現在、中国の杭州で開催中の第19回アジア競技大会(9/23~10/8)。本来は2022年の開催予定であったが、昨年はまだ中国の「ゼロコロナ(清零)政策」が続いていたため、今年に延期されたものだ。
さて、そのアジア大会で、海外からの選手や関係者に供される「食事」に関して、思わぬところから議論が巻き起こっている。
ネット上の映像や写真で、あまりに安くて豪華な料理をみた一部の中国人から「外国人に媚びている」「ここに使うお金があったら、もっと中国の国民のために使ってほしい」と、批判が噴出しているのだ。
268品の料理が「400円で食べ放題」
公式情報によると、今回のアジア大会には、それぞれ2000人が同時に利用できるセルフ式レストランが7つある。しかも、レストランの装飾や料理の基準は、いずれも5つ星ホテルに準じており、メニューも毎日変わるという豪華さだ。
レストランでは、ビーフステーキ、ヒツジの厚切り肉、新鮮な刺身など、メインディッシュからデザートまで全ての食材は厳選されたもので、ドリンクは飲み放題。ケンタッキー(KFC)やピザハットのコーナーもあり、フライドチキンやピザも食べ放題になっている。
レストランの利用は、なんと1回につき20元(約400円)。この値段で、268品の料理が食べ放題だという。
「えっ」と聞き返したくなるような安さであるが、本当である。その衝撃的な値段とメニューの豪華さに驚き、レストランを訪れた多くのアスリートや海外記者が食事風景をSNSに投稿している。
いっぽう、ここには入れない中国の一般市民からは「外国人に媚を売っている」「なぜこんなに安いのか?」 「中国の学生たちは、健康に悪い加工食品を食べさせられている。この人たち(レストラン利用者)は祖国の未来(学生)より大切だというのか?」といった、やり場のない怒りの声も高まっている。
「大盤振る舞い」は、もう止めろ
中国の民間では、日頃から「政府は、お金を国民や自国の若者のために使うべきだ」と考える世論が根強く存在する。アフリカ諸国への対外援助ばかりでなく、今回のアジア大会でも見られた、中国政府の大金ばら撒きによる「大盤振る舞い」に不満を持つ国民は多い。
中国経済が低迷するなか、アジア大会を開催することは「莫大なお金が、また湯水のごとく消えていく」として、国民の目には寒々とした光景に映っている。いかに中国人選手が大活躍していることを官製メディアが宣伝しても、一般市民にとっては、明日の生活への不安のほうがはるかに大きいからだ。
アジア・オリンピック評議会(OCA)の報告書によると、杭州アジア大会の総収入は100億元だという。
いっぽう、今大会の総費用、つまり支出の総額については明らかされていないが、開催地である杭州市政府によると、今大会に関係する2020年までのインフラ整備と競技会場への投資は「2248億元に上る」とされている。
ハード面への投資だけで、すでに2248億元というならば、本当の総費用は一体いくらになるのか。100億元の収入では「焼け石に水」に過ぎないと、国民の誰もが思うのも無理はない。
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