内部告発した直後に受けた「殺害予告」 誰がリークしたのか?=中国 山西

2023/09/29
更新: 2023/09/29

今月27日、SNSに流出した「殺害予告」をほのめかす脅迫の録音が物議を醸している。

この「殺害予告」は、山西省孝義市の姜貝さんが、腐敗取り締まり部門である「紀律検査委員会」で地元のある企業家に関係する「問題」について、内部告発をした直後に受け取ったという。

その録音のなかで、脅迫者は「おまえ(姜さん)が密告した時間や詳しい内容まで、こっちは全て掌握しているぞ」と伝えたうえで、「こっちのボスは力がある。密告者を殺すのは、アリを踏み潰すのと同じくらい簡単だ」「死にたくなければ、おまえがやったこと(密告)の影響をすぐに消せ」と要求した。

最後に、もう一度「こちらの要求通りに動かなかければ(おまえは)刑務所に入るか、それとも殺されるかだ」などと言い、告発者への殺人をほのめかして脅迫した。

SNSには「いったい誰が、通報者の情報を相手側にリーク(漏らした)したのか?」という問いに対して、すぐさま「そりゃあ、紀律検査委員会がリークしたに決まってるよ」「恐ろし過ぎる」といったコメントが続いた。そのほか、習近平氏のセリフを入れた「これこそ中国の特色だ」という呆れ声も、少なくない。

中国共産党は、常に人民の権利を侵害している。それがまさに腐敗の温床になっているわけだが、その一党独裁を維持するために、いわゆる腐敗を取り締まる「紀律検査委員会」という部門を設けているのだ。

つまり「紀律検査委員会」とは、端的に言えば「中国共産党の、腐敗取り締まり部門」である。これをブラックジョークとして見れば、かなりレベルが高い。

一般国民には、この「紀律検査委員会に、いつでも通報できる」と宣伝している。しかし、往々にして通報をした国民は、そのことの「報復」を後で受けることが多い。つまり、正義感をもって「紀律検査委員会」に告発した人が、間髪入れずに脅迫されたり、本当に殺されたりするのだ。

この「紀律検査委員会」と似ているが、同じく完全に形骸化された制度が「信訪陳情)制度」だ。

陳情窓口を信用して、地方政府の不正を訴える人は、往々にして弾圧される運命にある。あるいは、何年もかけて北京へ陳情するが全く問題は解決されず、やがて陳情者の命がすり減って、死んでしまうのである。

最近「中国の現行の陳情制度は、本当に有効であるか?」という話題が、SNSなどで盛り上がっている。そのきっかけとなったのは、近ごろ明るみになった、ある地方陳情局の職員による、地元政府役人の汚職に関する実名での告発である。この職員は、SNS上に不正を公表した。陳情窓口が役に立たないことを、陳情局の職員だからこそ知っているのだ。

また今月1日には、「北京の陳情局を見に行っただけ」の河北省の高齢女性に対し、女性を陳情者と勘違いした地元公安(地方政府が北京に送り込んだ拉致要員)がひどい暴行を加え、腰椎が砕けるほどの重傷を負わせる事件も起きている。事件後、女性の地元の公安と北京の公安当局が、たがいに責任をなすり付け合い、事件の立件すらできていない。

米国在住の中国人法律家ハリー・ワン(Harry Wang)氏はNTDの取材に対し、次のように述べた。

「これらの事例から見えてくることは、つまり、中国共産党の信訪(陳情)制度を信じるなということだ。不正を取り除き、冤罪を晴らしたいのならば、中国共産党の専制統治を終わらせるしかない。民主と自由を実現することが、唯一の出口だ」

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。