開港以来、未曾有の不況に襲われる上海 原因は人為的

2023/08/01
更新: 2023/08/01

統計によれば、今年の上半期における上海の経済成長率は、昨年同期(ロックダウン期間)と比較して9.7%増の2兆1300億元(約42兆円)に達したという。しかしながら、現実はそれとは違っている。

昨年の下半期の上海のGDPは2兆5300億元(約50兆円)であり、その期間はまだ完全にロックダウンが解除されておらず、ゼロコロナ政策の時期であった。今年は完全に開放された後でありながら、GDPは昨年の下半期に比べて1.6%下落した。これは、上海が深刻な困難に直面し、大きなダメージを受けていることを示している。

 上海市民から見た衰退の現状

 ネット上には「上海がこんな状況になってしまって、我々はとても悲しい」という投稿があり、投稿者は上海の市民と推測される。彼の友人が上海を訪れたため、彼は友人を案内したが、予想外に衰退した光景を目の当たりにした。
 
彼は特に3か所を選んだ。1つ目は上海駅で、ここは中小企業の店舗が多い場所である。2つ目は虹橋駅で、主に中規模の商店があり、それなりの資本を持つ商人がここで店を構えている。3つ目は南京路で、これは上海で最も賑やかな地区で、大企業や財閥がここに投資している。
 
しかしながら、これらの3か所はすべて大きな不況に見舞われ、衰退の兆しを見せている。彼の言葉を借りれば、「閉店したり、撤退したり、調整したりする」とのことである。それ故に彼は見た後、心から悲しみを覚え、上海が大きな打撃を受けており、立ち直るのはいつになるのかと思ったという。

 都市封鎖 上海経済に与えた深刻な影響

中国問題の専門家である横河氏は「菁英論壇」で、上海の現在の経済問題は経済サイクルの問題ではない。経済サイクルは基本的に全世界的なものだ。しかし、いま他の国ではこれほどの衰退は見られないと語った。
 
上海が直面している最大の問題は、都市封鎖によるものである。事実、上海が去年の都市封鎖を開始する前の2年間、つまりコロナの時期に、上海の運営は他の都市に比べて比較的通常通りであった。それは、ゼロコロナ政策を取るのではなく、適切にコントロールする、西側のやり方に近かったからである。この適切なコントロールにより、上海の経済は基本的に正常なレベルを維持していた。
 
しかし、オミクロン株が現れた後、上海は耐えきれなくなった。政治的圧力により上海がゼロコロナ政策を取り、都市封鎖に追い込まれた。
 
上海は国際的な大都市であり、都市封鎖が深刻な損失を引き起こすと、多くの人々が去り、多くの資本が撤退し始めた。これが今の上海の不況を生んだのである。上海の不況は、なかなか回復できず、外資が撤退した後、あるいは産業チェーンが移転した後、再び戻すのは非常に困難であるということだ。
 
横河氏は、以下のように述べている。もう1つの問題は封鎖期間中、多くの中小企業が完全に倒産し、その後再建するのが非常に困難なことである。それは、現在、中国では、国家にも銀行にも資金がなく、貸し付けを通じて再興することはほとんど不可能だからだ。さらに、信頼の喪失も問題である。今回の不況は人為的にもたらしたもので、経済サイクルではない。経済サイクルでは、最低点を経て再び回復するという希望がある。しかし、このような人為的な不安定な要素が投資を阻んでいる。企業が完全に倒産していなくても、再度大きなリスクを冒して投資を行うことは非常にためらうのである。

 上海の歴史的な役割 中国経済への貢献

 上海は中国で最も経済活動が活発な地域で、そのような工業都市は多年にわたる蓄積が必要で、一度落ち込んだ後に再び立ち上がることは非常に困難である。
 
横河氏は、上海が中国で最も西洋化した都市であり、その発展は実際には3つの要素によるものであると指摘している。一つ目は開港地としての役割で、当時、中国で5つの貿易港の1つであった上海は、最も恩恵を受けた都市であった。

2つ目の理由は、上海と長江下流デルタ地域全体が中国で最も発展した地域であり、明の時代から軽工業が発展し始め、中国で最初に資本主義が芽生え、経済的に発展し、海への出口がある場所だということだ。

第3の要素は、清の時代に上海の租界が最も成熟していた。いまの南京路は昔の英米の共同租界の所在地である。南京路がなぜ繁栄したかというと、南京路は以前、英米の支配下にあったため、清朝政府が管轄できない規則が多く、独自の法律があるため、最も頭がいい商人たちは、法制度の保護がある租界でビジネスを展開することを好んだ。これらの条件下で、上海は発展した。

上海は中国経済に非常に重要な役割を果たし、文化大革命期間中には中国全体の生産がほぼ全て停止したが、その時でも上海は毎年200億人民元(約3948億円)を中央政府に納付していた。文化大革命期間中、工業基盤が少しでもあった全国の都市は、上海だけであった。

 
未曾有のダメージ 人為的な不況

 しかし、昨年、上海の都市封鎖の期間中、上海が開港以来、かつてないほどの不況に見舞われたと指摘した人がいる。つまり、戦時中でさえ、上海はこれほど衰退したことがなく、上海が都市として成立して以来、これほどの不況に見舞われたことはなかった。だから、人為的にもたらしたダメージは、自然災害や戦争よりもはるかに大きいと言える。

石山
時事評論家。香港紙、経済専門誌のコラムニスト、米ラジオ・フリー・アジアの番組ホストを歴任。
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