中国当局は、今もそれを「降雨による自然災害だ」という。しかし、意図的なダム放水で河北省や黒竜江省などに甚大な被害と損失をもたらしたことは、もはや被災者の誰もが知る事実である。
本来ならば重大な賠償責任を負うべき政府であるが、支給される「災害補償金」は、まるで話にならないほど、ごくわずかである。なかには「そんな雀の涙ほどの手当すら、もらえていない」という被災者も大勢いる。
河北省霸州市の被災者たちは今月22日、たとえ少額でも「災害補償金」の支給を求めて、市政府前で抗議を行った。SNSに投稿された現場動画のなかには、政府庁舎前で「我われの1000元の安置費はどこへいった(我們的1000元安置費去哪了)」と書かれた横断幕を掲げる人たちの姿があった。
「安置費」とは、全ての被災者へ一律に支給される一時的な手当のことであり、個別の被害に対応する損害賠償ではない。1000元といえば日本円にして約2万円である。いくら日本より物価の安い中国であっても、家も生活手段も失った被災者にとって、2万円では話にもならない。しかし、その1000元(2万円)ですら、この抗議者には届いていないのだ。
エポックタイムズの取材に対して、現地の村民は、この日集まったのは同市王莊子鎮(町)の5つの村の村民など、合わせて約3千人だと明かした。
昼間は、主に女性の村民が政府前で横断幕を掲げたり、スローガンを叫んだりして抗議を行い、政府に対して納得のいく説明を求めた。だが「説明」は全く得られず、夜8時過ぎになると、政府当局者たちは「警棒」を使って女性たちを殴り始めたという。
女性が暴力を振るわれたのを聞きつけ、3千人の村民が駆け付けると、警察との間で大規模な衝突が起きた。怒った村民たちは市政府庁舎の玄関ガラスをたたき割り、庁舎内にも突入した。だが、当局の鎮圧に遭い、複数の村民が負傷した。衝突は、夜中の2時ごろまで続いたという。
事件のきっかけは、一部の村では「村民1人あたり1000元」が支払われたが、今回抗議をした王莊子鎮の村民は、その金をもらっていなかった。そこへ「安置費は霸州市政府に届いていた」とする情報を聞きつけた村民が現れ、「政府の役人が、上からおりた安置費を着服したのではないか?」と疑った村民たちが、政府に説明を求めに行ったところ、十分な説明はなく、結果的に「衝突」に至ってしまった。
怒った村民たちが霸州市政府前で抗議をしていたのと同じころ(23日未明)、霸州市政府の「安置部門」のあるビルの前には、別の村民たちが白いロウソクを灯して座り込み、静かなる抗議を行っている。
地元住民の張さんによると、「前回および前々回(の抗議)は、それぞれ別の村が抗議していたが、同じく殴られ、唐辛子スプレーをかけられた。今の中国で声を上げれば、運が良ければ一時拘束で済むが、投獄される可能性だってある。その迫害は、連座により、孫の代まで及ぶこともある」と、政府相手に抗議することの不安を語った。
被災地の状況をネットに投稿した河北省の市民のなかには、当局の監視下に置かれ、中国の主要SNSアカウントを封鎖されて、家に帰ることさえできないという人もいる。
この翌日(23日)にも、霸州市の被災者たちは、市政府へ3回目になる補償金支給を求めたが、複数の村民が当局から暴力を受け、負傷している。
そんな霸州市の被災者たちは今、下の動画に見られるように、家を失い、簡易なテントを使った原始生活を強いられている。
夏のうちは、まだ良い。しかし冬になれば、河北省は零下20度の極寒となる。このままでは、凍死者が続出することは必至である。
(SNSに投稿動画、霸州市の被災者たちの被災後の生活)
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