今年(2023年)のハロウィンは「10月31日」だそうだ。
本記事は西洋社会のハロウィンとは何の関係もない。ただ、お化けの仮装をした子供たちが「お菓子をくれないと、イタズラするぞ(Trick or Treat)」といって家々をまわる可愛いらしい姿を想像しなければ、以下に出てくる「欲望むき出しの大人たちの醜態」に耐えられそうもないのである。
言いたくはないが、これが道徳や品性をなくして「本当のオバケ」になった人間の、まことに悲しむべき姿である。残念ながら今の中国には、これが「百鬼夜行」しているという。
伝統の慣習が、今では「金よこせ!」
中国では結婚式などの慶事(お祝い)があった際に、お金を包んで渡す慣習がある。ご祝儀といえば、日本の結婚式では出席者が新郎新婦に渡すものだが、中国では、主催者側が「幸せのおすそ分け」として広く周囲に配るお金もふくまれる。
お金はむき出しのままではなく、中国人にとって縁起の良い色である赤色の紙で包むため、これを「紅包(ホンバオ)」と呼ぶ。(なお、中国の病院で「紅包」というと、患者の家族から医師へ渡される賄賂の意味になる)
さて、この「紅包」が、お互いに楽しみながらやりとりできる許容範囲であれば、何の問題もない。ところが昨今では、もらう側が欲望をむき出しにして「金よこせ!」と言わんばかりに、花嫁を載せた輿(こし)や婚礼の専用車両を遮るケースが各地の農村で見られるのだ。
紅包を渡す相手は、同じ村の見知らぬ人だったり、どこかの全く知らない人である場合も多い。それでも、せっかくの婚礼の日を不吉にしたくないという気持ちから、せがまれるままに紅包を渡すケースも多い。
もちろん、なかには「どこぞの知らない人間になど(紅包を)渡したくない」といって渡さなかったり、あるいは、せっかく渡したのに「中身が少ないぞ」と相手から文句を言われて、つまらぬ争いに発展するケースも少なくない。それらは、中国メディアでも時折報じられている。
今月15日にSNSに投稿された動画のなかにも、そのような争いがあった。
動画の投稿者によると、河南省商丘市のある婚礼で、花嫁が乗る輿(こし)を止めて「紅包」をせしめようとする「黒い服の女性」が現れた。彼女は、双方の衝突の過程で「ネックレスがちぎられた」と主張し、その弁償として8000元(約16万円)を要求しているという。
現場を映した動画のなかには、何やら花嫁側と言い争いをしている様子で、輿の行く手を阻む「黒い服の女性」が映っている。それに対して、赤い晴れ着につつまれた新婦が輿から身を乗り出し、花嫁とも思えぬすごい形相で反論している様子もある。
この黒い服の女性はその後、輿の前にどかっと座り込りこんだ。「ちぎられたネックレスの弁償金と紅包をくれないなら、ここを通さない」という構えらしい。この黒服の女性は子供連れだったようだが、その子供(女の子)には何ともすごい修羅場を見せてしまったものだ。
この「事件」が、この後どうなったかは定かではない。ただ、似たような事件の報道やSNS投稿は、昨今の中国で、実によく見かけるのだ。
レンガを手にした中年女性
ほかにSNSに投稿されている動画のなかには、なんと手にレンガを持ち、婚礼用の車列の前に立ちはだかる中年女性の姿があった。
動画の投稿者によると、この中年女性が「紅包をくれないなら、このレンガで婚礼用の車を壊すよ」と脅しているらしい。動画のなかには、この女性にレンガでつけられたと思われる傷が車に残されていた。(関連動画はこちら)
「お金くれないと、通さないぞ」
実際、結婚式でなくても、中国の一部の農村では、村を通る車を止めて金をせびる光景が珍しくないのだ。要するに、ただの「たかり行為」である。通常の感覚からすれば、これは犯罪という。
村民が単独でせがむ場合もあれば、中年の老婦人などが集団で車をとり囲み、たかることもある。周りの人たちも、何も珍しいことではないとばかり、見て見ぬふりだ。そんなオバサンたちの土匪(盗賊団)に遭遇した運転手にすれば、もはや「運が悪い」としか言いようがない。
SNSに投稿された動画のなかには、大型の貨物車の前に立ちはだかる中年男性の姿があった。
車がゆっくりと進行し、けたたましくクラクションを鳴らしているにも関わらず、この男性は少しも動じない様子だった。この状況について、動画投稿者は「お金をくれなければ、通さないぞ」と説明している。
中国の経済が悪化の一途をたどるなか、今後も、このようなケースは増えるだろう。が、それにしても、この変異ぶりはどうであろうか。まさしく人間が本当にオバケになった。そのことを、今は嘆くしかない。
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