天安門事件だ。
もう34年前になる「64」である。ところが、その時の犠牲者が流血のまま眼前に飛び出してくるように、CCTVのウェイボー画面に突然浮かんだのである。ここまで見事であると、これは「六四の亡霊のイタズラか」としか思えない。
34年前のその日。天安門広場を中心とする北京市内では、民主化を求める学生や市民に対して、人民解放軍が実弾を発砲。戦車で人をひき潰すなど、流血の大弾圧がおこなわれた。
以来、6月4日は中国当局にとって最もセンシティブ(敏感)な日となった。中国のネットでは事件につながる「64」や「89」の数字をはじめ、この数字にともなう「学生」や「戦車」など、少しでも事件を連想させるような言葉は完全に禁句とされている。
また、こうした言葉狩りをはじめ、関連画像や、関連する名称などを含むネット投稿は、すべて自動的に拒否されるのだ。
にもかかわらず、杭州アジア大会を伝える画面に飛び出した「6・4」の文字。事の重大性に気づいたCCTVは、その後、あわててこの「敏感写真」を削除した。
数字の「64」にあわてふためく官製メディアの「病的な恐怖感」に、海外SNSなどでは、中共当局の検閲を嘲笑するコメントが多数寄せられている。
それにしても、検閲をする中共当局に「聞く耳」があれば教えてやりたい。「そうやって、ビクビクするから、かえって目立ち、笑われるのだよ」と。
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