中国では今、景気の低迷による「史上空前の就職難」が大きな社会問題になっている。そのため、これまでは中高年が中心だった露店業にも、就職先が得られない若者の姿が増えている。
結婚や出産をせず、出世もマイホームの購入もあきらめた「ねそべり主義(躺平)」がいっそう深刻化している。今夏に大学を卒業した若者は、そうした世相を反映するかのように自ら「死んだふりをする写真」を次々とSNSに投稿している。彼らは「僕たちは死人だよ」と、大学を出ても就職先がない苦境をこうした「ゾンビスタイル」で表現しているのだ。
週に1時間働けば「無職ではない」
中国の国家統計局がこのほど発表した16~24歳の失業率は21.3%(6月)だ。ただし、この公式統計の基準には、そもそも学生や自宅で寝そべる若者は含まれていない。また、週に1時間でも働いていれば「雇用」状態と見なされる。
この頃、中国のとある大学が卒業生に宛てた通知がSNSで拡散されている。そのなかには、中国のフリマアプリ「閑魚(シエンユー)」に出品した商品が1つでも売れていれば『自主創業』に当たる」と書かれていた。
つまり、フリマアプリで1つでもモノを売ることに成功していれば、職業のない「失業者」の統計には入らないというのだ。これは、モノが売れたか否かではなく「1つでも出品すれば事業者なので、無職ではない」という解釈につながりやすい。
「失業率の実態は、公表されている数字よりはるかに深刻だ」。そう公然と指摘する専門家も現れている。中国メディア「財新」17日付は、北京大学の張丹丹副教授による「(若者の)実際の失業率は50%近くにのぼる」とする試算を発表した。
張氏によると「自宅で寝そべっていたり、親に頼っている若者1600万人が(公式の)統計に含まれていたら、実際の失業率は46.5%に達する可能性がある」という。
今年4月、ネット上に流出した上海海洋大学の内部会議で使用された最新の就職状況に関するデータによると、4月11日時点の上海の大学の学部生の平均就職率は24.1%。大学院生は40.66%だった。
つまり、今夏の卒業を前にした4月時点で、8割近くの大学生がまだ就職先が決まっていなかったことになる。
「就職できないから日本留学を」も増加
人気のある公務員職の倍率が「6000倍」に達するほどの激しい競争のなか、ネット上では「インターンシップの偽証明書」を発行するサービスが大人気だ。
また「就職が有利になる」という理由で、中国共産党への入党を希望する若者も増えており、未曽有の就職難をめぐる様々な歪みが生まれている。
さらに「就職できないなら留学を」と、日本への留学を希望する中国人学生も増えている。日本学生支援機構(JASSO)のデータによると、昨年度の外国人留学生のうち半数ちかい10万人超が中国人だった。
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