オピニオン 上岡龍次コラム

中国経済の破綻と習近平の決断

2023/08/20
更新: 2023/08/20

習近平を無視して経済は悪化する

武漢ウイルス・パンデミックが過ぎて経済活動が活発化すると思われたが現実は甘くはなかった。人間の移動が世界規模で再開するなら経済活動も活発化するはずだが消費者は守りを維持している。そんな時に自然災害が発生し大規模な被害が発生。さらに食糧生産をしたくても自然災害の前では無力。そんな時に中国経済は経営破綻危機が続いている。

日本は中国からの団体旅行客が爆買いすると期待しているが、肝心の中国では大手企業の経営破綻危機が続いている。中国の不動産開発大手「碧桂園」は8月10日に約9000億~約1兆1000億円の赤字になるとの見通しを発表し中国恒大集団に続き経営危機が表面化した。その中国恒大集団は8月17日に米連邦破産法15条の適用をニューヨーク連邦破産裁判所に申請した。さらに中国の資産運用会社である中植企業集団は16日に開いた投資家との会合で流動性危機に直面しており債務再編を行う予定であることを明らかにした。

中国共産党は効果的な経済政策を行えず状況は悪化の一途。大手企業の経営破綻を回避できなければ中国経済全体を破壊する。だが中国共産党は回避策を行なうが焼け石に水の状態になっている。

習近平の無策と決断

習近平は易姓革命を恐れているから中国大手企業の経営破綻の回避を望んでいる。なぜなら、これまでは富裕層と中間層が貧困層を抑えていたから良いが、富裕層と中間層が大量に無職になれば貧困層と団結して中国共産党を打倒する勢力になる。こうなると資産を持つ中国共産党と人民の対立構造に至り易姓革命を迎えてしまう。これでは習近平に生きる場所は存在しない。

資産を持つ中国共産党党員は沈み行く船から逃げる準備をするから本気で習近平を支える者はいない。ならば習近平は早期に強権を発動して経済回復を行なうか外部に敵を作る戦争を選ぶことになるだろう。

今の中国は台風などの自然災害で広範囲にインフラが破壊された。さらに農業も打撃を受けたので食料危機と雇用の悪化は間違いない。だが今の習近平が堅実な策を選ぶなら大規模インフラ整備を行なうことで雇用対策になるし農業への支援は易姓革命を回避できる可能性を持つ。

対策1:インフラ整備
対策2:農業への支援

中国全土で自然災害によりインフラが破壊されたが復興作業は人民に雇用を与える好機になる。これは土木建築業界に限定された支援になるが、最近中国全土で話題になっている不動産関係で失職した人民に雇用を与えることができる。だから習近平には好機なのだ。

さらに工場などが生産停止すると地方の農家からの出稼ぎ労働者は失職。無職だから怒りから易姓革命に参加する可能性が高い。だが習近平が農業を支援すると農家からの出稼ぎ労働者は故郷に戻り農業に従事する。すると食糧生産が向上し国内の食糧危機を回避できる。さらに余剰の食糧を外国に売ることで金が得られる。

今の中国に必要なのは金だから、工業製品で輸出が低下するなら食料で利益を得るしか道はない。世界では食料危機なのだから食料は金なのだ。バブルの典型である投機や不動産では中国の未来は得られない。だから堅実な一次産業で金を得るのが最善だ。だが習近平は堅実案ではなく短絡的な決断をする可能性が有る。それは台湾侵攻・日本侵攻・人民虐殺・人民を移民させる策などで人民の怒りを消し去ることが考えられる。

人民にも策が有る

それに対して富裕層と中間層の人民には習近平を頼らない策が有る。それは海外への移民。簡単に言えば貧困層は金が無いから国外に逃げることはできないから国内で農業に従事するかインフラ整備などで金を得るしかない。だが富裕層と中間層は金が有るから海外に移民して生活基盤を確保する道を選ぶだろう。

富裕層と中間層で資金が豊富なら金融市場で利益を得やすい欧米を選ぶだろう。だが海外に移民しても資金不足なら近場の日本を選ぶと推測する。それに日本であれば日本各地に中国企業が土地を買っている。ならば中国人が集まって生活できる基盤を確保できる長所が有る。移民するなら集団で生活すれば安全が得られるし、集団で現地民を追い出して生活圏を拡大できる。つまり集団を悪用して日本から国盗りができるのだ。

これはソ連・ロシアが行った移民を用いた隣国での国盗りが参考になる。ソ連時代から隣国のジョージア北部・ウクライナ東部の国境付近に国民を移民として送り込んだ。ソ連が崩潰して今のロシアに変わる頃にジョージア北部・ウクライナ東部のロシア系移民は現地民よりも多くなる。

するとジョージア北部のロシア系移民は移民自治を求めて選挙を行った。ロシア系移民が多数派だから選挙に勝つのは当然。さらにロシア系移民は祖国への帰属を求めてプーチン大統領に保護を求めた。するとプーチン大統領は自国民保護を名目にジョージア北部にロシア軍を派遣してジョージア・ロシア戦争(2008)に至った。そしてウクライナ東部も同じことが発生しロシアによるウクライナ侵攻(2022)に至っている。

狭い地域に移民系が集まると独自の共同体が作られる場合が有り、最近では同様のことがフランスで発生し移民系の暴動が発生した。外国から移民をしても受け入れ国の人間になる者と祖国の協同体を維持する者に分かれる。このため誰が受け入れ国の人間になるか不明だから判断できない。最悪の場合はジョージア北部・ウクライナ東部の様な国盗りに至るから日本でも発生する可能性が有る。

最近の中国経済は破綻寸前だから、このタイミングで日本に観光目的で入国しても以前の爆買いは有り得ない。なぜなら中国共産党の圧政と中国での失業が原因で既にアメリカでは“中国籍の不法入国は1万728件で昨年同期の件数の約18倍。昨秋から増え始め1月に1千人を超え月間では4月の3205人が最多。中国籍は全体の約1%だが、伸びは際立っている”現象が確認されている。

昨年から中国からアメリカへの不法移民が増加したのであれば中国経済の悪化を示唆している。ならば以前の中国人による爆買いは有り得ないから日本への団体旅行解禁は家族単位で日本に亡命できる好機になる。このため亡命先がアメリカだけではなく日本も含まれる可能性は高くなる。今年の5月の段階でアメリカへの亡命希望は中国共産党の圧政と失業が挙げられていた。このため中国経済が悪化すればアメリカだけではなく日本への亡命希望が増加することになるだろう。

仮に人民が中国を捨てる移民だとしても習近平には好都合。なぜなら易姓革命を行なう危険分子を国外に追放できる。そして中国に残るのは貧困層だから人民解放軍を用いて弾圧し支配できる可能性は有る。そのための棄民政策を兼ねるから習近平には好都合なのだ。

無策の日本の悲劇

中国経済が破綻したら日本の利益にはならない。なぜなら仮に中国から移民が日本に押し寄せて特定の場所に集団で生活すると独自の共同体を作ることになる。これがフランスの様に中国人だけの共同体になると、フランスで確認された治安機関すら容易には入れない共同体になりかねない。

フランスの移民系が総人口の10%になると暴動を起こすと容易には抑えることはできなかった。移民に寛容であったフランスが総人口の10%に対応できないのであれば日本の警察でも対応に時間がかかることになる。日本の川口市では約2000人のクルド人が現地で生活する日本人とトラブルを抱えていることから、これ以上の流入は警察の対応が難しいことを示唆している。

ならば日本の警察が対応を強化できれば良いが、それまで治安が悪化した場合の日本人は自警団を作らなければ安全を得られない未来が来るだろう。これを回避するには入国審査の厳格化と国内で犯罪を犯した場合は強制送還を採用しなければ対応できない。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。