9月から新学期が始まった中国の学校ではあるが、河南省洛陽市では複数の高校の門前に大勢の教師が座り込み、抗議のストライキをしていることがわかった。理由は「数カ月にわたる給与未払い」である。
4日、ネット上に出回った複数の動画のなかには、洛陽市の孟津区第一高級中学(高校)の校門前の空き地に、100人以上の教職員が地面に座り込む姿があった。
その教師たちに向かい、当局の役人らしき人物が拡声器を手にして語りかけるシーンもあった。関係者によると「この学校では、数カ月も教師の給与が支払われていない」という。
別の動画にも、学校らしき建物の門外に、教師とみられる数十人が座り込み抗議をする姿がある。こちらは「洛陽市の孟津区第二高級中学(高校)の教師だ」とする情報がある。
抗議の理由は確認できないが、同じく「給与の未払い」が関係したものと考えられる。なぜなら、この問題を原因とする教師の抗議が今、河南省のみならず中国全土にあふれているからだ。
ただし現在、このような教師による抗議に関連する動画は、全て中国のネットから削除されている。
関連動画に寄せられたコメントのなかには「またも悪意討薪(恶意讨薪)か」とする皮肉も少なくなかった。「悪意討薪(恶意讨薪)」とは現代中国語の1つで、ネットで検索してみると「中国史上で最も恥知らずな言葉」という注釈が見られた。
意味は「悪意をもって、給料(薪)を払えとせがむ(討)こと」をいう。これはどうも中国の官方による造語であるらしく、働いただけの給料を求める教師に対し、それこそ「悪意をもって」非難するための言葉として「悪意討薪」が使われているらしい。状況から判断して、体制側に飼われている「特殊なネット民」が、抗議する教師を誹謗するため意図的にコメントしている可能性が高いのだ。
教師の名誉のために付言すれば、彼らは決して、これを望んで授業に穴をあけるような抗議をしているのではない。学生に迷惑が及ぶことは、もちろん教師として断腸の思いである。しかし、長期間にわたって給与が支給されないため、教師も限界なのだ。
そうは言っても、恐るべき就職難の最中にある今の中国では、そう簡単に職業を変えられるような状態ではない。「数カ月以上、無給で働いた」のは、もちろん彼らの教師としての使命感もあるが、他に就ける職がないという冷酷な現実のせいでもある。
ほかにも、ネット上のコメントには「中国では、学校も病院も職員に給料を払えない」「銀行の全預金が、ある日突然凍結された河南省の預金者は、いまだにお金を取り戻せていない」「大量にある未完成物件。それでもわが政府は、アジア競技大会の開催に100億元(2000億円)も注ぎ込む」と嘆く声もあった。
公開された情報によると、孟津区第一高級中学(高校)の教師は総勢500人以上。同区第二高級中学(高校)は100人以上の教職員を抱えており、いずれも「河南省の模範高校」である。
近年、中国各地の地方当局の財政状況は悪化の一途をたどっており、教師の給与未払いの現象は常態化している。このため、給与の支払いを求めて、ストライキしたり、抗議を起こす教師が後を絶たない。
なお1億人ちかい人口を抱える河南省は、中国で最も人口が多い省でありながら、経済は発展しておらず、ただでさえ中国政府指定の「貧困県」を多く抱えている。今年以来、河南省内では、給与未払いをめぐって教師による抗議事件が何件も起きている。
中国メディア「澎湃新聞」によると、教師の給与未払いについては、地方政府の「財政難」が一般的な原因とされている。しかし一部の地方では、教育資金の使い込みなど不正支出の問題が、昔から存在しているという。
以前、エポックタイムズ・ジャパンの取材に応じたことのある、日本在住の華人「Elon無碼時刻(ツイッターアカウント https://twitter.com/ElonIchiro)は、中国国内のクラスメートから聞いた話として、以下のように紹介した。
「給料を払わないことに抗議した教師たちは、その日のうちに警察や警備員によって暴力を振るわれてバスへ引きずり込まれる。監禁ホテルへ向かう道中も、ずっとバスの車内でボコボコにされる。それからホテルの部屋に連れ込まれ、ドアを閉められて監禁され、また意識を失うまで暴力を受ける。ホテル内には、悲鳴と泣き声が響き渡る。まる一日『教育』された後、今後は二度と同じこと(抗議)をしないと誓う誓約書や、秘密保持契約などの書類にサインさせられる」
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