中国経済の低迷により、セメント、製紙、百貨店、飲食、食品などの内需産業において、中国に進出している台湾企業の利益が減少し、さらに損失を蒙っている。中国の投資環境が大きく変わってきており、台湾のビジネスマンや企業は相次いで中国から撤退している。
台湾の経済メディア「財新伝媒」の謝金河会長は9月1日、中国の6大内需産業を挙げ、これらの産業が2019年に合計で609億元(約2795億円 9月12日現)の純利益を生み出すとしているが、2022年にはわずか48億元(約220億円)にとどまり、約9割減少したと指摘した。
同氏によると、中国のセメント産業は2019年に377億元(約1730億円)の利益を上げたが、昨年は15億元(約68億円)まで減少した。製紙において、栄成紙業は2022年に45億元(約206億円)の損失を出しており、今年上半期にはさらに21億元(約96億円)の損失を出した。株価も52.4元から14.3元へと急落した。
百貨店業界について、昨年台湾企業は中国で38億元(約174億円)の損失を受けた。大洋百貨は3年連続で赤字を出した。
飲食業において、八方雲集は中国市場から撤退し、瓦城は2軒を除き、中国本土の店舗を全部閉店した。
謝氏は「トゥキディデスの罠」を提唱したグレアム・アリソン教授の言葉を引用した。「来る10年間で私たちが直面する中国(共産党)からの主な挑戦は、その台頭ではなく、その衰退から生じるものである。これは何年も前から明白であった。特に昨年の不動産市場の暴落で否定できなくなった」
過去30年間、中国経済の急成長時代、中国の市場はチャンスに満ち溢れていた。人々は中国市場に次々と参入し、市場シェアを競い合っていた。現在では次々と閉店している。
ここ数年、米中貿易摩擦と中国本土のビジネス環境の変化、加えてロウ戦争の影響で、リスクを低減するために、多くの台湾の事業者が工場を東南アジアに移転させている。
元台湾開南大学法律学院の准教授、張正修氏によると、習近平氏の経済方針は、イデオロギーと排他主義が主導しているように見えるという。
習氏はGDPにおける公共セクターの比率を拡大したいと考えている。中共政府が重視している投資、例えば道路や工場などのインフラ投資の乗数効果は減少しており、投資が景気を刺激する効果も弱まってきていると考えられている。
不動産市場の低迷や経済の停滞が長期化する中、中国経済はさらに後退するだろう。中国国内の企業や台湾企業は、生産基地を東南アジア各国に移転しており、外資系企業も中国撤退の動きを強めている。
時事評論家の呉嘉隆氏は次のように述べている。
「中国のビジネス環境が悪化している。労働者の賃金が上昇し、環境保護の要求が高まってきている。以前台湾の事業家たちに提供されていた優遇政策は消えてしまった」
「中共は社会に対する管理を強めている。これが台湾の事業家たちの身の安全などの問題を引き起こしている」
「さらに、米中関係の悪化を受け、台湾の事業家たちが中国から撤退するのは自然な現象である。台湾に戻る者もいれば、事業を東南アジアに移す者もいる」
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