TikTok、裁判所を利用して米国の言論の自由を抑制

2023/07/19
更新: 2023/07/19

よく知られているように、TikTok(ティック・トック)は国家安全保障上の脅威である。というのも、共産主義中国には、約17億人のグローバルユーザーのデータにアクセスできる法律があるからだ。

しかし、世界中の単純な青少年たちは、最新の子供向けトレンドを強く求め、自分のスマホにこのアプリをダウンロードしている。TikTokのアルゴリズムは、こうした単純な青少年たちをランダムで、時には破壊的な気まぐれに、より深く誘導している。

例えば、最近のTikTokトレンドは、マクドナルドのマックシェイクのキャラ「グリマス」のパープルミルクシェイクを飲んで死んだふりをすることだった。

TikTokの #grimaceshakeと #grimaceのタグがついた動画の合計再生数は約14億回に達し、マクドナルドはこれを喜び、6月27日、ミルクシェイクを持つグリマスの写真をツイートし、「グリマスシェイクがトレンドになってるの見て見ぬふりしてるよ」とツイートした。

TikTokの視聴者のほんの一部でも4ドルのグリマスミルクシェイクを買えば、マクドナルドは大儲けし、マクドナルドの株価は上昇するだろう。そしてミルクシェイクの発売日でありグリマスの「誕生日」である6月12日以来、同社の時価総額は40億ドル以上となっている。

しかし主導権を握っているのは、TikTokのオーナーである北京のByteDanceで、そのByteDanceの上に立つのは、TikTokの究極の支配者である中国共産党(中共)だ。

中共は全体主義であるだけでなく、大量殺戮を行う。それは間違いなく、米国の民主主義、そして世界の民主主義に対する最も深刻な脅威である。

これにより、トランプ政権はTikTok禁止の先駆けとなった。モンタナ州もこれに続いた。

しかし、ニューヨーク・タイムズ紙によると、TikTokは禁止令に対抗して、秘密裏に反禁止派のTikTokerを見つけて資金提供し、自由な言論に基づく法的キャンペーンを立ち上げた。

その結果、トランプ前大統領の禁止令は無効にされ、コロンビア大学のナイト憲法修正第1研究所のエグゼクティブ・ディレクターであるジャミール・ジャファー氏は、裁判所はモンタナ州の禁止令も取り消すだろうと予測した。

一部の人々は、自由な言論の主張に惹かれるようだが、「国家安全保障なんてどうでもいいのか」と記事はジャファー氏の言葉を引用して締めくくられている。

ジャファー氏はこのように述べた。

「TikTokは米国企業であり、憲法修正第1条に基づく権利を有する。しかし、モンタナ州や連邦政府は、TikTokと中国との繋がりを考慮すると、憲法修正第1条の保護を受けられないと説明した。(この訴訟は)TikTokの権利、ましてやByteDanceの権利だけについての問題ではないと強調している。これはTikTokのユーザー、特に米国ユーザーの権利についてのものだ。それは非常に重要な点だと思う」

ニューヨーク・タイムズが言及していない重要な点は、私たちが読んでいるものは私たちの思考に大きな影響を与えるということだ。

北京がTikTokのアルゴリズムをコントロールし、米国のユーザーに提供するコンテンツをコントロールできるようにすることで、私たちは中共が自分の思考に危険なほど大きな影響を与えることを可能にしている。これはTikTokの強みである「特に若くて影響を受けやすい人々」にとって最も懸念すべきことである。

18~19歳の米国人の67%がTikTokを利用しており、米国人全体の41%がTikTokユーザーであり、ByteDanceは、ジャンクフードに相当する製品を米国に提供している。

中国版TikTokであるDouyinのアルゴリズムは、中国国民向けの教育的コンテンツをより慎重に厳選している。一方、TikTokは中国では禁止されている。

民主主義は教養ある有権者に依存している。TikTokが将来の有権者を形成することを許すことによって、私たちは民主主義を中共によって形成されるものに追いやることになる。これは我が国の歴史をゴミ箱に追いやるものである。米国の民主主義だけでなく、世界の民主主義にとっても大きな間違いである。

ByteDanceの言論の自由は守られるべきか

中共はByteDanceを使って、自分たちの権威主義的な利益のために、ユーザーの言論の自由を検閲し、誘導している以上、ByteDanceの言論の自由は保護されるべきではない。

米国は決して敵対勢力に、憲法を利用して、その広範な言論の自由保護に反するような行為を許してはいけない。言論の自由の保護は、言論の自由に反する目的で利用されるべきではない。

TikTokユーザーの言論の自由の方がはるかに重要だ。ニューヨーク・タイムズが引用した弁護士たちの主張は成り立たない。TikTokの禁止によって言論の自由が阻害されることはない。現在のTikTokユーザーは、他のSNSを利用するか、独自のSNSを立ち上げることもできる。中共と関係ないプラットフォームは山ほどある。

何百万人ものフォロワーを集めたTikTokのインフルエンサーたちは当然、フォロワーを失いたくはないだろう。フォロワーを新しいプラットフォームに移すことができるのだ。

米国の法律では、TikTokがユーザーが移行したい任意の新プラットフォームへのフォロワーの移行を促進することを義務付けられる。これは、元の医者から新しい医者に診療録を移すよりも簡単なはずだ。診療録と同じく、SNSは企業ではなくユーザーのものであるべきだ。

 

 

本記事で述べられている見解は筆者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではない。

時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。