習近平は「自己神格化」で毛沢東になれるか? 習氏が使ったモノを展示する珍景まで出現

2023/08/21
更新: 2023/08/21

中国では近年、習近平主席への個人崇拝は、かつての毛沢東時代を彷彿とさせるような「神格化」の段階へと進んでいる。

習氏が使用した品々が「展示」される現象は、すでに中国の各地で見られている。一部の都市には「習語録」を学び、朗読する専用の路上ミニKTV(電話ボックスのようなブース)まで出現している。

(厳かに展示されているのは、習氏が使った「ティーカップ」。習氏が使った解説機器。さらには、習氏が視察で「見た」という便器まで)

(「習語録」を学び、朗読するためのミニKTVブース)

(習氏の著作を読む姿をアピールする役人たち。下は、習氏の著作)

 

繰り返される「毛沢東マンゴー」の狂気

1968年の文化大革命期、当時のパキスタン外相アルシャッドハッサン氏から、南国の果物「マンゴー」が贈呈された。毛沢東はそのマンゴーを、あまりに過激化した紅衛兵を抑えるため清華大学に進駐していた「首都工農毛沢東思想宣伝隊」に贈った。

この「毛沢東マンゴー」を贈られた宣伝隊および北京の労働者は狂喜し、果物のマンゴーを「ご神体」のように奉って、街頭パレ ードや民衆の祝賀大会を開くなど、お祝いムードに包まれた。

やがて(プラスチック製をふくむ)複数の「毛沢東マンゴー」が、あちこちに出現した。生のマンゴーはワックスを塗って防腐処理したが、それでも日数が過ぎれば崩れてくるので、最後は湯で溶かし、スープにして皆で「恭しく飲んだ」という。なにしろ「毛主席が特別に下さったマンゴー」である。ただの果物ではない。ましてや、間違っても「これは本物か?」などと疑ってはならないのだ。

馬鹿馬鹿しさにも程があるというものだが、なんと現代の中国で、それに似た現象が現れているという。それは「毛沢東」の三文字を「習近平」に替えただけの、まさに半世紀前に酷似した光景である。

中国では、いまや小学校から高校までの必修科目として「習近平思想」を教えることが実施されている。つまり、半世紀前の毛沢東時代のような「個人崇拝」を復活させることによって、習近平の独裁体制を強化し、さらには毛沢東と同様の「神格化」を進めている。

中国において「法律を超える存在」である党規約(2022年10月に公開)の改正版でも、「党員が必ず履行すべき義務」として習総書記の「核心」としての地位擁護など、習主席への個人崇拝につながる内容が設けられている。

5年前の2018年時点で、河南省政府が省内のキリスト教徒に対して、自宅には毛沢東や習近平の肖像画を飾るように強要していることが明らかになっている。

「習近平の神格化」現象をめぐり、中国問題時事専門家の姜光宇氏は、次のようにコメントしている。

「アドルフ・ヒトラー、ムアンマル・アル=カッザーフィー(リビアの独裁者)、サッダーム・フセインのような前例にみられる通り、民心を得ずして祀り上げられた独裁者の結末は悲しい。習氏は、これらの歴史に習うべきだ」

さすがに「習近平のマンゴー」は、まだ出現していない、しかし、習氏が使用した物品を、あたかも有り難い神器のように奉って展示する「珍景」は、もはや重症にちかい病状と言ってよい。

(習氏の足跡)

(習氏が使用したイス)
 

(習氏が使用した様々な物品の展示。「習主席が足で踏んだ床面のタイル」もある)

 

そっくりさん」も悲喜こもごも

通説では「世界には、自分とよく似た人が3人いる」というが、習近平主席のそっくりさんは、すでに何人もいる。

そっくりさんの1人であるミートパイ屋の店主(湖南省長沙市内)は、一時海外メディアでも報じられるほど話題(2014年)になった。その顔を一目見ようと訪れる客があふれ、店は行列ができるほど繁盛したが、これは運が良いケースだろう。

いっぽう、運悪く(?)顔が習主席にそっくりだというだけで、様々な「不利益」を被るケースもある。

例えば2019年、中国人オペラ歌手で欧州在住の劉克清さんは、中国版ティックトックの「抖音」にチャンネルを開設して、歌唱法を指導する動画を公開して人気を集めていた。

ところがその後、劉さんの容姿が「あの人に、そっくりだ」とネット上で話題になった。

習氏に似ているその顔が「問題視」されたためか、中国当局の検閲にひっかかり、アカウントが繰り返し封鎖される不運に見舞われたという。いくら習氏に顔や雰囲気が似ているとはいえ、顔のつくりは本人の落ち度であるはずもなく、そのために不利益を被ったのではたまったものではない。

 

(習近平氏によく似たオペラ歌手の劉克清さん。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア( RFA )より)

そのほかSNS上には、場所も撮影日も不明だが「習主席に顔が似ている男性」の画像をめぐって、「この人は夜道を歩いている時、襲われる確率が高いな」「見ているだけで、怒りが込み上げてくるよ」といった、やや物騒なネガティブコメントが上がっているようだ。

(「習主席に顔が似ている」だけで、やや物騒なコメントが寄せられた男性)

 

毛沢東の轍を踏む習近平

10年前の2013年時点で、中国政府はインターネットの監視に200万人以上の要員を当てていることが報じられている。

それから10年後の現在、ネット監視員の数は大幅に増加しているはずだ。現在、ネットへの国民の投稿は異常といえるほど厳しく監視されている。中国政府に批判的な書き込みや政府要人を茶化すような画像があればすぐに削除され、投稿者のアカウントが封鎖される。

ところで、習近平と毛沢東の最大の違いは何だろうか?

毛は確かに狂信的なレベルで崇拝されていたが、習にはそれが全くないことである。毛沢東は50年代終盤に大躍進運動で失敗。中国全土で数千万の餓死者を出したことにより、一時期、権力の座を劉少奇に奪われた。毛が、劉少奇からの権力奪還を狙い、紅衛兵を煽って発動したのが1966年から始まる文化大革命であった。

習近平氏は、党総書記という最高権力の座にはいるが、昨年12月まで3年に及ぶ「清零(ゼロコロナ)政策」では完全に失敗した。もとより実現の可能性がない無謀な政策であったが、それを強行したために、中国社会をどれほど破壊したか分からない。いわば今の習氏は「大躍進運動、失敗後の毛沢東」なのである。

だからこそ習近平氏は、自身への「崇拝」を無理にでも作り上げようとする。また、毛沢東がなし得なかった台湾併呑の野望を捨てていない。

いずれにせよ、毛沢東と習近平、両者が危うい独裁者であることは非常に共通している。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。