【閲覧注意】本記事には、ご遺体が映った映像や画像があります。ご注意ください。
「北京を守る」という大義名分のため、河北省涿州市は当局による事前通告なしのダム放水により、住民が避難する間もなく市のほぼ全域が水没した。
市中心ではようやく水は引いたが、依然として浸水している地域もある。壊滅的な被害を引き起こしたのは、自然災害ではなく、共産党政府による「人災」であるとして、抗議の声が上がっている。
抗議する被災民を、警察が鎮圧
6日、河北省保定市定興県の政府庁舎前で、多くの市民が抗議をする様子を映した動画がネットに流れた。この後、抗議者は警察や公安によって鎮圧され、一部の市民が逮捕されたという。
これに先立つ5日、同じ河北省廊坊市覇州市の政府前でも、被災民による抗議活動が行われていた。
その場面を映した動画がSNSに流出。被災民は「私たちの家を返せ。(洪水は)ダム放水が引き起こしたことは明らかなのに、降雨のせいにしている(还我家园,明明是泄洪原因,却说成降雨所致)」などと書かれた横断幕を掲げて、政府に抗議をした。
この後どうなったのかに関する動画はないが、おそらく定興県と同じように警察によって鎮圧されたものとみられる。
被災民の叫び「これは天災ではない!」
6日の定興県政府前での抗議の様子を動画を投稿した現地住民は、以下のような字幕をつけた。
「4つのダムによる同時放水のせいで、私たちは家を失った。これは天災ではない! 当局は放水するためにダムを爆破したんだ。私たちは、ただ政府から納得できる説明が聞きたいだけだ。しかし、定興県政府は帰る家を失った難民(被災民)を武力で鎮圧した。この動画を拡散してほしい」
この市民は、鎮圧された被災民を「難民」と表現した。それはまさに、頼りになるべき地元政府に放棄され、見捨てられた住民の叫びであった。
現在、この動画は中国のネット上で封鎖され、完全に削除されている。不思議なことにネット上には、被災民をなだめ「被災民の生活や医療をふくめ、どんな要求でも政府は責任を取る。損失は補償する」と自信満々に約束する現地政府の高官の映像だけが残されている。
もともとこの映像には、地方政府の高官がこのような「守るはずもない口約束」をする前に、ついていたシーンがあった。被災民が「 放水しないと約束したのに、あなたたちは放水した。なぜ私たちを騙したのか?」と問い詰めるシーンである。
しかし、この部分は当局によって意図的に削除された。高官が言った「全責任をとる」の部分と、それに対して寄せられた「なんて良い政府なんだ!」などと祀り上げるコメントだけが、なぜか残されている。
SNS上に流れている大量の画像や動画によると、8月5日時点でも、定興県では多くの村が「泥の海」のままだった。水が流れて、引いているようには見えない。このまま天日で乾燥するの待つとすれば、いったい何カ月かかるのか。家を失った住民にとって、それは生活再建の目途さえ立たない絶望の光景でしかない。
洪水が引いた後の「凄惨な光景」
甚大な洪水被害を受けた河北省涿州市の一部地域では、水が徐々に引いている。
街中には「苦労して、やっと手に入れた」という支援物資を運ぶ市民の姿が多くみられた。いっぽう、市民が街中で撮影した動画のなかには、路上に転がる災害犠牲者の遺体や家畜の死体の山があった。
被災地では、折からの高温が続いている。そうした遺体や家畜の死骸は今、一斉に腐敗し、凄惨な光景となっている。伝染病などの二次災害が発生する危険性は、極めて高い。
(水が引いた後の涿州市で、路上に転がる死体。SNS投稿動画)
(8月5日に撮影された涿州市の養豚場。溺死した大量の豚は、すでに腐敗し始めている)
(撮影場所不明)
(河北省涿州市)
(河北省保定市易県)
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