このごろ、中国各地でデングウイルスによる感染症「デング熱」の患者が相次いで確認されている。とくに感染が拡大中とされる雲南省では「蚊に刺され(デング熱で)20人以上が死亡した。病院は連日大混雑だ」という噂がネット上で拡散されている。当局は、あわてて「それはデマだ」と否定し、鎮静化に躍起になっている。
中国メディア「南方網」6日付によると、この頃ネット上話題になっている「雲南省で、蚊に刺されて20人以上が死亡」の噂の出所となった動画投稿者の「汪さん」が現地警察による取り調べを受けたという。汪さんは、体調を崩して地元の診療所に行ったところ、多くの人がデング熱について話しているのを聞いたので携帯電話で動画を撮影し、ネットに投稿したという。
だが、雲南省シーサンパンナ(西双版納)タイ族自治州景洪市の公安局は「これまで州内でデング熱感染による死亡者はいない」と主張し、汪さんをデマ散布の罪で5日間の行政拘留に処した。
この公式の「デマ消し」報道について、多くのネットユーザーは不服としている。「当局が『デマ消し』に乗り出した。これが(噂は真実であるという)答えだ」といったコメントが圧倒的だった。
要するに、当局が躍起になって否定するほど、その「デマ」が本当である可能性が高い。そのことを、人々はこれまでの多くの経験から知っているのだ。
誰もが知る「感染はじまり警鐘者」の一例として、2020年2月7日に亡くなった李文亮医師がいる。
中国における新型コロナ発生の最も初期の段階で、中国政府の発表前から「原因不明の肺炎の存在」をいち早く察知し、同僚の医師たちに警告を発したのが、武漢の眼科医・李文亮医師(33)だった。
李医師は「デマを散布した」として、武漢の公安当局に呼び出され、訓戒処分を受けた。当局の処分に服する署名をさせられるとともに、国営の中国中央テレビ(CCTV)の報道番組でも、連日のように「デマ散布者」として伝えられた。その後、李医師は自らも中共ウイルス(新型コロナウイルス)に感染し、妻子を残したまま死亡する。
若く誠実な医師・李文亮氏の死から3年半以上が経つ現在、真実を語って弾圧された李医師の無念を想起するとともに、いつでも「デマ消し」に躍起になる中国当局の愚かさを感じた人は少なくない。
実際、「それはデマだ」といった中国当局の主張は、どこまで信用できるのか。雲南省の各地では今、デング熱の感染拡大防止のためとみられる媒介生物(蚊など)の殺虫消毒作業が連日おこなわれている。
街中は殺虫剤の散布による白煙が充満しているが、単なる「デマ」で、ここまで必死の対応を見せるだろうか。
(雲南省シーサンパンナ(西双版納)タイ族自治州で行われている殺虫消毒作業の様子)
今月1日、エポックタイムズの取材に応じた雲南省シーサンパンナ(西双版納)タイ族自治州景洪市の「第一人民医院」の医療スタッフによると、「デング熱のために病院にくる患者は、毎日100人から200人ほど。院内は病床が足りず、入院を断るほど混雑している」という。
中国メディア「都市快報」3日付は、最近、雲南省から約千キロ離れた福建省福州市の多くの病院でも、デング熱感染者が確認されていると報じている。
感染症の専門家は「中国は現在、デング熱の流行シーズンだ」と警鐘を鳴らしている。
デング熱は、蚊に刺されることによってデングウイルスに感染する疾患で、急な発熱から始まり、発疹、頭痛、関節痛、吐き気や嘔吐などの症状が見られる。ほとんどの感染者は1~2週間で好転するが、一部の患者は重症化し、死亡するケースもある。
現在のところ、デング熱に対する特効薬はなく、治療は症状に応じた対症療法が基本。 脱水予防として、経口による水分補給や点滴での補液が重要となる。
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