キャンベラ市内の「EV」化と6つの不都合な理由

2023/07/02
更新: 2023/07/02

解説
キャンベラの政策立案者の思考プロセスはどうなっているのか?

オーストラリアの首都特別地域(ACT)立法議会は、人々と高尚なアイデアの間に横たわる断絶を埋める方法を真剣に模索している。

現在、キャンベラの市内中心部からガソリン車とディーゼル駆動の自動車を排除し、電気自動車(EV)のみを許可するという泡沫政策が、ACT立法議会を襲っている。キャンベラは人口が少ないため、オーストラリア主要都市の中で最も空気がきれいだと自慢することができる。

しかし、同市のリーダーたちは、「気候危機に立ち向かうために団結・行動する世界の主要都市の…グローバルネットワーク」だと、サディク・カーン ロンドン市長が自ら提唱するC40 Citiesネットワークの流行に乗ろうとしており、それには「美徳の誇示」の匂いが感じられる。

これもひとつの見解であろう。

キャンベラは現在、自らを「世界クラスのリーディング・シティ」と称している。仮令、それが自称であっても、そのように分類される誘惑に誰が逆らうことができようか?

この流行が良からぬ考えである6つの理由

まず、バッテリーの中でエネルギーを発生させる電源に目を向けなければならない。

オーストラリアでのバッテリーの充電は、石炭火力発電所で発生される電力によって行われている。これが明らかになると、ナラティブを破壊するため、意図的にこの事実を避けている。

よくあることだが、美徳を誇示しようとする政策立案者は、陳腐な決まり文句を語って、難しい質問をする人々を切り捨て、それによって自らの良心に被る苦痛を避けようとする。

彼らは「否定者」というラベルを貼ったり、その他の軽蔑的で軽薄な発言をしたりすることによって、危機に直面しているという事実と問題の詳細に立ち入らせないよう行動する。

第二に、より根本的に重要なのは、EV出現の発端についてだ。EVの製造に必要なリチウムやその他の材料は、何トンもの化石燃料を消費する大規模な採掘作業から始まる。ほとんどの作業は低賃金の労働者を必要としており、彼らには惨めさや貧困の中で暮らす子供たちが含まれる。

これらの深刻なジレンマは不都合な真実であり、そこでは、その存在自体が単なる厄介ものであるかのように無視されている。しかし、そのジレンマはEVの偽善と道徳的なうさんくささを暴露し、壊滅的なものだ。

キャンベラ市内にEVを走らせ、よりきれいな空気を確保しようという取り組みは、児童労働、搾取的な賃金、環境破壊行為の使用を正当化するのだろうか?

第三世界の人々の生活と環境を荒廃させながら、別の場所で汚染が創り出されているのをただ見ているだけの愚かな美徳の誇示には、高い道徳的な代償を伴う。

第三に、EVは資本コストが高いために、低賃金層は言うまでもなく、オーストラリアの平均的な賃金労働者にとっても手の届かない乗り物になっている。

これは、EVを買う余裕がない人々が首都キャンベラのサービスと観光スポットから締め出されることを意味する。低所得者の多くが、自分の街や切実なサービスへの容易で手頃なアクセスから拒否される。

第四に、オーストラリア国内を旅行している不運な観光客が、首都キャンベラへの入国を拒否されることだ。最も裕福なオーストラリア人であっても、キャンピングカーで国内を旅行したり、電動エンジンでキャラバンを牽引したりすることが、不可能ではないにしても、計り知れない挑戦であることに気付くだろう。

第五に、オーストラリアはキャンベラ発の政策のおかげで、電力不足が拡大している。それまでネットワークの外で供給されていたエネルギーが、すでに過負荷状態のグリッドを通らなければならないため、エネルギーネットワークにさらに大きなストレスと負担が掛かる。

EVの義務付けは、信頼性の低い太陽光および風力セクターを擁護し、石炭火力発電の廃止につながるため、オーストラリアが直面しているエネルギー問題を悪化させるだけだ。

第六、オーストラリアには自動車製造部門がないため、EVが義務付けられると、キャンベラの現実離れした不都合な政策のおかげで、中国のEVメーカーは大喜びするだろう。

児童労働や低賃金、第三世界の資源を利用し搾取する西欧諸国の害悪や生活費に対して、聖人振りお決まりの美徳のステッカー(プラスチック製)を貼って激しく非難するのも同じ連中であることを忘れてはならない。また、「観光は資源の仕事に勝る」ということも覚えていなければならない。

健全な環境管理は常に称賛され奨励されるべきものだが、高額な値札が付けられた逆効果の流行が低賃金労働者を差別するようになると、その実現はより難しくなる。

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
豪州の元政治家。1994年から2022年まで自由党所属の連邦上院議員を務めた。いくつかの閣僚のほか、選挙問題、先住民の権利、 法務・憲法問題、外務・国防・通商の各委員会の委員を歴任。