中国の農村に出没する金銭オバケ 「お金くれないと、通さないぞ」

2023/09/20
更新: 2023/09/20

今年(2023年)のハロウィンは「10月31日」だそうだ。

本記事は西洋社会のハロウィンとは何の関係もない。ただ、お化けの仮装をした子供たちが「お菓子をくれないと、イタズラするぞ(Trick or Treat)」といって家々をまわる可愛いらしい姿を想像しなければ、以下に出てくる「欲望むき出しの大人たちの醜態」に耐えられそうもないのである。

言いたくはないが、これが道徳や品性をなくして「本当のオバケ」になった人間の、まことに悲しむべき姿である。残念ながら今の中国には、これが「百鬼夜行」しているという。

伝統の慣習が、今では「金よこせ!」

中国では結婚式などの慶事(お祝い)があった際に、お金を包んで渡す慣習がある。ご祝儀といえば、日本の結婚式では出席者が新郎新婦に渡すものだが、中国では、主催者側が「幸せのおすそ分け」として広く周囲に配るお金もふくまれる。

お金はむき出しのままではなく、中国人にとって縁起の良い色である赤色の紙で包むため、これを「紅包(ホンバオ)」と呼ぶ。(なお、中国の病院で「紅包」というと、患者の家族から医師へ渡される賄賂の意味になる)

さて、この「紅包」が、お互いに楽しみながらやりとりできる許容範囲であれば、何の問題もない。ところが昨今では、もらう側が欲望をむき出しにして「金よこせ!」と言わんばかりに、花嫁を載せた輿(こし)や婚礼の専用車両を遮るケースが各地の農村で見られるのだ。

紅包を渡す相手は、同じ村の見知らぬ人だったり、どこかの全く知らない人である場合も多い。それでも、せっかくの婚礼の日を不吉にしたくないという気持ちから、せがまれるままに紅包を渡すケースも多い。

もちろん、なかには「どこぞの知らない人間になど(紅包を)渡したくない」といって渡さなかったり、あるいは、せっかく渡したのに「中身が少ないぞ」と相手から文句を言われて、つまらぬ争いに発展するケースも少なくない。それらは、中国メディアでも時折報じられている。

今月15日にSNSに投稿された動画のなかにも、そのような争いがあった。

動画の投稿者によると、河南省商丘市のある婚礼で、花嫁が乗る輿(こし)を止めて「紅包」をせしめようとする「黒い服の女性」が現れた。彼女は、双方の衝突の過程で「ネックレスがちぎられた」と主張し、その弁償として8000元(約16万円)を要求しているという。

画像(左)は河南省商丘市、花嫁が乗る輿を止めて「紅包」をせしめようと輿の前に立ちはだかる女性。画像(中)は輿の前に座り込む黒い服の女性。画像(右)は輿から身を乗り出し、すごい形相で言い争いをする花嫁。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

現場を映した動画のなかには、何やら花嫁側と言い争いをしている様子で、輿の行く手を阻む「黒い服の女性」が映っている。それに対して、赤い晴れ着につつまれた新婦が輿から身を乗り出し、花嫁とも思えぬすごい形相で反論している様子もある。

この黒い服の女性はその後、輿の前にどかっと座り込りこんだ。「ちぎられたネックレスの弁償金と紅包をくれないなら、ここを通さない」という構えらしい。この黒服の女性は子供連れだったようだが、その子供(女の子)には何ともすごい修羅場を見せてしまったものだ。

この「事件」が、この後どうなったかは定かではない。ただ、似たような事件の報道やSNS投稿は、昨今の中国で、実によく見かけるのだ。

 

レンガを手にした中年女性

ほかにSNSに投稿されている動画のなかには、なんと手にレンガを持ち、婚礼用の車列の前に立ちはだかる中年女性の姿があった。

動画の投稿者によると、この中年女性が「紅包をくれないなら、このレンガで婚礼用の車を壊すよ」と脅しているらしい。動画のなかには、この女性にレンガでつけられたと思われる傷が車に残されていた。(関連動画はこちら

手にレンガを持ち、婚礼用の車列の前に立ちはだかる中年女性。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)
画像(左)はレンガを片手に、紅包をせがむ中年女性が止めた婚礼の車列。画像(右)は女性のレンガによってつけられた車の傷。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

「お金くれないと、通さないぞ」

実際、結婚式でなくても、中国の一部の農村では、村を通る車を止めて金をせびる光景が珍しくないのだ。要するに、ただの「たかり行為」である。通常の感覚からすれば、これは犯罪という。

村民が単独でせがむ場合もあれば、中年の老婦人などが集団で車をとり囲み、たかることもある。周りの人たちも、何も珍しいことではないとばかり、見て見ぬふりだ。そんなオバサンたちの土匪(盗賊団)に遭遇した運転手にすれば、もはや「運が悪い」としか言いようがない。

SNSに投稿された動画のなかには、大型の貨物車の前に立ちはだかる中年男性の姿があった。

車がゆっくりと進行し、けたたましくクラクションを鳴らしているにも関わらず、この男性は少しも動じない様子だった。この状況について、動画投稿者は「お金をくれなければ、通さないぞ」と説明している。

「お金くれないと、通さないぞ」と大型貨物車の前に立ちはだかる中年男性。(SNS投稿動画よりスクリーンショット)

 

中国の経済が悪化の一途をたどるなか、今後も、このようなケースは増えるだろう。が、それにしても、この変異ぶりはどうであろうか。まさしく人間が本当にオバケになった。そのことを、今は嘆くしかない。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。